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疑惑

 朝。みんなで朝食を取り、屋敷を亜空間にしまって街を出る。


 獣人の国の王都を目指して歩いていく。歩いて一週間と少しで人間の国から出る。そこからまた一週間程歩いたら、獣人の国の王都だ。


 王都を目指す理由は、ちょうど俺達が着く位の時に王都で闘技大会があるらしい。この闘技大会は、国王を決める結構大事な大会で、年に二回程一週間かけて行われる。この大会で優勝したもの、またはその後援者が王になる権利を与えられる。後援者にも王になる権利があるのは、力は強いが、政治なんてできない、という人対策である。ただ力試しに出場して、優勝した場合は王になるのを辞退すればいい。けれど、後援者から支援を受けたり、優勝できたら金を貰う約束をしたりしていた方が得だろう。

 この制度だと、王がどのような人になるのかわからないため、結構国が駄目になりそうなものだが、王がある程度大きな政策を実施したり、決定を下すときに、議会で過半数の賛成を得られないと駄目だったりするので、一応国としてやっていけている。


 とはいえ、今の王は結構やりたい放題らしい。どうにかして議会を丸め込み、税率を上げたりしているらしい。イリアとカリナもそのせいで奴隷になったし。






 途中で小さな街によりながらも獣人の国の中に入ることが出来た。国同士の行き来は結構自由で、せいぜい国際的な指名手配を受けていないかの確認程度だったりする。


 また、獣人の国にも少ないながらも冒険者ギルドがあるため、ギルドのある街に入る時は冒険者カードを見せると身分証代わりとなって、簡単に街に入れる。


 アイリスとエリルがちょっと前の方を歩いて話しているようだ。奴隷たちはイリアが中心になってなにやら話している。話すのがあまり得意ではないイリアが中心になっているのなんて珍しいからちょっと会話を盗み聞きする。


 「私、永遠にご主人様と一緒に居られることになった」


 こころなしか得意気な顔をしてイリアが言う。


 「えっ。どういうことよ!」


 クラウがイリアに詰め寄る。


 「ダンジョンをクリアするとご褒美があるのは知ってる?」


 「神に願いを叶えて貰えるってやつですね」


 問いかけるイリアにミリアが答える。


 「そう。それで私は条件付きの不老不死を望んだの」


 「条件って?」


 マリアが聞く。


 「ご主人様が死ぬまで」


 「それじゃあ、永遠とは言えないんじゃないか?」


 カリナが疑問を呈する。


 「ふふ。それがご主人様も自力で不老不死になっていたらしい」


 「えー、ずるーい」


 「ずるーい」


 笑いながら言ったイリアにミリとサリーがブーブーと文句を言う。口には出さないけどみんな羨ましそうだ。


 「で、でも私達もご主人様に許可をとってダンジョンに入ればすぐに不老不死になれるよね」

 

 そうイルミアが言う。


 「でも、ダンジョン都市に戻るのはいつになることやら。ダンジョン都市に戻って来る頃には貴女達はもう大人でしょうね」


 ララスさんが周りの幼女に言う。


 「それじゃ遅いかも。ご主人様小さい子供が好みみたいだし」


 ラウラが難しい顔をしながら言うと他の奴隷も「たしかに……」なんて言っている。


 っていうか俺がロリコンなのバレてんのかよ。


 「い、イリアちゃん位の年齢のままを年取らないの羨ましい……。ご主人様の好きな姿のままずっとお側に居られる」


 アミが言うとまたイリアに羨ましげな視線が向けられる。


 「お前らも訓練頑張ってたみたいだし不老不死にしてやってもいいぞ」


 見てられなくなったのでそう言う。


 訓練というのは、留守番組に忍メイドになるためのやらせていたものだ。『超隠密』を使いこなし、それに頼りすぎることなくスキルなしでも敵に見つからないような訓練をさせた。その結果、俺でも気を抜くとどこにいるかわからないレベルにまで成長した。


 俺の言葉を聞いた留守番組がにわかに色めき立つ。反面イリアは不満そうだ。ダンジョン攻略のご褒美として貰ったものを、ダンジョンに行ってない者にも与えられたからだろう。


 「イリアにもなんか別で御褒美をあげよう。何がいい?」


 そう言うとイリアは眩しい笑顔を浮かべ、考え始める。


 「エリル様が食べていたお肉を私も食べてみたい」


 少し考えた結果は俺の肉らしい。とはいえみんなは俺の肉だって知らないのだが。それくらいならと快諾する。


 「今晩にでも」


 夕食に出して貰おう。イリアだけ食べさせるとみんな羨ましがるので、アイリス、エリル、イリアの分を多くして、他の人達には腕一本分位を食べてもらう。

 腕を十本切り取り、足を三本切り取らなければならなくなったことに苦笑し、アイリス達の話も盗み聞こう。留守番組の不老不死化は後だ。


 「獣人の国にはどんな料理があるか楽しみじゃの、アイリス」


 「…………」


 「アイリス?」


 「は、はい。楽しみですね」


 「?」


 アイリスは最近ぼーっとすることが多くなった。具体的にはダンジョン都市を出た日からずっと。どうしたのか聞いても答えてくれないので、仕方なく放って置いているのだが、やっぱり心配だ。なんかあったのだろうか。


 アイリスの元気がなくなったのはダンジョン都市から出た日。つまりその日に何かあったと考えるのが普通だろう。ダンジョン都市から出たくなかったとか?でもなんで。まさか好きな男が居てそれから離れたくなかったりしたのかッ。許さん!お兄様は許しません!でもあんなになるまで好きだったのであれば、それを許すのも愛、か。


 「アイリス。お前がそこまで想っているならお兄様も認めよう」


 「? は、はあ」


 すごく嫌だけど。すっごく嫌だけど!アイリスが望むのなら『転移』でいったんダンジョン都市に戻るのも吝かでない。まあ、俺から「ダンジョン都市にいる好きな人のところに連れていってやる」なんて絶対に言わないが。あくまでアイリスが言うのであれば行くというだけだ。敵に塩を送る気はない。



 そんなことを考え続けていたらとうとう王都に着いた。

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