天使のいく夜
詩か、掌編、自分でもどちらに位置付けていいのかはわからない作品。
よくある話かも知れないけれど、たまにはこうした物も書いてみたかった。
もう、行ってしまうんだね。月明かりが街をぼんやりと照らす夜に、君は行ってしまうんだね。
僕は君にしがみついていたいよ。君のそのすぐにでも壊れてしまいそうな華奢な体に、折れてしまいそうなほそい脚に、柔らかな白い唇に。
何故なら君は天使だから。
ポケットに入れた手を、僕は君に触れるために使おう。君が拒まないのなら、君の唇に愛を捧げよう。君が受け入れてくれるなら、僕は君を愛したい。
愛することを受け入れてくれますか?
君は最期まで笑顔だった。涙一つも見せないで。なんだか僕は寂しくなったよ。君が笑顔のままだから。
君は悲しくはないのかい?
僕にも笑えと言うのかい?
艶やかな指で僕の口角を力なくもあげようとして、僕にも笑えと言うのかい。
ならば、笑おう。苦手な笑顔を見せよう。君の最期に焼き付けられるように、僕は笑顔を君に見せよう。
そして天使は飛んで行った。
狭い、狭い病室から、君が望んだ大きな夜空に。
けれど僕は未だに君の寝顔見ている。
解釈は自由です。