溢れる妄想
「やあ。はじめまして。ボクの名前はクレアリス。終わりと始まりを司る、序列一位の神だよ」
絶句。皆一様に言葉を失った。その発言故なのか、その見た目故か、その神々しさ故なのかはわからないが。
「えーこの方が、夜な夜な行っていた密会の相手です」
「誤解を招く言い方をするね。間違ってはいないが」
いつものように膝の上にアリスちゃんを乗せながら言う。
「あの、お兄様?」
「なに?」
「その格好はどういうことでしょうか」
威圧を感じる。
いつもの癖で乗せちゃったけどまずかったかな。
「あの、アレックス?ボクも初対面の人の前でこれは恥ずかしいのだけど」
聞こえんなァ。
「十五年ぶりに友人と会ったんだ。これ位は当然だろう」
「そ、そうか。……友人か。ふふっ」
何だ急に笑い出して。かわいい。
ああ、そうだアイリス達にも説明しなきゃな。
「これはな、アリスと初めて会った時に思わず膝の上に乗せてしまってな。それ以来、会ったらとりあえず乗せることにしてる」
「ほとんど説明になっていませんが……。それは置いといて、お兄様ッ」
「はい」
妹が怖い。うそ可愛い。
「私にはそんなことをしてくれないじゃないですか!」
「いや、恥ずかしいし。何。して欲しいならするけど」
嬉々としてやるけど
「し、して欲しいですっ」
かわいい。恥じらいアイリスかわいい。
「よーし。お兄様頑張っちゃうぞー」
楽しみ。
「それより、アリスが自己紹介したんだ。お前らもしておけ」
「これは失礼しました。お兄様の妹のアイリスです」
「主のペットのエリルじゃ」
「ご主人様の奴隷のラスグラスです」
「ご主人様の奴隷のイリア」
「ご、ご主人様の奴隷のアミーリアです」
「ご主人様の奴隷のミリですっ」
「ご主人様の奴隷のイルミアです」
「ご主人様の奴隷のミリアです」
「ご主人様の奴隷のサリーです」
「ご主人様の奴隷のラウラです」
「ご主人様の奴隷のクラウです」
「ご主人様の奴隷のカリナだ」
「ご主人様の奴隷のマリアです」
こうして見るとなんとも背徳的というかなんというか。主に肩書きが。
「はい。みんな仲良くするように」
俺は少し離れていよう。俺がいると邪魔かも知れないし。
「アリス様。お兄様のことを教えて貰ってもいいですか?」
「もちろんだよ」
女性陣がアリスちゃんの周りに集まる。寂しくないし。一人とか慣れてるし。
暇な時間の潰し方。妄想。
アイリスに猫耳をつけたい。でもイリアがいるからいいかな。イリアの奴ダンジョンでいっつもできる限り敵を倒そうとすんの。なんでか聞いてみたら、「私は奴隷だから一番働かないと……」とか言って。「イリアは偉いなぁ。だけど無理はしなくていいだぞ。もう俺らは家族みたいなもんだしあんまり奴隷とか気にすんな」って言いながら頭を撫でたら尻尾をピンと伸ばして「あ、ありがとう」とか言うの。少し照れながら。普段あんまり感情を表に出さない子のそういうところを見るとグッとくるよね。イリア超可愛い。
「何から聞きたい?」
「えーと、お兄様と初めて会ったのは何処ですか?」
「ここだよ」
最近、幼女奴隷達も料理を作れるようになってね。とはいえ簡単なものしか作れないのだが、サリーが「ご主人様。あーん」とか言って玉子焼きを俺に食わせるの。尻尾ブンブン振りながら。しかも俺の好きな砂糖多め。「ご主人様、おいしい?」って珍しく心配そうに聞くから「おいしいよ」って言いながら頭を撫でたら眩しいまでの笑顔を浮かべてさらに尻尾を振り回すの。もうお前を食ってやろうか。サリー超可愛い。
「お兄様は十五年前に会った、と言ってましたね。アリス様が神様あることを考えると、お兄様が産まれる前に会ったということでよろしいですか?」
「鋭いね。そうだよ」
