マジ天使
七月二日 人類を滅ぼすように編集しました
目が覚めると白一色のところにいた。
寝ぼける頭でこういう状況にふさわしい言葉を言ってみた。
「知らない天井だ……」
そもそも白すぎて天井がどこにあるのかよくわからなかったのだが、言ってみたい言葉ランキング上位の言葉を言えてすっきりしたのかやっとこさ頭が働き始めた。
最後にフラグ的発言をしようとしたら意識が途切れたんだよな、と思い返しながら部屋(?)を見渡してみると不意に耳元で声がした。
「ねえ」
「うわああああああん!」
え、なに幽霊?
泣いてる感じの声がして、心底びびった俺も泣きながらこの白い部屋を走り回る。
そんなに体力がある方じゃない俺は二、三分で疲れてしまい転ぶ。
その隙をついたのか先ほどの声の持ち主らしき人が寄ってきた。半泣きで。
その姿を見て俺は言葉を失った。理由は二つだ。俺がここまで動揺して泣き叫びながらの全力疾走したのはお化け的な何かが俺を襲うのかと思っていたからだ。でもその子は襲おうとするどころか、そもそも幽霊には見えなかった。足だってしっかりあるし透けてもいない。そして何よりーーー
羽が生えていた。
それだけでも驚きなのに俺的にもっと驚くことがあったその子は幼女だった。それもとびきりの美幼女。
自他共に認める紳士の俺は(泣いているので)彼女の頭をなでながら色々と聞いて見ることにした。
「ねえ、君。ここがどこだか知ってる?」
「ああ、知っているよ。なぜならボクが君を呼んだのだからね」
驚いた。
どうやら彼女はボクっ子らしい。ことごとく俺の趣味をついてくるな。
「どうして呼んだのか聞いてもいいかな」
「もちろんさ。ボクが君を呼んだのは、ボクが君を殺したからなんだ。僕の住んでいる神界というところからものを落としてしまいそれが君に直撃したのさ」
「ふーん」
どうやら俺は死んだらしい。
ちなみに彼女が喋っているあいだに頭をなでながら後ろに回り込み彼女を乗せて胡座をかいた。
俺は特になにも思わなかった。だからそのままなで続けていたのだが、彼女は落ち着いて来たら段々と恥ずかしくなってきたようでその恥ずかしさを紛らわすように俺に質問をする。
「あ、あの」
「ん、なに?」
「怒ってないのかい。ボクが気を抜いたせいで君のこれからの人生を奪うことになったんだよ?」
「んーあんまり。そんなに楽しい人生でもなかったし」
「そ、そう」
あまりにあっさりと言うもんだから彼女は面食らったようだ。
そういえば彼女の名前は何だろう。
「そんなことよりもさ、君のこと教えてくれないか」
「そんなことって……。まあいいや。ボクのことだったね。ボクの名前はクレアリス。序列一位の神で終わりと始まりを司る。好きな食べ物はモモだよ」
「クレアリス……ちょっと長いからアリスって呼ぶね。俺の名前は……ん?名前わかんないや」
「ああ、それは死んでしまったショックからだろう」
ふーんまあいいやどうせ死んだんだし名前なんかいらないだろう。
それよりもアリスのことだ。マジ天使だとは思っていたけどまさか神様だなんて。それもなんかかっこいい感じのものを司る。アリスちゃん最強!!
アリスちゃんprpr
そんなことを考えているとアリスが言った。
「ボクは君の残りの人生を奪ってしまった。だからお詫びとして君の過ごしていた世界とは違う世界に行って貰おうと思う。
どんな世界がいいか教えてくれないか?」
まさかの異世界転生か。どんな世界って言われてもね。
「剣と魔法の世界かな。魔物とかいる感じの。あー、あとステータスとかがある方がいいかも」
「ふむふむ。ちょうどいい世界があるよ。君の条件をすべて満たしているがもうすぐ人類が滅ぶ世界でね」
「滅ぶ?どんくらいで?」
「だいたい二百年といったところか。その世界は君のいた世界、地球の十倍くらいの大きさなのだが魔物に追いやられて人類は世界の七分の一程度の所に集まって生活している。
人類の集まっているところが内界、そこ以外を外界と呼んでいるよ」
アリスはそこで一旦切ると続けてこういった。
「君がこの世界に行くのなら文字通りに何でもできる」
「何でも?」
「ああ、どうせ滅ぶ世界だ。君が人類をすべて殺しても魔物を皆殺しにしても何をしてもいい。君はその世界に置いて想像したことをすべて実行できるようになる」
うーん、そう言われてもよくわからんな。そんなことよりもアリスちゃんが暖かくて眠たくなってきた。
「どうだい?君が望むならそのままの姿で異世界転移という形をとることもできるが」
悩むな。転移なら家族だとか何も無い状態で始めることができるが常識が一切ないので怪しい人になってしまう。
ならば、転生のいいところは何だろう。まず生まれ変わるのだからイケメンになれるかもしれない。そこら辺はアリスちゃんに頼めばどうにかなるだろう。デメリットは、家族がいるからあんまり自由に暮らせないかもしれないことか。これもまあどうにかなるだろう。常識を覚えてから家出なりをすればいい。
あとは何かないかな、と膝の上にいるアリスちゃんを抱き締めながら考えていると、転生するにあたっての大きなメリットを思いついた。
それは妹ができるかもしれないということだ。なぜさっきまで思いつかなかったのだろう。俺はずっと妹を欲していたではないか。ああ、アリスちゃんがいて良かった。アリスちゃんがいなきゃ最後まで思いつかなかっただろう。
「決めたよ。転生にしてくれ」
「わかった。他にして欲しいことはないかい?」
「そうだな。イケメンにしてくれ。あと妹をくれ」
「う、うん。わかったよ」
なんかアリスちゃんが引いてる気がする。イケメンにしてくれだなんて俗っぽいと思われたかな。
アリスちゃんの前に光り輝く水晶が現れた。それをしばらくいじっていたかと思うと、俺の方に振り返りながら言う。
「これで準備はできたよ。おまけもつけといたから楽しみにしててね。」
どうやらアリスちゃんとのお別れの時が来たようだ。泣きそう。てか泣いた。そんな俺を見てアリスちゃんが慌ててる。慌てるアリスちゃんも可愛いななどと考えながらお別れの言葉を言う。
「アリス。色々ありがとう。異世界楽しんでくるよ」
「いや、ボクは君を殺したんだ。礼など言われることはしてないさ。これがボク精一杯のお詫びだ」
「とにかく俺は君に感謝している。俺を殺したとか関係なく」
「そうか。ありがとう。ボクは君の幸せをここで祈っているよ」
アリスちゃんは一度視線を落とした。しかしすぐに俺の方を向くと言った。
「そろそろお別れだ」
「ああ、本当に感謝している。じゃあね」
「うん。じゃあね。また」
アリスちゃんがそう言うと同時に俺の視界が白く染まっていく。
段々と離れていく意識の中、あれ結局家出するんだから妹と長く一緒にいられなくね?そんなことを思っていた
主人公は心の中ではアリスちゃんと呼びますが、実際に話す時はアリスと呼びます。理由はただ単にアリスちゃんって呼んだら気持ち悪がられるかな、と考えてのことです。