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異世界唯一の男性魔術師《ウォーロック》  作者: 時好りを
一章 出会いは水と共に
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揉め事の種

「オラ。席が空いたぞ。お前らも座れ」

 ガラの悪い大男がギルド中央付近に座ってた人達を退かして呼びかけるとゾロゾロと同じくガラの悪い連中がギルドの中に入ってくる。

(なんだ……あの連中も冒険者なのか。びっくりした……この本を急いで読まなくちゃ)

 俺はうるさいガラの悪い連中を意識の外に追いやって冒険者初心者入門の本を読み始めた。

(えーとなになに……冒険者にはランクがあります。ふむふむ。ランクは最低ランクのFから最高ランクのSまであります……なんで? Aランクの次がSランクなんだ? まぁいいか。それからっと)

 あまり深く考えないようにしながら次のページをめくる。

(冒険者ランクが上がると様々な特典があります。へー宿が安くなったりするのか。えーと冒険者ランクを上げるには多くの依頼を達成する必要があります。冒険者ギルドには様々な依頼があり難度が高いものほど高額な報酬になりますが高い難度の依頼になると高ランクの冒険者しか依頼を受けることができません。依頼の種類は通常依頼。特別依頼。指名依頼。常設依頼があり。そのうち特別依頼と指名依頼は高ランクの冒険者でなければ受けることが難しいです)

 そこまで読んでパタンと本を閉じる。

(とりあえずは理解出来たような気がする。ありがとう! 冒険者初心者入門。さぁとりあえず依頼を見てみるか)

 本を持ったまま立ち上がり依頼の紙が貼ってある掲示板に近づく。

(どんな依頼があるかなっと……あれ? これは……)

 気になる依頼があったので受付に聞きに行ってみる。

「あのーすいません」

「はい。本はお役に立ちましたか?」

「はい。ありがとうございました。助かりました(なんだろうこの人の慈愛に満ちた視線は……)」

 笑顔の受付嬢の視線に驚きながらも本を返してそのまま質問をしてみる。

「あのーこのハウンドって魔物なんですけど」

「はい。常設依頼対象の魔物ですね」

「これってあのでかい森の中にいる黒い奴でいいんですか?」

 そう言うとみるみる受付の顔が青ざめていく。

(あれ……何かまずいこと言ったか……)

「あの森に入ったんですか?」

「いや……入ったっていうか……居たっていうか……」

「だめですよ! あなたみたいな初心者があの森に足を踏み入れては! あの森にいる黒い狼はヘルハウンドといってEクラスの冒険者数人で倒す魔物なんですよ!」

「あの黒い奴そんなにすごい魔物なんですか?(少なくとも4匹ぐらいは倒した気がするけど……)」

「あの森に初心者が入って生きてるだけでも幸運なんですから。無茶なことはしないでくださいね!」

「はい……わかりました……」

 すごい剣幕で注意する受付嬢さんが怖かったので了承する。

「じゃあハウンドの常設依頼はいくらぐらい貰えるんですか?」

「一匹につき銅貨2枚ですね」

(銅貨ってギルド登録料とかから察するにおそらく100円ぐらいだろ、ハウンド一匹200円か……)

「ちなみに……ヘルハウンドはいくらぐらいになるんでしょうか? ちなみにですよ! ちなみに!」

 顔色を窺いながら恐る恐る尋ねる。

「……はぁ一応教えますけどね。ヘルハウンドはっと……」

 そう言って手元にある書類をチェックする受付嬢さん。

「今ある依頼の報酬だとヘルハウンドの犬歯が金貨1枚ですね」

「……金貨って銅貨何枚ですか?」

「100枚ですね」

(一万円……だと? 俺が森で討ち捨ててきたあれが一万円……)「ガインさんあれを見てくださいよ」

 後悔している俺の後方でガラの悪い連中の一人が声を上げた。

「あ? なんだよ?」

「あそこにオカマみたいな格好してる奴がいますよ」

「あーん? ほんとだ! オカマがいるぞ! ハッハッハッ!」

 ガラの悪い連中が俺のほうを見ながら大笑いする。

(絡んでくるなよ……別に良いじゃねえかどんな格好でも。仮にオカマだとしてお前らに何か迷惑かけたかよ……)

「それじゃあ受付嬢さん。ハウンドを狩りに行ってきます」

「気をつけてね。色々と」

 俺の後ろにチラリと視線を送る受付嬢さん。

「はい。ありがとうございます。分かってますよ。色々と」

 受付嬢さんに礼を言うとそのままギルドの中の端を通り扉へと向かう。

「おい! オカマ野郎待ちやがれ!」

(まぁこうなるよな……)

「え? 俺のことですか?」

 精一杯すっとぼけて返事をしてみる。

「お前以外どこにオカマがいるって言うんだよ」「「ギャハハハハハハ」」

 大男の言葉に俺を見ながら周りの連中が大笑いする。

(ちっとも笑えないよ……ガインっていったかこのリーダーっぽい奴。めんどくさいなーこいつ)

「あの……俺急いでるんで……それじゃあ」

 俺はそう言って足早に扉から出ようとする。

「まぁ待てよ。お前に言いたいことがあるんだよ」

 立ち上がってガインがこちらに向かってくるが、一応気になるので話を聞いてみることにする。

「なんですか?」

「お前みたいな奴がよー冒険者ギルドに出入りするとよー俺達までオカマと思われちまうだろうが!」

 そう言って俺の顔面目掛けて太い腕で殴ってくるガイン。

(クソ! 手を出してくるなよ……めんどくさい)

 俺は殴ってきたガインの腕を下から右腕で払い跳ね上げると、その隙にそそくさと扉から脱出する。

「あの! ほんとに急いでるんで! それじゃ!」

 俺は走って平原のほうに向かった。


 その様子を受付から見ていた彼女は驚いていた。

(何今の? あの怪力のガインの豪腕を下から跳ね上げた? あり得ない……ガインはあんな性格でもDランクの冒険者。まぐれで初心者が退けられる程甘くはない。かわいい初心者だと思ってたのに……タスク・シンドー……いったい何者?)


 見事に絡んだ相手を捕り逃したガインもまた驚きそしてプライドが傷つき憤っていた。

(俺の腕を跳ね上げただと……ふざけやがって! あのオカマ!)

「ガインさんが逃がしてやるなんて珍しいこともある……」「うるせぇ!」

 何が起こったか気付いてない取り巻きの発言に怒鳴るガイン。

「あのオカマ野郎……ぶっ殺してやる!」

 ガインの瞳は怒りで燃えていた。

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