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腕相撲

 「おお、このお肉は美味しいですな。何の肉ですかな?」


 「俺」


 「は?」


 「いや、なんでも……」



 すごい哀れな人を見る目で見られた。ひどい。本当なのに。


 「お?エリー食べんのか?」


 「え、ええ。食欲が無くて……。良かったらどうぞ」


 「おお?ならば遠慮なく」


 美味しそうに肉を頬張るエリルかわいいな。ふふふ。お前は今夜汚されるんだよ!


 それにしても疲れた。俺の四肢は肉が少ないから、量を用意するには結構な本数がいる。実は結構痛いのだ。慣れてきたが。というか初めてちぎった時もそこまでは痛くなかったかも知れない。そりゃあ、少しは痛かったが、腕がちぎれた痛みはもっと凄そう。


 実は俺は隠れドMで、痛みと快感を相殺した結果、あれだけの痛みだったとか?いや、俺はどちらかというと、引き千切られるよりも引き千切りたい。まあ、それぞれ四肢のどこかを無理やりちぎられた我が奴隷達にはこんなこと口が裂けても言わないが。


 「ねぇ、クラウ」


 「何でしょう。エリー様」


 「なんでみんなアレックスの肉を食べられるの?人の肉よ?」


 「ああ、それは皆ご主人様のことが大好きだからです。ご主人様から出たものなら何でも食せます。唾液でもおしっこだろうと大便でさえもっ」


 「ちょっ!食事中よ!」


 「はッ。これはとんだ無礼を……」


 「いいのよ」


 「それに、ご主人様のお肉はとても美味しいですし……」


 「へ?」


 「強ければ強い程肉が美味しくなるって知っています?」


 「ええ。そういわれているわね」


 「ご主人様はとてもお強いです。誰にも負けないくらい」


 「そうそう。そのことも聞きたかったのよ。アレックスは本当に強いの?ドナートが吹っ飛ばされたのは見たけれど……。国王選定戦で優勝出来る程の強さなの?」


 「ええ。優勝なんて片手だけでも余裕でしょう。右手の小指で十分かと」


 「はぁ?国王選定戦は魔法やスキルの使用は禁止なのよ。人間が純粋な腕力だけで勝てるわけないじゃない」


 「そう思うのでしたら、ご主人様に腕相撲を挑んで見てはいかがですか?」


 「何言っているの。私は獣人よ。それも腕力が高い獅子の」


 「それでもご主人様は勝ちます」


 「わかったわよ。クラウがそこまで言うのなら試して見ようじゃない!」


 満腹。俺の肉を俺が食う。まじ俺ウロボロス。まあ、ウロボロスがなんなのかよく知らないんだけど。



 「ふぃー。ご馳走様でした」


 「アレックス!!勝負よ!」

 「いいよ。脱衣ゲーム?」


 食い気味で答える。


 「え?いや、腕相撲……。というか脱衣ゲームって何よ!」


 「その名の通り脱いでいくゲームだよ。先に全裸になった方の勝ち」


 「そ、そんなのできるわけないじゃないっ。そんなことしたら私の肌を見て興奮したアレックスにお、襲われてしまうもの……」


 「襲わない。お前の体に興奮することは決してない」

 

 「へ?」


 「お前に興奮など絶対にしない」


 一度エリーの裸を想像する。やはり全く興奮しない。俺の相棒も無反応だ。しいていうならあの胸。油っこくて不味そう。


 「ひっ。どこ見てんのよ!!や、やっぱり私に興奮……」


 「しない。絶対に、お前に、興奮することは、ない」


 「そんなに強調しなくてもいいじゃないっ」


 もう存分に弄った。ドナートがなにやら信じられないものを見る目で俺を見ているが気にしない。


 俺の目的は全裸ゲームをこの屋敷に流行らせ、目の保養をすることだ。だが、全裸の幼女がいても襲ってはいけないのを忘れてた。もういいか。


 「で?腕相撲だっけ?いいよ」


 「そ、そうだったわ。腕相撲の話だったわ」


 「問題はハンデだな」


 「ふふん。私は獣人だから指二本でお相手してあげるわ!」


 「は?ただでさえお前の方が弱いのになんでさらに不利になるようなことするの?」


 意味もなく煽っていくスタイル。


 「はあ!?」


 「まあいい。先ずはお互いハンデなしでやろう」


 「そ、そうね」


 このままだと平行線になりそうだったから、ハンデは諦める。まあ力の差を知れば納得してくれるだろう。



 向かい合って席につく。右手を差し出し、エリーの右手と繋ぐ。


 「レディ……ゴー!!」


 ミリの声でエリーが力を込める。俺はというと、腕を少しも動かさずに、そのままの状態でいた。エリーが一切動かない俺の腕を見て、驚きの表情を見せる。いいね。こういうの。自己顕示欲が満たされる。


 「な、何よあんた……っ。人間にそんな力があるわけないっ。あんた何者なのよッ!」


  「俺か?俺は紳士(ロリコン)だッ!!」


 そう言って少しずつ力を込めていき、エリーの手の甲をテーブルにつける。

 ふっ。敗北を知りたい。


 「お前の敗因を教えてやろう」


 「何よ」


 「お前が巨乳だったことだ!」


 もしこいつが貧乳だったら、女子に慣れていない俺は照れて力が抜けてしまっていただろう。相手が幼女だと、全力で華を持たす。俺は巨乳に興奮しないのだ。


 「もう用は済んだか?俺は早く寝たいんだが」


 エリル枕が楽しみ。


 「貴方の実力を認めるわ……。国王選定戦頑張ってね……」


 「おう」


 国王選定戦っていつだったっけ?申し込み忘れないようにしないと。引きこもりの精神なので、基本的には屋敷から出たくない。屋敷からでなくとも、大抵のことはできるし。それでも旅をするのは、屋敷から出たくないが、ずっといても飽きてしまうからだろう。


 

 そんなことよりも、エリル枕楽しみ。超楽しみ。一足先にベッドで待っていよう。


 まだかなー。


 三十分後。


 まだかなー。


 一時間後。


 まだかなー。


 さらに一時間後。


 まだかなー。


 ガチャりとノブが回る音。


 来た!


 「主よ、いるかの?」


 「ここ、ここ!俺はここにいる!」


 「おお、そろそろ寝ようかと思っての。探しておったのじゃ」


 「お兄様。どこに行ってたんですか?」


 「え?ずっとここにいたけど……」


 「えぇ?夜ご飯食べてからずっとですか?」


 「うん」


 「どんだけエリル枕が楽しみなんですか……」


 あ。そういえば風呂に入ってない。


 「風呂に行ってくる」


 「今からですか?」


 「ああ、入り忘れてた」


 「はやくするのじゃ。我はもう眠い」


 「了解」


 己の力を総動員し、三分で身を清め部屋に戻る。


 「おまた」


 「はやかったですね」


 「急いだからな」


 「もう寝ましょうか」

 

 「ああ、おやすみアイリス、エリル」


 「おやすみなさい」


 「おやすみじゃ」


 俺が真ん中。アイリスと俺は背中合わせだ。正直背中に伝わる温もりだけでも興奮しているのだが、頑張って堪える。

 今はとにかくエリル枕だ。


 特に変わったこともなく夜は更けていく。エリルが抱き枕だろうと、エリルが頬を紅く染めていようと、俺のアレがアレしたりしようと。

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