骨折り
名残惜しい。名残惜しいが、アリスちゃんに会うためベッドから出る。そしてアリスちゃんにゲームやら諸々を貰って帰る。
エリルもアイリスもかわいいな。普段から可愛いが、寝顔ともなるとさらにだ。
二人の頭をそれぞれ起こさないように撫ぜて俺もベッドに入る。幸せ。
「ご主人様。お食事の時間です」
アミが寝室のドアをノックする。それに返事をして食堂へ行く。
さて、アリスちゃんから貰ったゲームやらを先日用意した部屋におき、早速プレイをする。できればエリーやドナートに、テレビ等を見せたくないのだが、この部屋は結構端の方にある為、あんまりエリー達は来ない。
ゲームをやるのは十五年ぶりだが、結構体は覚えているもんだ。ちなみに俺はFPSが好きだ。お世辞にも上手ではないのだが、楽しい。音ゲーも好きだ。一切リズムが合わないが。
そんなこんなで、昼食の時間までゲームをした。探しにきたミリアに「こんなところにいたんですかっ」と軽く叱られたが、ただただ可愛かった。
「そろそろ申し込みにでも行ってこようと思う。もう始まってるよな?」
エリーに問う。
「ええ、一ヶ月前から。この時期だと結構ギリギリよ」
もう二週間前位だからなぁ。
食事を終え、軽く身だしなみをチェックし、屋敷から出る。お供にサリーだ。やけに機嫌よさそうだ。
「どうした?」
「何がですか?」
「いや、機嫌がいいな、と」
「ああ、ご主人様と一緒にお出かけするの久しぶりですから」
かわいい。しっぽブンブン振ってるし。
「えっ?はふ」
あまりの可愛さに頭を撫でてしまう。思わず、といった形で出たサリーの声がかわいい。
獣人の国の王城に着く。申し込みはここでするのだ。
「申し込みはここでいいか」
受付的なところに行き、確認する。
「え、ええ。国王選定戦のお申し込みでよろしいですか?」
「ああ」
流石に人間がエントリーするとは思わなかったようで、面食らっていた。
差し出された紙に、名前などを書く。
「後援者の方などはいますか?」
「エラフォット」
「お、王女様ですか?」
「元王女だ」
「かしこまりました。一つだけ注意があります。参加者同士の私闘は失格ですので、お気をつけください」
「はーい」
「もう少しで終わりますので、そこでお待ちください」
そう言って、手元の紙を後ろにいる人に渡す。サリーと話しながら時間を潰していると、不意に大きな声が聞こえた。
「おいおい、なんで人間なんかがここにいるんだ!まさか参加するつもりか?」
虎の獣人だ。
「ああ」
「こいつは傑作だ。ガキはさっさと家に帰んな!」
馬鹿にされたままって言うのは、いい気分ではない。周りの獣人達も無謀だと思っているようで、軽い侮蔑の視線を向けてきている。
「ならば試すか?」
「ああ?私闘は禁止だろ」
「いや、俺の申し込みはまだ終わっていない。ねぇ、受付さん」
「え、ええ」
「ならば問題ないな!どうせすぐ終わるしな」
そう言ってフハハハハと笑い出す虎さん。
「条件は国王選定戦と同じでいいな」
「ああ。グチャグチャにしてやるよ」
言葉と共に拳がとんでくる。それを余裕を持って避けると、そのまま腕を掴み肘を反対側に折る。結構丈夫な骨だったのだろう。いい音がなった。
「ガアアアアアッ!」
あまりの痛みに、咄嗟に俺を無事な方の手で殴ろうとする。それをしっかりと手で受け止め、そのまま握りつぶす。ゴリゴリという気持ちのいい音と、肉の潰れる音が混ざり合い、なかなかいい感じだ。しかしこいつの叫びは汚いな。声を出させないために喉を潰そう。
「グッ、ガッ……」
勢い余って首の骨ごと潰してしまった。終了。
なかなか楽しかった。骨を砕く感触は好きだ。
「ああああの」
「はい」
受付さんに声をかけられたので、笑顔で返事をする。
「ひっ。え、エントリー完了しました」
「そうですか。では」
そう言って畏怖の視線を受けながらその場を後にする。
「ふんふーん」
またサリーが機嫌いい。かわいい。
「今度はどうした」
「私だけご主人様のかっこいいところを見られて嬉しいの。屋敷のみんなに自慢できちゃう」
かわいい。あまりの可愛さに抱きしめてしまう。
「あ、ああのご主人様?」
「気にするな」
「は、はい。あの」
「なんだ」
「わ、私でしたらいつでもこうして頂いて結構ですからっ」
「かわいい」
かわいい。サリーまじかわいい。




