武器、防具
屋敷を一通りまわったあと、家具を買いに高級家具店に行った。
キングサイズのベット一つと、シングルのベットを十二個買い、『アイテムボックス』に入れた。その時の店員の驚きようと言ったらすごかった。
『アイテムボックス』自体は、珍しくはあるがそこまで数の少ないスキルでない。しかしサイズが桁違いなのだ。『アイテムボックス』は、魔力量が多いほど容量も大きくなる。
そんな訳で、羨ましさと恐れの混じった視線を受けながら、本棚やテーブル、ソファーを買っていく。ある程度買えた所で店を後にし、屋敷へ帰る。
お腹が空いたので夕食を食べよう。『アイテムボックス』から、魔物の肉を取り出し、奴隷たちに渡す。ララスさんが他の奴隷達に料理の仕方を教えると言っていた。
「ララスさん。その肉全部料理しちゃってね」
「えっ?は、はい」
ララスさんが動揺したのは、肉の大きさ的に二十五人分はあるからだろう。俺は尋常じゃないくらい食べる。『魔力変化』があるから無限に食い続けられる。エリルも結構食う元々魔物だからなのだろうか、アイリスの四倍くらい食う。アイリスは一般的な量の食事をとる。
ちなみに魔物の肉は一般的に食べられる。というかこの世界には動物などいない。もしかしたらずっと昔にはいたのだろうが、今現在では家畜などもすべて魔物らしい。
閑話休題。
そんなこんなで夕食ができた。
家具店で買ってきた長テーブルの上に料理が乗せられる。三人前だ。俺、アイリス、エリルの前には皿が置かれているが、他のところには置かれていない。というか奴隷達はなんか後ろの方で並んでいる。
「ララスさん達の分は?肉足りなかった?」
普通に考えればそれはないのだが、幼女奴隷達に練習させた結果無くなった、というのであれば可能性はある。
「いえ、私共は後でご主人様の残りを頂ければ」
あー。そういえば我が家でも奴隷と一緒にご飯は食べていなかったな。
「いや、気にせずみんなで食べよう。効率悪いし、なんか罪悪感がある」
お腹空かせた幼女達の前で堂々と食事ができるほどメンタルは強くない。
「ですが我々は奴隷なので……」
「そんなこと言わずにさ、このテーブルを見てよ。超余ってんじゃん。使ってあげてよ。あと皆と食べると美味しいし」
たくさんの幼女に囲まれて食べるご飯はきっととてつもなく美味しいだろう。
それでも一緒に食べようとしてくれないので、「ご主人様のお願いが聞けないの?」という必殺の呪文を使い、一緒に食べることが決定した。
ご飯を一緒に食べながら、みんなの過去の話を聞く。食事時にできるような軽い話ではないだろうから遠慮したかったのだが、幼女に笑顔で「ご主人様に私達のこと知って欲しいんです」なんて言われたらどうしようもない。
予想通り軽い話ではなかったが、みんなのことを知れたし良かったことにしよう。その時、イリスにダンジョン一緒に行かないか、と誘ったら快諾してくれたので、肩の荷をやっと下ろせた気分だった。
そんなこんなで楽しい夕食は終わり、風呂の時間。まず俺が一人で入り、その後その後女性陣が一気に入る。三十人位は余裕で入れそうな大浴場だ。それを決める時も、奴隷がお嬢様方とご一緒する訳にはいかない、だの言っていたが華麗に流した。
この世界にはシャンプーがある。リンスはないが。髪用に調合された石鹸を液状にし、香料を付けたものだ。高級なものにした為か、髪がサラッサラになる。
大満足した気分で風呂を上がり、今のうちに皆の寝室にベットを設置する。
奴隷達にひとり一部屋を与えると言った時にはまたララスさんがなんか言ってきたのだが、スルーした。みんなに好きな部屋を選んで貰い、そこに家具などを置いていく感じだ。部屋は余るほどある。ちょっと大きめの部屋に俺とアイリス用のキングサイズベッドを置く。結局は皆まとまっている。エリルは寂しいから、奴隷達はご主人様の為に直ぐ動けるように、とのことだ。
それぞれの部屋にベットやらを置き終えたあたりで皆お風呂からあがってきた。
風呂上がりの幼女もいいものだな、と思いつつ、みんなでリビングのような所で集まり益体のない話をする。そこにはロの字にソファーが置いていくあり、みんなで座れるようになっている。奴隷達がいつまで経っても座ろうとしないので、お願いして座ってもらう。ララスさんも諦めたのか何も言わない。
そこで奴隷達に自衛能力を持たせる為にこっそりと強化しておく。そして忍メイドになってもらうべく、そっち方面のスキルもつける。
そんなこんなでゆっくりと談話をしていたらもういい時間だ。眠ることにする。
