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異世界唯一の男性魔術師《ウォーロック》  作者: 時好りを
プロローグ
2/74

プロローグ2

「そうそうこんな感じだったよな」

 回想終えた俺は森の景色を見回す。

「確か何かしてたはずなんだが……何だったっけか?」

 俺は再び記憶を辿り回想を始めた。


「ぐすっ……ぐすっ……祖父ちゃん……祖母ちゃん……ぐすっ」

『大丈夫かい?』

「ぐすっ……うるせぇなーそっとしといてくれよ! というかここどこだよ……ぐすっ」

 鼻を啜りながら俺は真っ暗な空間に話しかける。

『ここは君の世界と僕たちの世界の狭間の世界だよ。何も無い世界だね』

「ぐすっ……あーそれですぐにお前の世界とやらに行くのか?」

 ひとしきり泣いた後当面の目的を確認してみる。

『いや。ちょうどいい機会だからここで向こうの世界とやってもらいたい事を説明しておこうと思ってね』

「あーそうかい。それで何を教えてくれるんだ?」

『とりあえず君のことを教えてもらえるかな?』

「俺が教えるのかよ! えーと自己紹介でいいのか? 新道佑。17歳。今年から高校三年生だ……った……ぐすっ」

『あーごめんごめん。それじゃあタスク。君がこれから向かう世界【レムナス】について説明するよ』

「ぐすっ……お~頼む」

 涙を手で拭いこの得体の知れない恩人の話に耳を傾ける。

『まず当然だけど魔法が存在する世界だ』

「それはそうだろう。つーことはみんなさっきの俺みたいなことができるのか?」

『みんなじゃないけど魔法が使える人は多いよ。でもタスクみたいな真似は出来ないよ。君の魔法は特殊だから』

「特殊?」

『タスクの魔法は精霊魔法といって精霊の加護を得た人間しか使えない魔法なんだ』

「精霊ねー」

『【レムナス】には僕を含めて精霊が13体いる。君にはその13体全てに加護をもらって欲しい』

「あれ? 13体全てって。お前の加護はもう貰ってるんじゃないのか?」

『それなんだけどね。次元を超えた加護の付与だったためか不完全な加護になっちゃったんだよ』

「どういうことだ?」

『試しに頭の中で魔法をイメージしてごらんよ』

(えっとこうか……あ)

【雷】【貫通】

「雷と貫通ってイメージが見えるな」

『それが今君が持ってる術式構成だよ。1体の精霊につき3つある』

「3つって2つしか見えないけど……あ! だからか」

『そう。本来ならそこに【加速】の構成があるはずなんだよ』

「了解。使いたかったら向こうでお前に会う必要があるわけね。しかし何のためなんだ? 13体に加護もらうってのは。俺に救って欲しいみたいなこと言ってたけど」

『タスクには災厄の復活の阻止。欲を言えば災厄を打倒してもらいたいんだ』

「その災厄ってなんだよ?」

『僕たち精霊が過去に封印した邪神……かつて僕らの世界の神だった存在さ。今またそれの封印を解こうとしてる人間が現れたんだよ。そして僕たち精霊は普通の人間には干渉できない』

「だから干渉できる人間の俺を使うわけか……一度は封印したんだろ? もう一回封印すればよくないか?」

『それはもう不可能なんだ。過去に封印したときは何万もの精霊で封印を施したんだからね』

「それが何で今は13体なんだ?」

『多くの精霊達は邪神を恐れて別次元に避難していった。避難せずに最終的に残ったのが僕ら13体わけさ』

「なるほどね……あ! そうだ。言葉とか大丈夫なのか? 異世界の言葉とか喋れないけど。でもお前と喋ってるから大丈夫なのか」

『いや僕のこれは喋ってるというか感じてるに近いんだけどね。でも心配しなくていいよ。タスクに加護を施したときに君の存在は僕たちの世界の存在になったからね。言語や感情のほうも修正されているはずだよ』

「え? 何? 俺の体そんなことになってるの?」

 自分の体を見回すがおかしなところはない。

『そうだよ。身体能力も加護のおかげで若干向上してるはずさ。だからこそ君は向こう世界に居られなくなってしまったわけだけど』

「ま、いまさら悔やんでもしょうがないか……それより向こうについたらどうしたらいいんだ?」

『とりあえず魔法の練習はしたほうがいいかもね。自分に何が出来るかを知っておくのは大切だよ。あとはーそうだね。向こうでタスクがどう生きるかは君に任せるよ。自由にやってくれ。それじゃあ僕たちの世界に――』「ちょっと待った!」

『なんだい? まだ何か聞きたい事が? あー邪神のことなら心配しなくていいよ。13体全ての加護が集まれば君は邪神に匹敵――』「いやそうじゃなくて!」

『・・・じゃあなんだい?』

「お前の名前。俺は自己紹介したけどお前のは聞いてないぞ?」

『なんだいそんなことか。僕たち精霊に名前なんて無いんだよ。普通の人には知覚できないから名前を持つことに意味が無い。

 それでも伝説上じゃ雷精なんて呼ばれてるけど、なんなら君が僕たちに名づけてくれよ。

 なにせ僕達にとっては初めて経験だからね、他の精霊達も喜ぶはずさ』

「う~ん、全部で十三体いるんだったか? ……じゃあお前の名前はトリスタンで」

 13という数字から頭に浮かんだ名前を口にする。

『……いいけど。どこから出て来たんだいその名前?』

「13体居るって事からなんとなくだよ。昔読んだ本の登場人物だ」

『ふーん分かった。今日から僕はトリスタンだね。うんそれじゃあタスク。向こうの世界に君を送るよ。なるべく早く僕に会いに来てくれるとうれしいな』

「ああ。わかった」

 そう言った直後、体が浮遊感に包まれると気がついたら真夜中で見知らぬ森の中だった。

「まじかよ? 一瞬だな。でもこう暗いと動きようがないし……とりあえず言われた通り魔法を使ってみるか」

 そう思ってふと自分の体を見ると元々着ていた学校の制服がローブを模したような制服に変わっていた。

「これも世界の修正力ってやつなのかな……」

 とりあえず納得して術式の構成を考える。

「術式構成・雷」

 バチバチバチと右手から激しく放電が始まる。

「これって……スタンガンみたいに使えるのかな? よーし面白くなってきた」

 そうして俺は再び魔法の構成を考え始めた。


「思い出した。魔法の練習しててそのまま寝てしまったのか……」

 回想を終えて俺は納得したように頷く。

「ガルルルルルル」

「ん?」

 声がした方を見ると黒い狼のようなモノが一匹こちらに向かって唸っていた。

「これが魔物ってやつなのか?」

「ガルルルルル……ガウッ!」

 黒い狼は短く吼えると俺の首元目掛けて噛み付いてきた。

「あぶね!」

 その噛み付きを見てから回避することに成功する。

(身体能力も向上してるってマジなんだな。よし! それなら)

 噛み付きを回避されて丸見えになっている黒い狼の横っ腹にそっと右拳を当てる。

「術式構成・貫通」

 そのまま拳を短く突き出すと、拳の威力が骨や内臓を破壊しながら貫通したためか、黒い狼は短いうめき声を出した後絶命する

「うわ……やばいなこれ。ワンインチ・パンチみたいだ」

 親指で鼻をこするとそのままストレッチのように伸びをする。

「んーさてと。まずは精霊の情報を探しに人がいるような所にいきますかね」

 俺は森の外を目指して歩き出した。

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