不老不死
全話のタイトルが間違っていたので修正しました。
アイリス視点です。最後の方でアレックス視点に戻ります。
こんにちは。お兄様の妹、アイリスです。お兄様の妹が私だけなのと同様に、私のお兄様もアレックスお兄様だけです。アルフレッド?知らないです。
光に包まれて、目を開けると真っ白なところに来ていました。
「何じゃここは」
「白い」
エリルとイリアも一緒のようです。
「お兄様?」
「そういえば居らんの」
まあ、お兄様なら何があっても大丈夫でしょうけど。それでも目に付くところに居ないだけで落ち着かない気分です。エリルも同じようでソワソワしています。
キョロキョロしていると急に声をかけられました。
「ごきげんよう皆様。私はこの世界の管理を任された神、サリウムと申します」
そう白い衣を身にまとった女性が言いました。多分人間ではないでしょう。翼がついています。それどころか人類でもなさそうです。神と言っているのは嘘じゃなさそうです。
「はじめまして。私はアイリスです」
「我はエリルじゃ」
「イリア」
こちらも自己紹介をします。挨拶は大事です。それが初対面ともなるとさらに。
「これはご丁寧に。皆様をここにお連れしたのはダンジョン攻略の御褒美として何か願い事を叶える為です。
本来なら一人一人聞いて行くのですが、皆様同じ願いのようでしたので一斉にお呼びしました」
お兄様が居ないのはそんな理由からでしたか。
でもどこにいるのかは気になります。
「お兄様はどこに?」
「アレックス様は別の神が願いを聞いています。これは特別な事例です。普段であれば呼ばれた人以外はその場に留まります」
「何故お兄様は別の神なのですか?」
「それはアレックス様とその神、上司のような方なのですが、その方と友人のようでして。わざわざ私の元まで来てお願いされたのです。その方、アリス様という名なのですが、アリス様は大変偉い方で、本来なら私を呼びつけても問題ない立場にあるにも関わらず「ボクからお願いするのだからこちらから出向くのは当然だ」などとおっしゃいまして、私のような格の低い者にも礼儀を忘れない素晴らしい方です。私はお願いされた時に初めて会ったのですが、誰かの上に立つ者はこうあるべきだと教えて貰った気分です。彼女のような神の下にいることは誇りです」
うーわー。これはすごい好き何でしょうね、アリス様という方のことが。
それにしてもアリス様ですか。
「彼女と仰っていたところからアリス様という方は女性ですよね」
「ええ、女性型の神です」
「へぇ。そうですか」
「アイリス様、お顔怖い」
「普段主が女子と話していても気にしないくせに何故そんな顔をするのじゃ」
呆れたように言うエリル。
「そんなこと言われましても、私の知っている人と話すのであれば安心できるのですが……」
「話を戻しましょう。皆さんの願いを言ってください」
「そういえばそのために呼ばれたんじゃったな」
そういえばそうです。
「私達は条件付きの不老不死を望みます」
「条件とは?」
「お兄様が死ぬまでです」
お兄様はステータスを弄ったり、膨大な量の魔力を持っていますが、死ぬ時は死ぬのでしょう。外的要因ならどうにか私達が守ったりも出来ますが、それが内的要因、寿命とかだと私達にはどうしようもできません。せめてお兄様が亡くなる最後の時まで若々しい姿で居たいのです。そして、お兄様のいない世界なんて価値がないので死ねるようにします。完璧。
ちなみにお兄様を不老不死にしないのは、お兄様がそれを望んでいない可能性があるからです。前にお兄様に本を借りたのですが、その中に不死身になった男の苦悩を描いたものがあったのです。
「それくらいならできるのですが……。うーん」
なにやらサリウム様が考えています。何か問題でもあるのでしょうか?
「まあいいでしょう。不老不死にするのはいいですが、そうしたら皆様は人類ではなくなりますがよろしいですか?」
「私は構いません」
「私も」
「我は元々人類じゃないしの」
「では皆様を条件付きの不老不死にします。ダンジョン攻略お疲れ様でした」
そうサリウム様が言うのと同時に、暖かい光に包まれました。
「これで皆様は不老不死です。例え体が粉微塵になっても再生します。再生するときは常人を基準にして、死ぬような怪我を負った場合のみです。再生は一瞬で、すべての怪我がない状態になります」
終わったようなのでサリウム様にお礼を言う。エリルとイリアも言った後、サリウム様にこんな事を聞かれた。
「アレックス様って何か好きな物があるのでしょうか?」
「何故そんなことを聞くのですか?」
「アリス様のご友人であるアレックス様が私の管理する世界にいる限り便宜を図らせて貰おうかと」
「そうでしたか。でもお兄様はそういうの嫌うと思いますよ」
「そうなのですか……。よろしければアレックス様に宜しくお伝えください」
「承りました」
そしてそれぞれ別れの挨拶をすると、光が私達を包んだ。
目を開けるとアイリス達が居た。
「アイリス達はなにを頼んだんだ?」
「秘密、です。いつかわかりますよ。お兄様は?」
「俺も秘密かな。アイリス達にとっては価値のないことだろうし」
そういいながらアイリスを鑑定する。生物を相手にする鑑定は、ステータスだけでなく、その生物がどんなものか調べることができる。人に使ってもその人の種族やその説明くらいしか出ないのであまり使わないのだが、もしかしたらアイリス達が何を頼んだのかわかるかもしれない。
例外的人類
え?何そのかっこいいの。エリルもイリアも同じみたいだ。ってかエリルそもそも人じゃないってのに例外的な人類になっているってどういうことよ。
種族の説明を見てみよう。
例外的人類
何らかの要因によって不老不死になったもの。
え?不老不死?
「なに、お前ら不老不死になったの?」
「なぜそれを……っていうかお兄様!例外的人類ってなんですか!お兄様は人類ではなかったのですか!?」
俺も例外的人類なのかよ。
「説明見てごらん」
「不老不死!?お兄様もそうなのですか!?」
「ああ、ちょっと前にな」
「ということは神様に頼んだのは別のことですか」
「ああ、自分で不老不死にした」
「お兄様はそんなこともできるのですか。私全然知りませんでした」
「俺は何でもできるからな」
さてそろそろ帰ろうか。てかこの階層、転移石ないじゃん。転移玉持っててよかった。
さあ、転移玉使おうかって時にアイリスに話かけられた。
「お兄様、アリス様って誰ですか」
「なんで知って」
「そんなことはどうでもいいのです。どんな関係なのですか」
言い切る前に被せられた。
「どんなって友達だよ」
なんか浮気したのを問い詰められている気分だ。居心地が悪いので適当に切り上げて地上に戻ることにする。
「気になるなら夕食を食べながら話そう。それよりさっさと帰ろうぜ」
「むう。夕食の時覚悟してくださいね」
「はいはい」
ダンジョンは攻略し終わった。次は世界を回ろう。どこに行こうかな。
セリウムがアイリス達を不老不死にする時、ちょっと考えたのは、アレックスが不老不死なのを知っていたからです。