ステータス
瞼を閉じていても分かる強い光と、なにやら騒ぐ声が聞こえる。
ここはどこ、私は誰状態だったが時間が経つと共に記憶が戻ってきた。そうだ、アリスちゃんに転生させてもらったんだ。しかしな、目が開かない、話し声は聞こえるが何を言っているのかわからない。
それにしても、近くで泣き叫んでる奴何なの。うるさいんだけど。どうしたもんかな、と考えていると、なにやら焦った声とお腹のあたりをぺちぺちと叩かれる感触。痛い。泣きそう。
「おぎゃぁぁぁ」
泣いちゃった。というか泣かされた。俺が唐突な攻撃に号泣していると安堵のため息が聞こえた。
え?なに?赤ん坊泣かして安堵ってどういうこと?とか考えてたら思い出した。確か産まれて直ぐに泣くか否かで死産かどうかを判断するんだったな。すっかり忘れてた。
まあ、とりあえずは乳でも飲んで寝るかな。
産まれてから二週間程たった。今俺はベビーベットの上にいる。今までの生活で気付いたことがある。まず、俺の名前はアレクというらしい。もしかしたら略称とかかもしれんがそれは置いておく。
あとは俺が双子だということが判明した。俺が寝ているベビーベットの同居人だ。
双子のもう一人については姉なのか、妹なのか、そもそも女なのかもわからない。せめてこの世界の言葉が解るようになればな。覚えるのめんどいな。どうにかならんかね。
《まずはステータスと念じてみて下さい》
ん?なんか声が聞こえた?
「あうあああうあうあ(あなたはだれですか)」
《私はこの世界で貴方をサポートするAIのようなものです》
ああ、AIね。知ってる知ってる。なんかの略称でしょ。人工知能だっけ。
《私は創造神クレアリスによって造られたので、神工知能というのが正しいと思われます》
アリスちゃんが造った?ああ、そういえばおまけをつけとくって言ってた気がする。ま、いいか。それよりステータスだったな。
名前:アレックス・シャイン
称号:なし
職業:貴族
攻撃力:1
守備力:1
素早さ:1
器用さ:1
スキル:なし
なんか出た。薄く青色の入ったウィンドウ的なものが。てか弱すぎない?オール1って。まあ、赤ん坊だししょうがないか。俺の名前がアレックスだったことにも驚いたがそれよりも、貴族って事に驚きだ。色々面倒くさそうだなー。
ステータスを出したあとはどうすればいい?
《はい。次はスキルの欄を見ながら、そこに『自動翻訳』というスキルが付くことを想像してください》
スキル:『自動翻訳』
なんか増えた。何でもできるってそう言うことか。チートどころじゃないな。ん?なら他の欄もいじれるんじゃないか?やってみよう。
攻撃力:99999999999999
守備力:99999999999999
素早さ:99999999999999
器用さ:99999999999999
スキル:『自動翻訳』 『隠蔽』 『超鑑定』 『全魔法』 『隠密』 『自己封印』
や、やりすぎたかな。しかもこれでカンストじゃないっぽいんだよなぁ。増やそうと思えばいくらでも増やせそう。
スキルに関しては今思いついた必要そうなものを付け加えた。
『隠蔽』はこのステータスを隠す為に。
『鑑定』は相手のステータスを覗いたり、物の詳細が見れたりするスキル。『超鑑定』とすることによって、『隠蔽』だとかで隠されているのも見えるようになった。
『全魔法』はすべての魔法が使えるようになり、『隠密』は使用すれば、相手に見つからなくなる。
『自己封印』はその名の通り己を封印する。どうやらこの世界で俺は何でもできるようなので、無意識に何か起こさないように能力を封印しておくのだ。
この能力とは『神からもらった何でもできるようになる力』だ。そのうちの自分のステータスをいじる部分を残し、後を封印する。チート無双も楽しいが何の制約もないのはつまらないだろうという考えからだ。
ちなみにスキルについてはAIさんと一緒に考えました。
しかし、馬鹿みたいな攻撃力なのに何でこのベビーベットは壊れないんだろう。
ステータスを上げ下げした結果、どうやら器用さ、というのは指先の細かい動きが可能ということではなく、身体の制御や技術に関わっていることがわかった。
その代償としてベビーベットがぶっ壊れた。そのせいで同居人が号泣してしまい、共に壊れていないベビーベットに移された。てかそもそもベビーベットが二つあったのなら最初から別々にしてくれりゃあよかったのに。
同居人についてわかったこと。名前はアイリス。さっき壊れたベビーベットから移動する時そう呼んでいた。『鑑定』はまだしないことにしている。妹かどうかなんてすぐにわかるだろうし、アリスちゃんに頼んだからアイリスが妹じゃなくても、いつか妹が産まれるだろうと考えてのことだ。
俺の家についてわかったこと。どうやら貴族の名に恥じることなく、大量の使用人と豪華な家具を有することを確認できた。
そして使用人の中に、獣耳と尻尾が生えている人を確認できた。どうやら獣人もいるらしい。
そんなふうにわかったことを思い返していると、俺がいる部屋ーー何人かの使用人とアイリスもいるーーに三人の男が入ってきた。
一人はだいたい三十歳後半くらいに見えるイケメン。こいつは俺の父上で今までもたまに俺達に会いに来てた。
その隣に居るのが17歳前後の神経質そうな顔をしている若い男だ。大方子供が好きじゃないんだろう。嫌そうな顔をしている。
さらにその隣にいるのが15歳前後のおとなしそうな少年。なんか目をキラキラさせている気がする。
すると父上様がアイリスを抱き上げながら男二人に向かって口を開いた。
「お前らこれがお前らの弟と妹だ」
「ふん。生意気そうな顔をしている。気に食わんな」
「お父さん!だっこしてもいい?」
「おう。好きにしろ」
許可はおれにとってくれませんかねぇ……。
どうやらあの二人は兄だったらしい。
気に食わない顔だとか言われてショックを受けている間に勝手に抱っこの許可が降りてしまった。
なんか怖いんだけど。や、優しくしてね?
ブルブルふるえているとこわごわと持ち上げられた。
「おお、なんかあったかいね」
なんていわれつつ、どうにでもなれの精神で身を委ねた。
まあこういうのも悪くはないかなと考えつつ眠りに落ちた。




