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豚(息子)

 王都についてもアイリスは元気がない。今夜にでももう一度聞いて見よう。お兄様心配。


 俺、アイリス、エリル、イリアの四人でギルドに向かう。忍メイドは、気配を完全に消してついて来ている。訓練として、今日は合図があるまで姿を見せないように言ったのだ。


 ギルドに向かう理由は、ギリルさんに初めて入る街のギルドには挨拶すべきだと言っていたからだ。


 挨拶もそこそこにギルドを出ると、外がなにやら騒がしい。少し気になって声の出元を見ると、趣味の悪いギラギラとした馬車があった。その中にいる豚の獣人が身を乗り出して喚いているようだ。


 「お前らどけ!この僕が通っているんだ!道をあけろ!」


 俺には、みんなかかわり合いになりたくないからか、馬車から結構距離をとっているように見えるのだが、あの獣人にとっては違うのだろう。


 「む」


 そのまま俺達の前を通りすぎるかと思ったが何故か馬車を止め、四人の取り巻きと共に豚の獣人がおりてきた。


 「そこの女ども。僕と共に来る権利をやろう」


 そう言うやいなや比較的近くにいたアイリスとエリルの腕を掴もうとする。しかし、エリルはスルッと避ける。当然アイリスもそうするのだと思っていたが、普段のアイリスとは違うのだった。腕を掴まれたことに気づかない様子でぼーっとしている。


 ってか何してんの。アイリスの、腕を、豚が、掴んでいる。は?


 理解するとすぐに走りだす。


 「第五階級魔法 炎剣」


 走りながら炎の剣を作り出し、アイリスを掴んでいる方の腕を切り落とした。


 「ぐぁああああ!」


 汚い声を聞き流しメイド達に合図をだす。すると、豚とその取り巻きの周りに突如として忍メイド達は現れた。


 「無力化して路地裏に連れていけ」


 「はッ」


 指示を出して、何が起こっているかわからない様子の野次馬を放置し、アイリスに話しかける。


 「大丈夫か?今浄化するからな」


 「え?何かあったんですか?」


 「覚えてないならいい。一旦屋敷の中で休め」


 「……?は、はい」


 亜空間への入口を開き、エリルにアイリスを任せて、路地裏に行く。



 「お前ら!僕が誰だかわかっているのかっ!国王の息子だぞ!」


 豚が喚いている。取り巻きは忍メイド達が気絶させたのだろうか、横たわったまま動かない。どうせなら豚も気絶させて良かったのに。


 「お前。今の状況わかってる?」


 「はぁ?わけのわからないことを言ってないで開放しろ!」


 「お前はアイリスに汚い手で触れた。有罪(ギルティ)だ」


 そう言って気絶させる。

 

 昔酷い仕打ちを受けた奴隷たちの前でこいつを甚振るわけにはいかない。場所を変えよう。


 「ちょっとこいつを処分してくるからお前らはそいつらから話し聞いとけ」


 取り巻きを指差しながら言う。しかし奴隷たちから反応がない。


 「どうした?」


 「あの!私達も一緒にしてもいいですか?」


 意を決したように言う。


 「でも、俺結構こいつをグチャグチャにする予定なんだけど。お前らには見せたくないというか、なんというか」


 「ご主人様は私達が受けた仕打ちのことを気にして言ってくれているのはわかる」


 「でも、もう私達は気にしていません」


 イリアに続いてラウラが言う。


 「最高の主人に出会えたしな」


 「だから私達も一緒にやらせてください。アイリス様に触れたあいつを私達も許せないんです」


 カリナが言い、ミリアも続く。


 「そこまで言われたら断れないな。地下室に運ぼう」


 「地下室?」

 

 ララスさんが聞いてくる。


 「ちょっと前につくった」


 獣人の国への旅路で急にガールズトークが始まって暇だった時につくったのだ。拷問部屋と牢と訓練部屋がある。



 奴隷たちに地下室への位置を教えて、豚を拷問部屋、取り巻きを牢に運んで貰った。その間、アイリスの様子を見に行く。


 どうやらまだ寝られないようだ。最近寝不足のようだったし、不眠症気味なのかも知れない。


 「アイリス。眠れないのか?」


 「はい。眠いのですが、寝ようとすると色々考えてしまって眠れないのです」


 眠れないのであれば少し話でもしよう。


 「エリル。地下室行って奴隷たちに拷問はまた明日にするって伝えてくれない?」


 「地下室?」


 「つくったの」


 エリルにも位置を教えて伝言役を頼んだ。


 「アイリス。考えてしまうことを俺にも話してくれないか」


 「ええ。最近お兄様って夜どこかに行くじゃないですか」


 「ああ」


 毎晩アリスちゃんに会いに行っていた。


 「お兄様が(わたくし)の知らない人に会いに行っているのかと思う眠れなくって」


 つまりは俺がアイリスに内緒で出掛けて行ったがためにアイリスは豚に腕を掴まれる程元気がなくなってしまったのか。俺のせいで。


 「俺が会う人のことを知ったら少しは安心できる?」


 「わかりません。でもお兄様が毎晩会いに行くような人のことを知りたいとは思います」


 「じゃあ今度会いに行こうか。そろそろ連れていこうかと思ってたんだよね」


 「本当ですか……?」


 「ああ」


 「ありがとうございます」


 そう言うと眠ってしまった。その寝顔に「ごめんな」と言い、俺も寝ることにしよう。

 『何でもできる力』ってすごい便利。後付けし放題。

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