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激おこアイリス

 「今日こそは一緒に帰りましょうね?」


 「ああ。絶対に忘れないよ」


 今日も今日とてアイリスに昨日のことに対し小言を言われながらも教室のドアを開ける。


 「やっと来たわね」


 とてとて、と可愛い子が近づいてくる。ていうかあれは電波ちゃんじゃないか。なんでここにいるんだろ。もしかして同じクラスだったとか?ずっと年下だと思ってたわ。


 何のようかな。


 「貴方は昨日私を助けてくれたわね。そのことに対しての礼と、意思表明よ」


 言いながらどんどん近づいてくる。所謂息の当たる距離というやつだ。俺はここまで女性に近づかれて平静としていられるような人間でないので、思わず顔を逸らす。ここで後ずさったりしなかったのは意地があったからだ。俺は最強なので、誰からの挑戦も受ける、的な。


 「だから」


 電波ちゃんが俺の両頬に手を添える。そして無理やり俺の顔を正面に向けさせる。痛い。


 「ありがとう」


 まるでハートマークでも語尾につきそうな声音でそう言い、俺の唇に唇を合わせる。


 「んぅっ!?」


 俺の貴重なファーストを奪われてしまった。流石にそこまで交流があったわけじゃない人に唇を奪われたのにそのままというわけにも行くまい。肩を掴み、なんとか引き剥がそうとする。相手は女の子なので痛みを与えないギリギリの力を込める。いくら手加減していようと俺が力負けすることはない。


 ゆっくりと身体の距離は離れていく。が、電波ちゃんは必死に顔を伸ばし、唇を離そうとしない。それどころか舌を入れようとしてきやがった。それだけは死守し、最終的には唇も離すことができた。


 こういう時にどうやって息をするのか知らなかったために止めていた呼吸を再開する。


 とりあえず文句を言おう。


 「てめっ俺のファーストを奪いやがって!返せ!ファースト返せ!」


 「心配しないでちょうだい」


 なに?返してくれんの?ファースト返してくれんの?


 「私も初めてだったから……」


 そう言えば許されるとでもおもってんのかね。でも、恥ずかしげに軽く俯いた姿は可愛かったので、許してやらんこともないな。うん。


 やだ。俺って単純すぎ。


 今気づいたのだが、周りの目が凄い。超見られている。逃げよ。最強は逃げない?知らんなァ。


 右を向いて逃げる。しかし目の前にはアイリス。


 「お兄様。どこに行かれるのですか?」


 さらに右を向く。そこにはララス。


 「ご主人様。少しお話が」


 さらに右を向く。そこには幼女組。


 「主。これはどういうことかの?」


 なんでこいつらもいるんだろ。アイリスかララスが『通信』で呼んだのかな。

 そうだ。『転移』だ。そうと決まれば外界にでも『転


 「お兄様。屋上に行きましょう?」


 「………………はい」


 こわたん。


 「後、そこのあなたもお話を聞かせて頂けますね」


 「私かしら?いいわよ」


 なんでこの子は平然としてんの?まあいい、どうせアイリス達には説明するつもりだったし。このクラスメイト達の視線から逃れられるのならば何でもいいだろう。




 屋上へ向かう途中。合法ロリ先生に遭遇。


 「あのー、皆さん。もうすぐ授業始まりますよ?」


 「大事な用があるので」


 「え?でも授業……」

 「用があるので」


 「は、はい」


 アイリスちゃん怖い。怒っちゃったのかな?お兄様のファースト取られて怒ちゃったのかな?なんかアイリスを煽っているみたいだ。そんなつもりなかったんだけど。



 屋上に到達。そう言えば何故か霊城達もついてきている。



 「お兄様。説明」


 「いや、説明も何もお前らが見た通りだって。登校したら急にファースト奪われた」


 俺はファーストを奪われたことを根に持っています。


 「それについてではありません。この方はお兄様と如何なる関係なのかと聞いているのです」


 「前に少し話したくらいの関係だよ」


 「そうなのですか?」


 アイリスが電波ちゃんに問う。


 「え?ごめんなさい。聞いていなかったわ」


 電波ちゃんどういう神経してんだよ。見ろよ。アイリス怒りでぴくぴくしだしたぞ。


 「お兄様とッどういう関係なのかッ聞いているのですッ」


 怒りが籠っているね。


 「どういうもなにも彼が私の王子様ってだけよ」


 「はい?」


 心底わけがわからないと言った顔をしているアイリスに説明する。


 「彼女、どうやら電波なんだよ」


 この世界に電波と言って通じるとは思わないが、『自動翻訳』がどうにかしてくれるだろう。


 「あ、そうなのですか」


 納得していただいたようで。


 「でもあなたがお兄様のファーストキスを奪ったことは許されざることです」


 「あら、私が彼の唇を奪って何の問題があるというの?」


 「問題大有りですよ。私達のお兄様です。あなたのものではないのですよ」


 俺はこの状況をどういう気持ちで見ていればいいのだろう。


 「お兄様もお兄様ですよ!」


 俺がどうしたよ。


 「お兄様の能力でしたら逃れることくらい簡単でしたでしょう!」


 「それはそうなんだけどさ。相手が女の子だと極端に警戒心がなくなっちゃってさ」


 「このスケベ!!」


 ええっ。アイリスにこんな事言われたのはじめてじゃね?


 「俺どうすれば許してもらえる?お前らにキスして廻れとでも言うのか?」


 こんなに怒っているアイリスは初めてだ。許して貰うには本人に聞くのが一番手っ取り早い。



 「そ、それでいいです」


 冗談だったんだけど。しかしこれで合法的に幼女や妹にキスできるというわけか。まさにwin-winだな。


 まあ、キスにトラウマがないと言ったら嘘になるか。ラウラにキスしようとして拒否られたのは一生忘れることができないだろう。しかしそんなものは欲情した俺の前では塵芥だ。


 キスは屋敷に帰ってからすると言って、皆と教室に戻る。


 何故か霊城が複雑な表情をしていたのが、やけに記憶に残っていた。

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