アイリスと共にベットに入り眠った。
深夜の目が覚めた。元からこの時間に起きようと思っていたのだ。アイリスを起こさない様にベットから出て屋敷からも出る。
向かう先は外界だ。
一般的に魔力を多く持つものの肉はとても美味しいとされる。多分俺の肉は凄まじく美味しい。今度食べてみようかな。
俺が外界に向かったのは奴隷達に美味しい肉を食べさせてあげようと思ったからだ。『アイテムボックス』の中にも外界の魔物の肉は入っているが、どうせなら新しく狩りに行こうと思ったのだ。
密林を、雑魚を無視しながら駆け抜ける。狙うのは、前のエリルのようなここら辺一帯のボス。
しばらく走っていると、大きな魔力を感じる。強化前のエリル並だ。これがボスで間違いないだろう。
姿が見えてきた。巨大な蛇だ。『超隠密』で近づいているので気づかれてはいない。このまま首を切り落として、血抜きして『アイテムボックス』に入れて帰るか。
皆にばれる前に急いで屋敷に潜り、何食わぬ顔でベットに入り眠り直した。でももしかしたらみんなにバレてるかもしれない。知覚能力を強化したりもしたからな。『超隠密』を使わなかったことが悔やまれる。まあ、そこまで必死に隠すことでもないんだろうけど。
誰かが部屋に近づく気配がして、起きる。ほどなくしてノックの音がした。返事をするとイリアが入ってきた。
「ご主人様、朝ごはんできた」
「はいよ」
アイリスと共に食堂へ向かう。しっかりと長テーブルの上には奴隷を含めた全員分の料理が置いてある。それを見て嬉しい気持ちになりながら、みんなに朝の挨拶をする。全員が揃ったところで食事の開始だ。
「ところでご主人様。昨晩はどちらに行かれたのですか?」
クラウから聞かれる。みんな特に大げさな反応をしないところをみると、気づいていたようだ。
「ああ、そのことなんだけどね。みんなご飯の片付けなんかが終わった後で中庭に集合してくれ」
「それはわかりましたが、何故ですか?」
ミリアにそう聞かれて、「秘密」なんていいながらはぐらかして食事を終える。
俺は一足先に中庭に行ってよう。
俺が中庭を指定したのは、巨大蛇の解体をしようと思ったからだ。血抜きしたと言っても多少は血が出る。部屋なんかを汚すよりは、庭に血を吸い取らせようと思ったのだ。
誰もいない中庭で巨大蛇を解体する。こいつの鱗はとても硬く軽い。馬鹿みたいに大きいから、屋敷の住人全員分鎧を作れるだろう。
でも女の子に鎧はあまり似合わないかもしれない。まあ、そこら辺はおいおい考えよう。
ちなみに、こんな胴回りなんて俺の身長くらいある、巨大蛇の首を一刀で切り落とした方法だが、無属性魔法で、魔力でできた巨大な剣を作ったのだ。
この魔物は使えるところが沢山ある。
この魔物の武器は、鋭い牙と、硬い鱗、大きな体だ。毒はない。牙を武器に加工し、鱗を鎧にし、肉を食べ、骨を建築材とする。
骨は色々使い道が多いのだが、魔物の骨を加工して建築材にすることは多々ある。
我ながら凄まじい手際で解体を進め、残り少し、というところで皆きた。
解体されていく大きな魔物を見て唖然としていたので、解体を続けながら説明する。
「昨晩、外界に行ってこの魔物を狩ってきた。外界の魔物は美味しいって言うし、お祝い用に。
料理はララスさん、任せた」
説明してもまだ唖然としていたが、ララスさんはいち早く気を取り直し、「腕がなりますね」なんて苦笑気味に言っていた。
肉の内、昼食に使う分だけを渡し、残りは『アイテムボックス』に入れる。
俺は鎧などをどうするか、について考える。街の防具屋なんかにこの素材を持っていったら大騒ぎだ。なのでスキルを追加することにした。
新しく追加したスキルは『武器作成』『合成』だ。
『武器作成』はその名の通り、素材を消費し、武器を作るスキルだ。
『合成』は、異なる物を一つにするスキルだ。
牙を使い、ハンマーと槍を作り、少しを残し、余りで大量のナイフを作る。『武器作成』の面白いところは、素材を大量に使うことで、見た目は小さいままで、強度も重さも桁違いの物が作れる所だ。その特性を使い一メートル前後だがとても重いハンマーを作った。
鱗と残りの牙は『武器作成』で圧縮し、爪を内蔵させた手甲にした。
『合成』は、二つ異なる物を一つにするスキル。奴隷達の着ているメイド服に、鱗を合成する。そうしたら、布のやわらかさと、鱗の硬さが混じり、布のままの動き易さと、鱗の防御力が合わさったものが出来る。これを予備のメイド服と、みんなの普段着にも行う。
武器と防具はこんなもんでいいかな。