青春
結局昨日は先に家に帰らせて貰った。霊城の加入が今後俺を疲れさせるだろうから、少しでも休んでおきたかった。家に帰るなり授業中に寝るのと同じ様に寝た。だから完全に目が覚めるまで気付かなかった。
目の前にあったのは霊城の顔。至近距離というかゼロ距離と言おうか。とにかく近くにだ。
なんか俺の顔がベタベタしてんだけど。
「あ、起きたのかい」
「ああ、とりあえずそこからどいてくれるかな」
「やだ」
「ふんっ」
無理やり退かす。顔を浄化しよう。なんだろうこれ。
「ああ、それは僕の唾液だよ。アレックスを起こそうと思って舐めてたんだ」
もういや。この子怖いって。アイリスは止めてくれなかったんだろうか。てか、アイリスがいない。一緒に寝たのに。
「アイリスなら食堂だよ。朝食をとっている」
そうかい。今日って確か休日だったかな。ゆっくり過ごそうと思っていたのに。
「起こそうとするなら普通に起こせよな。舐めるの禁止」
「ふふふ、そんな事言って、アレックスのアレックスはずいぶん元気になったようだが?」
下ネタかよ。
「朝はこうなるんだよ」
「そうなんだ……。その、なんというか身長の割に立派だね……」
ゴクリと唾を飲みながらいう霊城。
何気にあれのサイズは自慢だ。前世とは比べ物にならない。一応前世でも日本人平均はこえてたんだけどなぁ。男はあれのサイズを結構気にするのだ。しばらく使ってあげる予定はないのだけど。
それはさておき身長のことを言ったのは許せんなァ。お仕置きしようか。でもこいつが何を嫌がるのかわかんね。まあ、いいか。ちっちゃいのも事実だ。受け入れよう。
「ちっちゃくて悪かったな」
なんか負け惜しみみたいになっちゃった。はずい。
「い、いや、あれが大きいということを言いたかっただけだよ。気を悪くしたならすまない」
謝られると、なんというかバツが悪い。
「気にすんな」
そう言って食堂へ向う。アイリスに聞かなきゃいけないことがある。
ーーー
アイリスは食後のティータイムと洒落込んでいた。優雅にしやがって。
「アイリスー。お兄様の部屋に変態を入れるとは何事だ」
「熱意に負けまして」
またそれか。
「てか、そもそもなんで霊城がこの屋敷にいるんだよ」
「それに霊城さんはハーレムに加入したじゃないですか。屋敷を案内しておこうと」
「俺に一言くらい……」
「お兄様は先に帰って寝ていたじゃありませんか」
ぐうの音も出ない。負けたよ。
「で、霊城はどうすんだ」
「どうって?」
「ここに住むのかだよ」
「……え?」
なんだよ。
「何驚いてんの?」
「いや、僕はこの屋敷に住んでもいいのかい?」
「そりゃあそうだろ。不本意ながらお前はハーレムメンバーだ。権利はある」
「そ、そうか……」
なんか変なこと言ったかしら。
そしてしばらく何事かを、考えていた霊城はハッと顔を上げ言った。
「そうか。君はツンデレというやつなのだな」
「そんなわけあるか!」
おっと。つい声を荒らげしまった。クールに行こう。もういい。俺は考えなきゃいけないことがあるのだ。
「部屋に戻る」
そう言い残し、部屋に戻る。考えなきゃいけないこと、それは、ニーナのことだ。さっき急に思い出した。どうしようかね。『何でもできる力』でガリバー家を潰すなり何なりすればすぐ終わるのだが、それでは面白くない。何でもできるからと言って、何でもする訳では無い。『何でもできる力』を使いまくっていくと、とてもつまらない人生になる気がする。不老不死になった意味がない。
考えても答えは出ない。俺は頭の出来がいいほうではないのだ。次の学校でニーナと相談しよう。
暇だしお散歩行こう。ついでになんか買い物でもしてこようかな。
ララスに何か必要なものがないか聞き、屋敷を出た。
