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異世界唯一の男性魔術師《ウォーロック》  作者: 時好りを
一章 出会いは水と共に
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許せないこと

「なんとか言ったらどうなんだよ? オカマ野郎!」

 ガインが俺への敵意むき出しで吼える。

「俺にいったい何の用ですか?」

「あ? 決まってるだろ? 礼儀のなってない新人冒険者を直接指導してやろうと思ってな。ヘッヘッヘッ」

 ガインがむかつく笑みを浮かべながらこちらににじり寄ってくる。

(さて……どう対処しようか……)「お兄ちゃんをいじめちゃダメ~!」

(え……ヒナちゃんがなんでここに……)

 怒った表情でヒナちゃんがガイン達に向かっていく。

「待って! ヒナちゃ――」「今ガインさんが話してんだろうが! ガキは引っ込んでろ!」

 ドッ

 取り巻きの一人がまるで獣でも追い払うかのようにヒナちゃんを蹴り飛ばす。

「……ふざけるな」

 その光景に俺の鼓動が今まで感じたことが無いぐらいに激しくなる。

「こんなガキに守ってもらうなんてやっぱりオカマ野郎だな。それにそのガキも俺達に逆らっちゃいけないことが理解できただろ。ハッハッハッ」

 ガインのその言葉に俺の感情が沸点を超える。

「……術式構成・貫通」

 俺は感情のままに足を踏み出した。

「ガキが邪魔するからこういう――は?」

 いきなり目の前に現れた俺の姿に口をポカンと開けるヒナちゃんを蹴った男。

 ドンッ!

「ガハッ……ガ……カ……ヒュ」

 俺の拳を腹部に喰らい、開けた口から血を吹き出した後、倒れて痙攣する取り巻きの男。

「てめぇ……何を――」「黙れ!」

 俺が眼前からいきなり移動したことが理解できないのかうろたえている様子のガイン。

「ヒナちゃん大丈夫?」

「ぐすっ……うん……だいじょうぶ」

 倒れているヒナちゃんをしゃがんで起こしながら怪我が無いか確認する。

「そうか良かった……ちょっと待っててねヒナちゃん」

 そう言って立ち上がり振り返る。

「この人達に二度とこんなことさせないようにするから」

 俺はガインを睨みながら拳をボキボキ鳴らす。

「てめぇ! 舐めた口聞いてんじゃねぇぞ!」

「うるさい……黙れ」

「てめぇ! 殺してやる! おいよこせ!」

 顔を真っ赤にして怒り狂いながら取り巻きから両手持ちの大きな斧を受け取るガイン。

「このDランク冒険者。怪力のガインを敵に回したこと後悔させてやる!」

 そう言って斧を大きく振りかぶるガイン。

 ドッ!

「ガハッ」

 その隙だらけの腹に拳を叩き込むとガランと音を立てて斧を取り落とすガイン。

「お前がどこの誰だろうが……」

 俺はそう言いながら右拳を握り締めなおす。

「子供を傷つけていい理由にはならねぇだろうがあああああああああああ!」

 ドンッ!

「げはぅあああああああああ」

 うめき声と血を口から漏らしながら殴り飛ばされるガイン。

「お前らまだやるのか?」

 その光景を見ていた取り巻きたちは恐怖で青ざめながら俺の言葉に首を横に振る。

「二度とこんな真似するなよ?」

 取り巻きたちはうんうんと頷く。

「あーそれと……そいつら早く治療しないと死ぬぞ?」

 その言葉に取り巻きたちは倒れている2人を担いで去っていった、おそらく治療できる施設に向かったのだろう。

「お兄ちゃんすごいんだね!」

「だから言ったでしょ。お兄ちゃんはこんな格好だけど結構すごいんだよ?」

 目をキラキラさせているヒナちゃんに格好をつけてそう言った。


 ギルドの扉を開けると中には冒険者の姿はなく受付嬢さん一人しかいなかった。

「戻りましたー」「こんばんは~」

 俺とヒナちゃんがあいさつをする。

「あら? 戻ったんですね。それにヒナちゃん? どうしたの?」

「それがそこでちょっと膝を擦り剥いたみたいなんです。それで治療できるものがないかなと思って」

「ちょっとみせてください」

 ヒナちゃんの膝を観察する受付嬢さん。

「これぐらいなら私が治してあげますよ」

「え? どうやって……」

「光よ……癒せ」

 受付嬢さんがそう唱えると血が滲んでいたヒナちゃんの膝が怪我など無かったかのように綺麗になる。

「魔法使いだったんですね……」

「ええ。といってもこういう簡単な治療しか出来ないんですけどね」

「ありがとう。お姉ちゃん」

「次からは怪我しない気をつけるんだよ?」

「うん。わかった」

 ヒナちゃんは真剣な顔で頷く。

「そういえばさっきまで外が騒がしかったみたいなんですけど。何かあったんですか?」

 受付で書類を見ながら尋ねてくる受付嬢さん。

「なんか冒険者同士の揉め事みたいでしたよ(嘘は言っていない……)」

「あーそうなんですか。いつもの事ですけど困ったものです」

 ヒナちゃんは言いたそうにこちらを見てきたが俺が人差し指を自分の口に当てて内緒のポーズをとるとヒナちゃんも同じポーズをして頷く。

「それでハウンドを狩ってきたんですか?」

「はい。これです」

 ポケットから犬歯を受付の上に出す。

「えーと犬歯20本ですから銀貨1ま……え? え?」

 受付嬢さんは犬歯の違和感に目を見開く。

「うそ。これって……ヘルハウンドの犬歯」

「はい。狩ってきました」

「確かに本物ですね……これを全部あなたが……」

「はい……あのー達成料をもらいたいんですが……」

「え……あ……はい……金貨5枚から登録料を天引きして金貨4枚と銀貨9枚と銅貨5枚です」

「はい。ありがとうござました。帰ろうかヒナちゃん」

 お金をポケットに入れるとそう言ってヒナちゃんと手をつなぐ。

「うん。お姉ちゃんさよなら~」

「お金が必要になったらまた来ます」

 そう言ってギルドを後にした。

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