再会
七十階層。そこを一言で表すと
「祭壇……ですね」
祭壇ということはもう最後の階層かな。
「叶えて貰う願い事決めた?」
本当に願いが叶うかなんて知らないけど、こういう会話自体が楽しいのよ。
「我は美味しい食材を沢山頼むのじゃ」
「なんかもったいないな」
「そんなこと言われても大抵のことは主に頼めばどうにかなるしの」
言われて見りゃそうだ。食材もあげるんだけどなぁ。
「アイリスは?」
「私の願いはお兄様には内緒です」
なに、反抗期?まあサプライズ精神だろう。そう思わなきゃやってられない。「お兄様なんて嫌いです」とか言われたら俺は自分の首を切り落とすね。再生するけど。
「イリアは?」
「私はまだ思いつかない。アイリス様と同じにしようかな」
え、なに。イリアはアイリスの願い知ってんの?俺だけ教えてもらえない感じ?ちょっと泣きそ。まあ、面と向かって嫌い、と言われない限り俺は認めん。
「何じゃ、イリアはアイリスと同じにするのか。我もそうしようかの」
「えー、俺だけ仲間はずれー」
さみしい。
「まあ、いい。探索するぞ」
そう言って、中心の方へ近づく。ちょうど真ん中かな?ってところで俺達は光に包まれた。
閉じていた目を開くと見覚えのある空間。一面の白だ。この白い空間の中でも唯一白くないところを発見する。結構遠いので、目を凝らして見るとあれは人影かな。ていうかあの人影は知り合いっぽいな。
そう、脳が判断を下した直後、俺は走り出していた。
何故か知らないが数キロ離れていた。しかし今の俺にはそこまで時間のかかる距離ではない。近づくに連れて、より鮮明に姿を捉える。間違いない。あれは
「アリスちゃ、……んんっ。
アリスッ!!」
「久しぶりだね。また会えて嬉しいよ」
俺も超嬉しい。アリスちゃんの前で急停止して声をかけたらこう返してくれた。いつかのようにアリスちゃんを乗せて胡座をかく。
「また会えるとは思ってなかったよ」
「ボクは別れ際に、また会えることを伝えたつもりだけどね」
全然気づかんかった。
「ボクはいつか君がどっかのダンジョンを攻略すると信じて、この世界担当の神に役目を代わって貰ったんだ」
「そういえばアリスは偉い神様だったね。アイリス達はこの世界の神のところに行ってるの?」
「そうだよ。ところで転生してからの君の話が聞きたいな。たまにここから眺めていたけどずっと見ているわけにもいかないからね」
「そうだな。生まれてから今に至るまでの話をノンカットで説明しよう」
そんな感じでアリスちゃんにこれまでのことを話終わったあたりでこう問われた。
「アレックスはダンジョン攻略の御褒美どうするの?」
「そうだな。ちょっとそれに関連する質問があるんだけどいいかな」
「もちろん」
「アリスって普段この空間にいるの?」
「ああ、ボクの神としての仕事なんて滅多にないからね。下界を眺めたりしているよ」
「じゃあ、ダメ元なんだけどさ。ここに遊びに来れるようにしてくれないかな」
そう俺が言うとアリスは驚いたような顔をした。やっぱり無理かな。
「驚いた。ボクからお願いしようとしていたんだよ」
俺も驚いた。アリスちゃんと同じことを考えていたなんてこれは運命だね。
「ボクからもお願いしたいことだったからね。もう一個お願いを聞こう」
「うーん。じゃあ俺があっちでの生活に飽きて死んだ後に、アリスの補佐的なことしたいな」
これは少し前にした、アリスちゃんをプロデュースしてトップアイドルにする妄想から出たお願いだ。なんか寝付けなかったから妄想した。
「これまた驚いた。それもいつかお願いしよう思ってたんだよ。君はボクの心でも読んでいるのかい」
ここまで考えることが同じだともう結婚するしかないね。
「ボクはまだ神の中でも若い部類でね。お供の神がいないんだよ。そろそろ生み出さないとかなって思っていたんだよ」
「でもいいの?俺結構あっちの世界で遊んでいく予定だけど」
「五十万年くらいなら大丈夫だよ」
五十万年って。小学生みたいというかなんというか。ここら辺はさすが神だな。
それにしても若い神だってのに確か序列一位だとか言ってたよな。字面見ると明らかに一番偉いんだけど。
「この序列は生まれた時の能力で決まるからね」
色々聞いてみると神は生まれた時に何を司るか判明する。この時、自然発生と両親から産まれるのと、神に作られるのとで必ずしも親がいるとは限らないらしい。
閑話休題。
序列一位ってのは終わりと始まりを司る神専用の立場で、終わりと始まりを司る神なら強制的にこの立場につく。先代が神としての能力を失って少ししてからアリスちゃんは産まれたらしい。自然発生だと。
他の序列は実力で決まる。終わりと始まりを司る能力ってのがあまりにも強い為、殿堂入りみたいな感じで、終わりと始まりを司る神はみんな序列一位になるらしい。神の世界は意外と実力主義なのだ。
いきなり偉い立場になってしまった為に対等に話せる人がいなくて寂しかったのだと。そんな時に俺が膝の上に乗せるとかやらかしたのが嬉しかったと言ってくれた。超可愛い。
「っと、そろそろ時間だね。また会えるのを待っているよ」
「ああ、昼間はなかなか行けないかもしれないけど夜は極力会いに行くから」
「ふふ、楽しみだ」
アリスちゃんに会う為だったら睡眠などいらない!元々睡眠はいらない体だし。でも寝るのは結構好き。
「じゃあ、また」
「ああ、またな」
そして光が俺を再び包む。