たまに、希望者に魔法やら体術を教えているんだけど、ラウラが超頑張るの。あまりにも必死だからどうしたのかな、と思ってたんだけど、ラウラが「ご主人様に嫌われないようにもっと頑張んなきゃ……」って言ってたのを偶々聞いちゃって、次の訓練時に「例えラウラが弱くても俺はお前を絶対に嫌いにならないし捨てることもない」ってイケボで伝えたら、泣きそうになりながら「ご主人様ぁ……」とか言っちゃって。ラウラ超可愛い。
「私から聞いといてなんですが、そこまで言ってしまっていいのですか?お兄様は隠そうとしていたみたいですが……」
「アレックスから聞かれれば嘘偽り無く答えてくれって言われたんだ。君たちに嘘を付きたくない、と」
幼女奴隷の料理の上手さは、アミとイルミアが大体ララスさんと同じくらいであとは似たりよったり。アミとイルミアは似たような性格ということもあってかよく一緒にいるところを見る。二人は料理の中でも取り分けお菓子作りが好きなようで二人で結構すごいケーキとか作ったりしている。ちょっと前に二人がケーキを作ってきて、俺はケーキ=お祝い事みたいな感じに考えているから、「今日何かあったっけ」って聞いたら、「いいえ、ご主人様に食べてもらいたくて作りました」とかはにかみながら言いやがって。アミとイルミア超可愛い。ケーキはおいしくいただきました。
「お兄様がそんなことを……」
「他に聞きたいことは?」
ミリアが他の子に数学を教えているのをよく見るので、「ミリアは偉いなぁ」っておじいちゃん的な気持ちで言ったら、「いえ。私にはこれぐらいしか取り柄がありませんから」って恥ずかしげに目線を逸らしながら言うから「ミリアは偉いし可愛いなぁ」って言ったらとうとう顔を下に向けてしまったのでさらに頭を撫でながら「可愛いなぁ」と追撃したら真っ赤な顔でキッと俺を睨み「なんですか急にッ。褒めたって何も出ませんよ!」とか言い出したので無言で撫で続けたらミリアも無言で撫でられ続けていた。ミリア超可愛い。
「なぜアリス様は産まれる前のお兄様に接触したのですか?」
「僕が彼を殺してしまってね。お詫びを言っていたんだ」
俺は暇な時結構本を読んだりしている。テレビもゲームもないのだからそれくらいしかすることがない。ので俺の持っている本は奴隷たちの暇つぶしにも使えるように、書斎に来れば貸すことにしている。ミリアとかはよく借りに来る。でもその日は珍しくミリが借りに来た。「珍しいな」って聞くと、「ご主人様が本好きだから私も好きになりたいなって」思わずんんあああああっ、と叫びたくなるほどの可愛さだった。表に出さないようにミリが指定した本を渡した。ミリは部屋に戻るもんだと思ってたんだが忙しなく視線を動かしたまま書斎を出て行かない。「どうした?」と聞くと、「ご主人様と一緒に読みたいなって。ダメ?」んんんああああッ「もちろんいいよ」俺のポーカーフェイスはなかなかのものだと思う。そのままミリのわからない単語を教えたりしながら過ごした。ミリ超可愛い。
「っ!?どういうことですか?」
「彼は昔別の世界で生きていてね。その時ボクが間違えて殺してしまってね。お詫びにこの世界に転生させたんだ」
メイドの仕事は交代でやらせている。仕事がない日には、私服で過ごさせる。これは公私を分けるためだ。あんまり意味が無いが。休みの日、とは行ってもみんな基本的には家にいるのであんまり変わらない。ちなみに服は俺が作っている。この世界の少女は、前の世界でいうゴスロリのようなものを着る。まあ富裕層に限るが。そんなわけで俺が作る服は大体ゴスロリモチーフだ。しかし、それが嫌だという子には、他の服を作ってあげている。カリナだ。「私にはこういう服は合わないと思う」とか言って少年が着るような服を求めるのだ。だから「カリナがこの服を着ているところがみたいな」ってゴスロリモチーフの服を持ちながらイケボで言うと、「ご主人様がいうならしょうがないな」とかまんざらでもなさそうな感じでいうの。ロリータ系の服に憧れはあるらしい。でもいざ着ると恥ずかしいのか上目がちに「ど、どうだい?」とかいうもんだから食い気味で「可愛いよ。よく似合っている」って言ったら小声で「やった……」とか言ってガッツポーズしてた。カリナ超可愛い。
