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電波な理由

 昼休み。アイリス達と屋上へ行く。今日はしっかり授業を受けた。何故か半分位授業の記憶がないが些細なことだろう。


 「アレックス、あの少女達は誰なんだい?」


 幼女奴隷達のことか。


 「ララス同様我が屋敷の使用人だ」


 「そうなのか」


 エリルは違うのだが、わざわざ言うことでもないだろう。


 「そう言えば、お兄様にキスした方の名前を伺っていませんでした。なんという方なのですか?」


 そう言われてもな。俺知らないし。


 「知らない」


 アイリスが目を見開く。


 「お兄様は名前も知らない女性にキスさせるのですね」


 冷たい目をしている。いや、ごめんて。


 というか


 「名前なら……」


 そこで一旦言葉を切って、屋上へ入る扉の方に視線を向ける。すると、つられて皆も顔を向ける。


 アイリスとララスは気付いたようだ。霊城も少し遅れて気がついた。あとの三人は何が起こっているかわからない様子。


 「本人に聞けばいい」


 俺が言葉の続きを話すと、扉が開く。言うまでもなく入ってきたのは電波ちゃんだ。ちなみにわざわざセリフを切ったりしたのは演出です。



 「王子様に会いに来たわよ」


 ちょうどいいので名前を聞く。


 「私?私はニーナ・クレイニア。クレイニア家の長女よ」


 ふーん。クレイニアね。なんか地雷みたいな名前。


 「で、なんだっけ。クレイモアさんだっけ。なんで王子様なんか探してるの?」


 「クレイニアよ。それにニーナでいいわ。

 王子様を探している理由だったわね。長くなるけどいいかしら」


 「ああ」


 それで俺にキスしたことについての説明が付くのならな。


 「私昔から許嫁がいたの。許嫁がいることに対しては、貴族に生まれたからにはしょうがないと思っているわ。でも相手が最悪でね。知ってる?ガリバー家の長男」


 「ああ、あの性格が死ぬほど悪いっていう」


 レイナには覚えがあるようで、ニーナに答える。俺は知らん。


 「そう。それだけでなくとんでもなく顔も悪いの。幼いながらに、人生に絶望したわ。そんなときにね、王子様が魔物に囚われた姫を奪還する絵本を読んでね。お母様に私も王子様が助けてくれるかな、と聞いたのよ。流石に可哀想だと思ったのか、それとももともと乗り気ではなかったのか知らないけれど、王子様を連れてきたら、婚約は解消するって約束してくれたのよ」


 それで王子様を探していたと。前にお姫様にならなくてもいい、みたいなことを言っていた気がするが、そこら辺はどうなんだろう。


 「お姫様にならなくてもいい。ただそばいられれば。本心よ。でも優しい王子様がね、魔物に攫われた哀れな被害者を救い、その被害者は王子様と共に行動する、そんな物語もいいと思わない?」


 よくわからなかったが、お姫様になりたいけど、王子様のそばにいられれば、お姫様でもそうでなくてもいいってことかな。


 「ご納得いただけたかしら」

 

 正直、ほーんって感じ。感想は、ほーんだわ。結局はブ男と結婚したく無いがために俺は巻き込まれたという訳だろう。迷惑な話だ。

 やんわりと今後関わるのを控えてもらうように言おうかな。可哀想とは思うが、俺の中での最優先はアイリスや屋敷の皆だ。ちょっと前に知り合っただけの子に何かする気は無い。まあ、そんなことを言っていても、目の前で幼女が泣くと助けてしまうのだろうが。


 「あのニーナさん?悪いけ」

 「お兄様!ニーナさんを助けてあげましょう!」


 えぇ……。何なの急に。


 「望まない結婚なんてダメですっ。女の子は本当に好きな人と結婚するべきなんです!」


 そんな事言ってもなぁ。


 「アイリスも元は貴族の娘だったんだからわかるだろ。家を守るためには望まぬ結婚もしなきゃいけないの」


 ぐっと言葉を詰まらせたアイリス。


 「あ、別に断っても家にそこまで不利益はないわよ。元々相手は結構格下の貴族だし、婚約だって、相手の母親とお母様が旧知だったからだし」


 えー。めんどくさーい。絶対に助けなきゃいけない流れじゃん。大体さ、結婚しなくてもいいならしなきゃいいのに。まあそれが出来ないから王子様を探しているのだろうが。相手がいれば、ガリバー家も納得させられると言ったところか。


 ま、アイリスの頼みだ。何の問題もないとわかった今、助けてやろう。


 「ありがとう。貴方はやっぱり私の王子様ね」


 はいはい。


 昼食を再開。しようとしたところで霊城に話しかけられる。


 「ねぇアレックス」

 

 「なんだ」


 「さっきから口調がぶれまくっているよ」


 ……どうしたもんか。ニーナには、同じ学年ではないと思っていたため、最初から普段通りの口調で接していた。そのせいでここでも普段通りの口調になってしまった。どうしよっか。

 てか、そもそもなんで口調を変えたんだっけ。特に理由もなかった気がする。強いていうのであれば、なんとなく面白そうと感じたからか。


 「ああ、俺はさっきまでの方が素だ」


 「やっぱり。なんで口調を変えてたの?」


 やっぱり聞かれるか。どうしよう。アイリスに視線を向ける。ニヤニヤした笑いを返される。なんかアイリス性格変わった?しょうがない。正直に言う。


 「特に意味は無い」


 微妙な空気になる。だから嫌だったんだ。午後の授業はサボってやる!今後授業はしっかり受けると言ったな。あれは嘘だ。

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