新キャラ2
一旦、イケメンスマイルを崩して目の前にいる奴隷'sを見る。
見ようとしたが一瞬見失った。目の前にいるのに見失う、というのも変な話だが、話しかけた相手が土下座してたら見失ってもおかしくないだろう。
「え、なに。どうしたの?」
「我々一同ご主人様のお人柄に心奪われましたっ。これからご主人様の為に、身を粉にして尽くしていく所存です!」
土下座の理由を問うと、唯一の大人の奴隷さんが答える。
まあ、奴隷達の忠誠心が高いことはいいことだよね、と乾いた笑いを浮かべていると、彼女達の格好が目に付いた。
粗末な布着のままだ。こんなのは俺の屋敷のメイドとしてふさわしくないな。
よし。
「お前ら!とりあえず脱げ!」
「……?…………!!
はい!!」
最初はきょとんとしていたが、なにかに気づくと、そこはかとなく嬉しそうな顔を浮かべ、脱ぎ始めた。何故嬉しそうな顔をしているのかはわからないが、命令にすぐ従うのはいいことだな。うん。
「お兄様…………」
「主…………」
なんかアイリスとエリルの俺を見る目が冷たい。え?俺なんかした?
「ご主人様。我々は皆経験が無いので、できれば優しく……」
うん?なんか変なこと言ってない?経験とか。
いやまあ、俺もわかってて悪ノリした感はあるけどね。ここは誤解を解いておこう。
「いや、別にそういうことをしようとしたんじゃなくて、ただこの服に着替えてもらおうとしただけだから」
先ほど、家に着く前に買って来て置いたのだ。メイド服を。もちろん現代日本の物ではないほうだ。
「え?そうなのですか……」
なんかちょっと残念そう。ごめんね!
そそくさと着替え始める奴隷達。
その間にアイリスと話し合う。
「ねぇ、アイリス。俺は彼女達の下着を買ってないんだけどどうしたらいいと思う?」
「お兄様はデリカシーを学べばいいと思います」
「いやそういうんじゃなくて。俺の持っている女性用下着を貸すべきなのかな」
「お兄様が女性用下着を持っているという驚愕の事実は置いといて、持っているのであれば貸して差し上げれば良いのではないでしょうか」
「だよね。でも大人の方がいるじゃん。俺が持っているのは子供用のパンティーだからさ、お姉さんの分はアイリスが貸してあげてよ」
「お兄様が幼女用の下着を持っていることや仮にも女性である私に向かってパンティーとはっきり言い切ったことは置いといて、それくらいでしたら構いません」
「良かった。じゃあ俺が持っているアイリスのパンティーを貸すことにするね」
「お兄様が私の下着を持っていることは置いとけないのですが」
「まあまあ」
さあ話はまとまったし、話している間に着替えも終わったようだ。
「おーいこれを履いとけ」
そう言ってシルクのパンティー×11を渡す。
「ご主人様っ。こんな高級なの履けませんっ」
この世界の布事情は、先進国である日本育ちの俺でも気にならないレベルだ。ポリエステルなどはないが、絹ならばある。蚕っぽい魔物を家畜化して、その糸を使用しているのだ。魔物なので地球の蚕とは比べ物にならないくらい大きい為大量に糸はとれるが、魔物を隷属させるのは難しい為に高級品だ。俺からしたらせめて下着だけでも肌触りのいいものにしないと嫌なので絹の物を使っている。
アイリスにかぼちゃパンツを履かせるのはなんか嫌だったので、わざわざ俺が望む形の物をハンドメイドで作って貰った。
まあ、アイリスと俺が知らなかっただけで、結構日本人が通常履くパンティーみたいな形のものは、主に富裕層に人気らしいのだが。
閑話休題。
遠慮を無視して俺の私物のパンティーを履かせたので、そろそろ自己紹介をして貰おうかな。
「私の名前はラスグラスと申します。よろしくお願い致します」
「長いからララスさんと呼ぶね。これからよろしく」
唯一の大人である女性だ。俺がララスさんと呼ぶことしたら、「奴隷にさん付けなど必要ありません」とオロオロしながら言われてしまった。でも年上の人だしそこはまあ我慢してもらおう。
「わたしはミリと言います。ご主人様のためなら何でもしますっ。よろしくおねがいします」
そう言って勢いよく頭を下げたのは活発そうな幼女だ。っていうかララスさん以外皆幼女だった。何ここ。天国?
「あ、あのっ。私の名前はイルミアと申します。ご主人様の為にならこの身のすべてを捧げますっ」
おとなしそうな幼女がそう言うとペコリッと頭を下げる。
「私の名前はマリアです。ご主人様にすべてを捧げます」
間延びした声で自己紹介をする。言うまでもなく幼女だ。
「私の名前はミリアです。ご主人様に誠心誠意尽くさせていただきますので、どうぞよろしく」
そうはっきりと言ったのは、優秀な秘書のような雰囲気を醸し出す幼女だ。
「わ、私の名はアミーリアと言います。ど、どうかよろしくおねがいします」
「長いからアミね」
そうおどおどしながら言ったのは、人見知りっぽい挙動の幼女だ。
「私の名前はクラウと申します。私はきっとご主人様の奴隷になるために生まれてきたのです。これまでの苦しみもきっとご主人様とより劇的な出会い方をするためのスパイスであったのだと確信しております。家族に奴隷として売られたことをずっと恨んでおりましたが、今となっては感謝しています。なぜならご主人様に会えたからっ。私はご主人様に永遠の忠誠を誓います」
「お、おう」
なんていうか、重い。超重い。どう見ても十歳くらいなのにここまで歪んじゃうのか。
「私の名前はラウラです。これからよろしくおねがいします」
ニコッと完璧な笑顔を浮かべる幼女。可愛い可愛い。なんかあざとい感じがするわ。
ここまで人間種。ここから獣人種。
「……私はイリア。よろしく」
そう口数少なく答えたのは、魔力がとても多い猫族の子だ。無表情幼女だ。奴隷は皆家の管理をしてもらおうと思っていたが、この子にはダンジョンに一緒に入らないか誘って見よう。もちろん入ってくれる様なら魔法を教えて。
「私の名前はっサリーと申しますっ。よろしくおねがいしますっ」
と弾むように答えたのが犬族の幼女だ。
「あたしの名前はカリナだ。よろしく」
男らしく答えたのは虎族の幼女だ。
さてこれで奴隷全員の自己紹介が終わった。
エリルとアイリスにも自己紹介をしてもらい、皆で屋敷を探検することにした。今はとにかく皆と仲良くなろう。緩みかかる頬を必死で抑えつけながら、そう思った。
たくさんの人が一気に出てきたので次話は人物紹介でもやろうと思います。