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異世界唯一の男性魔術師《ウォーロック》  作者: 時好りを
一章 出会いは水と共に
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ギルドからの呼び出し

 翌日の朝、俺は宿で朝食を食べていた。

「どうだいうちの朝食は?」

「すごくおいしいです」

 パンを食べながら笑顔でハルコさんに答える。

(パンは向こうの世界とほとんど変わらないな。手作りな分こっちのほうがおいしいまであるな……)

 朝食中のハルコさんとの会話でいろいろなことが分かった、俺がいるこの村の名前はアスト村で国の名前がレムナス王国らしい。

(もっとも国の名前を知らないのはさすがにかなり訝しがられたけどね……)

「ごちそうさまでした」

「はいどういたしまして。それでタスクは今日どうするんだい?」

 食事を食べ終わるとハルコさんが食器を片付けながら訊ねてくる。

「とりあえず服を買いに行こうかと思ってるんですが。もう店は開いてますか?」

「ああ。冒険者用の店なら開いてると思うよ。早朝から狩りに行く奴も多いからね」

「そうですか。じゃあ早速行ってきます」

「ああ。いってらっしゃい」

 俺は席を立つと宿を後にした。


 カランカラン

「いらっしゃ……うちの店にあまり女物は置いてないぞ?」

 店に入ったときのドアベルに反応した店主が俺の姿を見てそんな事を言う。

「……いえ。男物でだいじょうぶですので……」

「そうかい。いらっしゃい。ゆっくり見ていきな」

 そう言って店主は新聞らしきものを読み始める。

(さてと。どんなものがあるかなっと……)

 店内を見て廻る。

(お? これいいな。動きやすそうだし)

 俺はポケットのたくさんついた所謂カーゴパンツのようなものを手に取る。

(あとはベルトと……ん?)

「すいません。このベルトについてるこれなんですか?」

 ベルトについているものを指差しながら店主に尋ねる。

「あ? なんだお前そんなことも知らないのか? ナイフホルダーだよ。そこにナイフを仕舞うんだよ」

「なるほど。ありがとうございます」

(これも買いだな。ということはナイフもいるな)

 そうしてナイフや何かの革製のジャケットなど色々と必要と思われるものを手に取っていった。


「あの~試着してもいいですか?」

「……」

 店主は無言で新聞を読みながら親指で試着室の場所を指し示す。

「どうも」

 俺は試着室に入ると手に取った服を着ていく。

(あ。この制服ローブどうするかな……上に羽織ればコートっぽくなるか……それでいこう)

 最後に制服ローブを羽織って試着室から出る。

「あのどうですか? 変じゃないですか?」

「……」

 店主は無言でこちらをチラリと見ると指でサムズアップの形をつくる。

「それじゃあこれ全部でいくらですか?」

「なんだ? 全部買うのかい?」

 店主が少し驚いたようにこっちを見る。

「ええ。そのつもりです」

「金はあるのか? 金貨3枚ってところだぞ?」

 俺は制服ローブのポケットから金貨を3枚出す。

「お前さん見かけによらず金持ってるんだな」

「それじゃ。ありがとうございました」

「そりゃ俺のセリフだと思うがな……待ちな」

 店主が帰ろうとしていた俺を呼び止める。

「サービスだ。ナイフは2本ぐらいあったほうが便利だぞ?」

 そう言って鞘に入った俺が買ったものより大きいナイフを投げてよこす。

「いいんですか?」

「ああ。たくさん買ってくれたからな」

「ありがとうございます。じゃこれで」

 カランカラン

 俺は服を買えた喜びにウキウキしながら宿に戻った。


「戻りました~」

「お? タスク見違えたね~いい男になったじゃないか」「お兄ちゃんかっこいい~」

 玄関を開けてすぐにハルコさんとヒナちゃんに出迎えられる。

「ありがとうございます……玄関で誰か待ってたんですか?」

「ああタスク。あんたをね」

「俺ですか?」

「さっき冒険者ギルドの連中が来てね。タスクにギルドに来るようにって」

 心配そうな顔をしながらハルコさんが話す。

「……そうですか。わかりました。ちょっと行ってきますよ。あ~あとこれ先3日分の宿泊代です」

 俺はそう言ってハルコさんに金貨を手渡す。

「それはいいけど……大丈夫なのかい?」

「ええ。大丈夫ですよ」

 安心させるように笑いながら言う。

「お兄ちゃんいってらっしゃ~い」

「行ってきます。ヒナちゃん」

 ヒナちゃんに手を振って宿を出た。


 ギルドに入ると受付嬢さんがこちらに向かって歩いてくる。

「おはようございます。タスクさん。見違えましたね」

「おはようございます。それより呼ばれたから来たんですけど」

 あいさつもそこそこに本題を切り出す。

「はい。奥の部屋でギルドマスターがお待ちです」

(……ギルドマスター?)

「タスクさんをお連れしました」

「おう! 入ってくれ」

「どうぞ」

 奥の部屋にたどり着くと受付嬢さんに先に入るように促される。

「失礼します」

 ガチャ

 俺がドアを開けてはいると部屋の中には誰もいなかった。

「受付嬢さん、誰もいませ――」バタン

 振り返るとドアが閉まりドアの影に隠れていた眼帯の男が目の前に立っていた。

「なっ!」

 ゴウッ!

 そんな音を立てながら眼帯の男は拳を振るってくる。

(速い! 避けきれない……)

 ドンッ!

「がはっ……この……野郎!」

 ドコッ!

 腹に拳を喰らいながらも相手の側頭部を右脚で蹴り飛ばす。

(こいつ……強い)

 そのまま俺は本棚に相手は壁にそれぞれ叩きつけられる。

「ごほっ……ごほっ……なに……しやがる」

 腹部の痛みに咳き込みながら相手を睨む。

「お~やるねぇ! 俺に一撃入れた奴なんて何年ぶりだろうねぇ」

 眼帯の男は余裕そうに首をボキボキと鳴らしながら立っていた。

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