寮の部屋に出る。ここが一番安全な出現地点だろう。
ぶらぶらする。すると、声をかけられる。聞き覚えのある声だ。
「アレックス」
「ラナトか」
何気にラナトと二人きりてのは初めてかもしれんね。
「おう。何してんだ?」
「散歩だよ」
「なら一緒にナンパでもしないか?」
こいつこんなキャラだったっけ。最近結構仲良くなったと思ったのだが、まだまだ知らないところがありそうだ。
しかしナンパか。どことなく青春を感じる。一丁やってみようか。
「いいぜ」
「お前なら乗ってきてくれると思ったぜ」
固く握手を交わす。男なんてこんなものだ。
獲物を探す。
「お、彼女達なんていいんじゃないか。丁度あっちも二人組で、どっちも巨乳だ」
「巨乳?ならほかの人を狙おう。脂肪過多に興味はない」
「は?」
「お、彼女達はどうだ?二人組出し、胸も慎ましやかだ」
「ハッ。貧乳に興味はない」
「は?」
「あ?」
あー。わかったよ。こいつとは一切趣味が合わない。
「あ、あの人はSっ気のある顔だ。それに巨乳」
「巨乳は置いといて、Sな人を屈服させるのは結構いいかもな」
「は?いじめられなきゃ意味が無いだろう」
「いじめられて何が嬉しいんだよ」
「は?」
「あ?」
………………。
「決闘だゴラァ!!」
「望むところだボケェ!!」
舞台は街の噴水広場。偉い人に金を握らせ使用権を得た。
「武器は俺が用意しよう。何がいい」
「大剣」
最高の大剣を取り出す。勿論細工などしない。そんなもの必要ないというのもあるが、これは男と男の勝負なんだ。
「俺が負けたら巨乳美人を紹介してやろう」
「まじか!?じゃあ、俺が負けたら知り合いの幼女を紹介しよう」
「まじか!?」
俄然やる気が出てきた。俺の武器は手甲。直接殴る感触がいいのだ。
向かい合う。闘いは既に始まっている。円を描くように間合いを測り、隙を伺う。ラナトは焦っているようだ。俺から一切の隙を見いだせないからだろう。
しかし俺はラナトの隙を見つけてもすぐに動くことは出来ない。圧倒的にリーチがないからだ。
ちなみに戦闘力はしっかりセーブしています。
膠着状態。先に動いたのはラナトだ。
「うおおおおおお!」
雄叫びを上げて大剣を振り上げる。そして俺を真っ二つにしようとする。
俺はそれを横に回り込んで避け、ラナトの懐に入り、殴ろうとする。しかしそれは、素早く引き戻された大剣に防がれる。俺は一旦距離をとる。それは愚策。ラナトのリーチがながい為、より攻撃しやすくしてしまった。これは俺が戦闘なれしていない証拠だろう。
ラナトそんな俺に向けてもう一度大剣を振り下ろす。それを頭上に交差させた腕で受ける。流石に重い。ラナトが驚愕に目を見開く。まさか正面から受けられるとは思わなかったのだろう。
その隙に、再び懐に潜り今の全力の拳を放つ。今回は当たった。ラナトが五メートル地面を滑り、膝をつく。
「はは、流石アレックスだ。全力で行かせてもらおう」
そう言うとラナトの体の周りが淡く光る。これは身体強化の魔法だ。そっちがその気なら、俺だって。身体強化をする。そして高速で拳を剣を交わす。
「第七階級魔法 炎球ッ!!」
不意にラナトが魔法を放つ。それを魔力を纏った拳で弾きながら俺も魔法を放つ。
「第六階級魔法 光槍!」
光の槍を放った。それは同時に目くらましもし、ラナトの目が咄嗟に閉じる。その隙に光の槍はラナトの喉元だ。
「……負けたよ」
しゃがみこんでしまったラナトに手を貸し、立ち上がらせる。結構身長差があるため、大変だった。
いつの間にか出来ていたギャラリーから拍手を送られる。
俺達の友情が深まった気がする。
友情は深まったが、分かり合えた訳ではない(屁理屈)




