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異世界唯一の男性魔術師《ウォーロック》  作者: 時好りを
一章 出会いは水と共に
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ギルドマスター・ドーザ

(このおっさん……強い……ガインなんかとは比べ物にならない)

 眼帯の男の実力に戦慄しながらも動きに対処できるように相手の一挙手一投足に気を配る。

「確かにこれじゃあガインがやられるわけだ……Dランクの冒険者程度じゃ相手にならないだろ。なぁ?」

 笑いながら眼帯の男がこちらに同意を求めてくる。

「知らないですよ。他のランクの冒険者に会った事がないですからね……あなたがギルドマスターなんですか?」

「おう。俺がギルドマスターのドーザだ。よろしくなタスク・シンドー」

「……それで俺に何の用なんですか?」

 敵意が見えない相手の意図が分からず警戒しながら尋ねる。

「ん? 用っていってももう終わったみたいなもんだしな」

「どういう事です?」

「いやなに。お前が本当にガインを倒した奴なのか確かめたかったのがほとんどだからな!」

「はああ? そのためだけに殴りかかってきたのか?」

「ああ。そうだが?」

 何を当たり前のことを言ってるんだという顔でそう告げるドーザ。

「訊けばいいだろうが! 訊けば! 別に隠さなきゃいけないわけじゃないから訊かれれば話したよ……」

 思わず乱暴な言葉遣いになる。

「そうなのか? でもこのほうが一瞬で判断できるんだからいいじゃねぇか」

「良くねぇよ……間違ってたらどうするつもりだよ……」

「そこはほれ。それを間違うような隻眼のドーザじゃない。だろ?」

「だろ? って言われてもわかんねーよ……初対面じゃねーか……あんたの人間性なんてしらねーよ……」

 俺はそう言って頭を抱える。

 ガチャ

「もうだから言ったじゃないですか。こういう事はやめましょうって」

 ドアを開けて受付嬢さんが入ってくる。

「いやそうは言うがなマリーよ。強い奴と聞いたら確かめたくなるのが男のサガ――」「うるさいです」

 ドーガを一言で黙らせるマリーと呼ばれた受付嬢さん。

「ごめんなさいタスクさん。うちのマスターがご迷惑をおかけして」

「まぁ腹は少し痛みますけどあなたが謝る必要はないと思いますよ。受付嬢さん」

「ふふっ。マリーでいいですよ」

「分かりました。マリーさん」

「よし! 自己紹介も終わったところで座って話をすることにしよう!」

 ドーザが偉そうにそう告げたのを俺とマリーさんはジト目で見つめた。


 ドーザとテーブルを挟んで対面に座る、テーブルの上にはマリーさん入れてくれたハーブティーとお菓子が置いてある。

「さっそく訊くが。タスクお前何もんだ?」

 ドーザが真剣な顔で訊いてくる。

「ガインを倒しちまうような奴が普通の冒険者なわけがねぇ。いったいこんな何も無いような村で何をやっている?」

「それを言うならあなただってこんな平和な村にいるような実力じゃないと思いますけど?」

「……お前何も知らないんだな」

「え?」

 ドーザが驚いた顔で見つめてくる。

「お前あの森には入ったんだよな?」

「ええ。ヘルハウンドを狩りに……」

「あの広大に広がる森の向こう側がどうなってるか知ってるか?」

「……いいえ」

 俺は横に首を振りながら答える。

「あの向こう側は海だ」

「海? そうなんですか?」

「ああ。そして帝国の人間が気付かれずに上陸するには絶好の場所だ」

「帝国?」

「やっぱりそれも知らないか……神聖レムナス帝国。この国の有史以来ずっと戦争中の国だ」

「戦争……」

 その言葉に俺は眉を顰める。

「おい! マリー」「はい」

 呼ばれたマリーさんはテーブルの上に何かの紙を置く。

「これは?」

「世界地図だ」

 見ると地図の真ん中にある大陸を東と西と南から囲むように三つの大陸があった。

「この真ん中の大陸これが神聖レムナス帝国。失われた神を崇める邪教国だ」

「失われた神だって?」

「ああ。世界で唯一精霊信仰を持っていない国だ。そして我がレムナス王国はここだ」

 ドーザは囲んでいる3大陸なかで南にある一番小さな大陸を指差す。

「そしてアスト村はこの大陸の北端にある村だ」

「北端……気付かれずに上陸……もしかして」

 俺は当たって欲しくない想像を思いつき呟く。

「分かったか? この村はもし帝国が南進してきた時に戦術上の橋頭堡になる」

「この村が最前線になるのか……」

「最前線っていっても主戦場は北のあの森になるだろうけどな」

「…………」

 俺は何も言えずに黙る。

「ほんとは森のほうに監視施設でも作りたいんだけどな、さすがにエルフの支配領域にそんなもの作るわけにもいかんしな」

「エルフ?」

「何だ? 見たこと無いのか? 森の民だよ。北の森は彼らの縄張りだ。争いは好まない連中だが縄張り意識は強い。だからお互い不干渉で丸く収まってるわけだ」

「そんな人達が住む森も戦場になるかもしれないのか……」

「そう考え込むな。別に今すぐにそうなるってわけじゃない。だがもしもそうなった時のために俺みたいなのがこの村にいるんだよ」

「ありがとうございます。理解できました」

 俺は真剣に頷きながら話す。

「それは良かった。じゃあ最初の質問に戻るぞ? タスクお前はいったいなにもんだ? 何の目的でここにいる?」

「…………」

 俺は話していいものかを迷い黙る。

「お前がかなりの猛者だという事は手を合わせて分かった。あれなら水精の森に入ってヘルハウンドを狩ってくるぐらいわけないだろ――」「ちょっと待った!!」

 俺は聞き捨てなら無い言葉聞いて大声を出す。

「なんだ? 急に大きな声出して?」

「今なんて言いました?」

「急に大きな声を出して?」「その前!」

「ヘルハウンドを狩ってくるぐらい」「もっと前!」

「あん? あれなら水精の森に――」「それ!」

「水精の森がどうかしたのか?」

「あの森そんな名前なんですか?」

 俺は強い眼差しでドーザを見る。

「ん? あぁそうだぞ。だからあの森のエルフは水精が住むといわれる湖の周辺に集落を作ってたはずだ」

(まさかあの森に精霊がいるなんてな……それに神聖レムナス帝国……失われた神……)

 俺は思わぬところで居場所を知ることが出来た精霊に会うために、そして力を貸してもらうために再び森に向かう決意を固めた。

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