ハンター
「はぁ…………はぁ……アイリス…………はぁ………………アイリス……アイリッ………………………………………………………………ふぅ」
「お、お兄様」
ギギギと音がしそうな感じで扉へと顔を向ける。
「………………いつから?」
「三十分ほど前から……」
つまりはほぼ始まってからだね。なんでそんなに長い間眺めてたんだよ。
「最後までしなきゃ辛いのかな、と」
いらん気遣いだ。あああああああああああ。親に見られるより辛いかもしれんね。
「何のようだったのかな」
気と取り直して聞く。
「お兄様に来客がありました。応接室にて待ってもらっています」
おそらくは俺の寮の部屋のインターフォンを押し、この屋敷に連れてこられたのだろう。寮の自室のインターフォンはこの屋敷につながっているのだ。
アイリスに見られたのは大問題だ。だがしかし俺には対処法がある。思春期の男なら誰でも使える方法。『無かったこと大作戦』だ。俺から何か言わなければ、アイリスはこれを追求することは無いだろう。なぜならそんなことを追求しても意味が無いからだ。
「お兄様は私のことが好きなのですか?」
「え?」
「いえ、お兄様は先ほど……その、私の名をつぶやきながら、イタしていたようなので……」
あれー?おかしいなー。追求しないはずななんだけどな。しかしそれは愚問というやつだ。なぜなら…
「好き?そんなもんじゃない。愛しているのだ」
と胸を張って言えるからだ。
「お兄様……」
感動のためか少し目が潤んできているアイリス。
「最近お兄様の周りにはさらに女の子が増えました。なので、もしかしたらお兄様が私に飽きてしまったのかと……」
さらに「なんか妹キャラもいましたし……」と付け加えるアイリス。
「俺がアイリス飽きるわけないだろう。俺は永遠にアイリスを愛すると誓おう」
「お兄様……。私は幸せ者です……」
とうとう涙をこぼしてしまうアイリス。そこまで喜んでもらえると、俺としても嬉しいな。
さて、いい具合に有耶無耶になっただろう。応接室へ向かう。
ーーー
「よう」
待っていたのはラナトだ。
「悪い。待たせたな」
「いや、すごい居心地良かったから気にすんな」
そう言ってもらえると助かるな。ラナトが、我が屋敷に入るのは二回目だ。一回はプール、もう一回は今だ。ラナトに限った話ではないが、プールの時の驚きようはすごかった。俺も満足したよ。
「それで、何のようだ?」
「ん? ああ、男二人で遊びに行かないか?」
「なしてよ?」
「いや……ほら、前は結局うまく行かなかっただろ? 今日はリベンジしたいな、って」
おそらくナンパのことだろう。俺の後ろにいるアイリスに気を使って、言葉を濁してくれたようだ。助かる。愛してるって言ったその口で、ナンパに行くと言うのは、良くないだろう。
いや、愛してるのはほんとだよ?ただ、新たな出会いも期待せざるを得ないだけで。
「わかった。丁度暇だったしな」
「そう言ってくれるって信じてたぜ!」
「行こうか」
「待ってくださいお兄様」
ビクりと肩が跳ねる。
「何でしょう?」
「どこにいくのかお聞かせ願えますか」
「うー……。秘密ッ!」
考えてもいい返答を思いつかなかったので、はぐらかして『転移』する。
「おお……なんだこれ」
一緒に『転移』させたラナトが不思議そうに呟く。
「何でもいいだろ。巨乳と貧乳のペアを探そうぜ」
「ああそうだな!」
ーーーー
なかなか見つからずさまよっていたら、興味を惹かれる店があった。ガラス越しに見えるネックレスは派手ではないが、何か惹きつけられるものがあるように感じた。男物だ。
うーん。ハーレムメンバーの証に首w……ネックレスというのもいいかもしれない。独占欲を満たせそうだ。
取り合えす、このネックレスは買っておこう。気にいった。
ーーーーーー
とうとう見つけた。貧乳と巨乳のペアでしかも美人だ。問題点は俺よりも身長が高いということくらいかな。
双子かな?片方は少し釣り上がった目、片方は温和そうに垂れた目。それ以外はほとんど同じパーツの様に見える。
彼女らはとても美人だそのため結構目を引く。周りの男どもは、巨乳姉妹に見えているのだろう。
「アレックス」
「ああ、俺の『超乳観察』は騙せない」
「俺の『超乳観察』も同じこと言っている」
そして声を揃えて言う。
「「あの釣り目ニセ乳だ」」
あれは確実に何か詰まっている。なんでわざわざ巨乳にしようと思うのかは知らないが。
ラナトのような人のためかな。
標的は決まった。あとは狩るだけだ。