「お兄様はほかの世界から来たのですか。物語の勇者みたいに」
「勇者とはちょっと違うんだけどね」
俺がソファーに座りながらボーッとしていると、オフのマリアが俺に一声かけて隣に座ったの。そのまま二人でボーッとしてたら急にマリアが笑い出した。「どうした?」と聞くと「ご主人様とこうしていることが楽しくって」とか言いやがってあまりに可愛かったので頭を優しく撫でると「ご主人様をこんなに近く感じられるなんて私はなんて幸せ何でしょう」とかいうから俺も負けじと頭を撫で続けてたらいつの間にかマリアは寝てしまった。マリア超可愛い。
「どういうことですか?」
「勇者は召喚されるんだよ。アレックスは転生だから少し違う。前の世界の彼と、今のアレックスは、精神が同じなだけで身体は全くの別物だ。アレックスは正真正銘君のお兄さんだよ」
幼女奴隷の中で最も治癒魔法が得意なのはクラウだ。クラウも結構料理をするのだが、俺に作る時は大体怪我をしてしまう。手首だとか結構変なところだ。それを治したりしていくうちに治癒魔法が得意になったらしい。ピンポイントで俺の料理の時だけ怪我するので聞いてみたら、「ご主人様が私の作った料理を食べると思うと緊張してしまうのです」と言ったので愛いやつめ、とか思ってたら「ホントは私の汚い血なんかよりも私がご主人様の一部をいただきたいのですが、ご主人様を傷つけるわけにもいきませんし……」って小声で言っているのが聞こえたので、「クラウの血は汚くないよ。むしろ結構おいしい。でも心配するから怪我には気を付けてね」って言うと恍惚とした表情で返事をしてくれた。クラウ超可愛い。
「もう聞きことはほとんど聞けました。あとはお兄様の恥ずかしい話などがあれば聞きたいのですが」
「あれはボクと彼がはじめあった時。彼は号泣していてね」
エリルの狼耳は超モフモフしている。のでよくモフらせて貰っているのだが、その度に頬を染めて恥ずかしげに身をよじらせるのがいい。あまりに可愛かったので思わず「かわいい」と言うとさらに頬を赤くし「わ、我をからかうでないっ」とか言うの。向かい会ってエリルの耳と耳の間に顔を押し付けるとエリルのいい匂いと耳もモフモフで天国なんだけど、それは流石に恥ずかしすぎるのかあまり長い時間はやらせてくれない。エリル超可愛い。
「詳しくお願いします」
「彼を呼び出したあと、ボクは恥ずかしながらも罪悪感で泣いてしまっていてね。泣きながら彼に話しかけたらお化けと間違われてしまったんだ。その結果。知らないところにいきなり連れてこられて極限状態の彼は無き叫びながらその場から逃走。ボクも必死で追いかけた。あの時の彼は可愛かったな」
ん?なんか俺の恥ずかしい話をしている気がする。妄想(?)もひと段落したし
「おーい。そろそろ帰るぞ」
そう言うとみんな俺のところまで戻ってくる。アリスちゃんに「また来る」といい、屋敷に戻る。
寝る直前。
「お兄様ってアリス様と初めて会った時号泣したらしいですね」
「!?」
「ふふっ。おやすみなさい」
「お、おやすみ」
アリスちゃんめ俺の黒歴史を。次あった時に愛で殺してやる。
奴隷達は頑張って敬語にしようとしますが、たまに普通に喋ってしまいます。カリナとかは敬語にする気がなさそうですが。




