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異世界唯一の男性魔術師《ウォーロック》  作者: 時好りを
一章 出会いは水と共に
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舞台は森へ

 ガタン!

 俺は勢いよく椅子から立ち上がる。

「どうした?」

 ドーザが驚きながら訊いてくる?

「……ギルドマスター」

「ん? おう。なんだよ?」

「何故王国と帝国は戦争を?」

「あ? 簡単な話だ。あいつら精霊を信仰をする国を敵だと。滅ぼすべき相手だと本気で思ってる。さらには俺達の事も同じ人間だとは思っていないだろう。胸糞悪い話だけどな。異教徒は死んでもいいなんて事を心の底から信じているような連中だ。戦わなきゃ全て奪われちまう。命も尊厳もな」

 不機嫌そうに話すドーザ。

「ギルドマスター……アスト村は戦場になりますか?」

 俺は深刻な顔つきで尋ねる。

「……なる。あいつらが攻めて来ないはずがない……近い将来必ずここは戦場になる」

「……そうですか」

 そう返事した俺は部屋から出るためにドアへ向かう。

「おい! どこへ行くつもりだ?」

「やることが出来たんで続きはまた今度でお願いします」

 ガチャ

 ドアに手を掛けたまま喋る。

「やることだって? ……お前いったい何を?」

「とても大事なことですよ」

 バタン

 俺は振り返ってドーザに一言そう告げた後、冒険者ギルドを後にした。


「マリー。あいつをどう思う?」

 タスクが出て行った直後にドーザはマリーに尋ねる。

「私には悪い人には見えません」

「それは俺もだ。しかしあいつ……なんて顔しやがる」

「顔ですか?」

「ああ。最後に振り返って俺に語ったときの表情、完全に何かの覚悟を決めた男の顔だったぜ……年甲斐もなく鳥肌が立っちまったよ……」

「それは年をとったから寒さに弱くなっただけじゃないですか? お父さん?」

「うるせぇ! まだまだ現役だよ俺は」

 そう言いながらドーザはタスクが去っていったドアをじっと見つめていた。


 ギルドを出た俺は宿に戻ってきた。

「タスク。戻ってきたのかい? ギルドは何の用だったんだい?」

「ギルドマスターが俺に会いたかったみたいで。それの呼び出しでした」

 心配そうに訊いてくるハルコさんに答える。

「へぇ~ドーザさんがかい? あの人が気に入るなんてタスク。あんたすごいじゃないかい」

「……俺なんてまだまだですよ」

「まったく。謙遜することないってのに」

 ハルコさんが呆れたように話す。

「ハルコさん。俺はこれから出かけておそらく今日は帰らないと思うので晩御飯は用意しなくて大丈夫です」

「そうなのかい? なにか大きな依頼でも受けたのかい?」

「そうですね……依頼っていうか。約束っていうか。恩返しっていうか色々ですね」

「なんだいそりゃ?」

 ハルコさんがよく分からないといった顔で訊いてくる。

「さぁ。何なんでしょうね……」

「……お兄ちゃん今日いないの~?」

 ヒナちゃんが俺の脚にしがみつき寂しそうに話す。

「うん。出かけなくちゃいけないんだ。だから帰ってきたらお兄ちゃんとまた遊ぼう」

「うん。分かった~約束だよ~」

「ああ。約束だ」

 そう言ってヒナちゃんの頭を撫でる。

「そうだ! お弁当を作ってあげるからもっていきなよ」

「いやそんな大丈夫で――」「……持ってけ」

 遠慮しようとした瞬間に横から旦那さんが弁当を持って現れた。

「いいんですか?」

「……持ってけ」

「ありがとうございます。いってきます」

 弁当を受け取った俺はそのまま宿を出ようとする。

「タスク!」

 振り返るとハルコさんがこちらを見つめていた。

「気をつけるんだよ」

「はい。いってきます!」

 そうして俺は水精の森に向かって走り出した。


「ねぇあんた。私はタスクを止めたほうが良かったのかねぇ」

 タスクが出て行った後ハルコは旦那に話しかける。

「……無駄だ」

「無駄ってどういうことさ?」

「……男がああいう顔している時は止めても無駄だ」

「そうかもしれないけどね。私はただ心配なだけさ……」

「だいじょうぶだよ~お兄ちゃんすごいから~」

 手を広げて語る娘の姿にハルコはそうあって欲しいと願った。


 森にたどり着いた俺は襲ってくるヘルハウンドをなぎ倒しながら森の奥へと向かっていた。

(景色が全く代わり映えしないな。湖なんてほんとにあるのか?)

「ガルルルルル」

「うっとうしい! 貫通!」

「キャイン」

 蹴りを喰らい絶命するヘルハウンド。

(何度も使って慣れたせいか。それとも単一構成だからなのか。とにかく貫通を短縮で起動できるようになったな。だけど未だに二重構成だとこうはいかないし、疲労も半端無いけどもっと練習が必要かもしれないな)

 そんな事を考えながらさらに進んでいると水の音が聞こえ出した。

(微かだが水のせせらぎの音だ……こっちか)

 音のするほうに足を進める。

(この向こうだな……)

 そうして俺は生い茂って視界を塞いでいる草木を掻き分けて先へと進んだ。

「すごい……綺麗だ」

 俺がそこで目にしたもの森の中に荘厳な雰囲気で存在するとても綺麗で透明な湖と。

 ザバァ!

(なんだ? ……湖に誰かいるのか?)

「は?」「え?」

 水浴びをしているエルフの少女の裸だった。

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