06話 この時ヒロインは……
ヒロイン視点です。
もう!授業が終わってから伊織様を待っていたけど教室に来ない。
今日は伊織様のイベントが起らないってことなの?
あの生意気な悪役令嬢もいないし、別のキャラの好感度を上げに行こうかしら?
そういえば休み時間に星野先輩と南雲きゅんと隠れキャラの姿を探したけど見つからなかったわ。
あと、学食での虹坂くん出会いイベントも発生しないし……どういうこと?
まあ、いいわ。
気を取り直して霧島先生の恋愛イベントと星野先輩の出会いイベントよ!
職員室を覗いたら霧島先生いないし、星野先輩の出会いイベントを先に消化しろってことね。
保健室の場所はYシャツを借りに行ったからちゃんと覚えているわよ!
その時はオバサン保険医しかいなくて残念だった。
欲張らずに出会いイベントを待てってことね。
よし、保健室についた♪
中には……キター!!夕焼けをバックにした華奢な美少年!!
スチルも美しかったけど、実物はもう……天使♡
やば、よだれ垂れるところだったわ。
星野先輩の出会いイベントはこうだったはず、
「あの、いきなりすみませぇん。今日転校したばかりで……保健室の場所を確認したくて。お邪魔でしたか?」
「……そう。今は怪我人がいないけど、いつ来るかわからないから」
(雪城さんの報告だとヒロインは一回保健室に来ているよね?)
「そうですかぁ!じゃあ、ここに居ても大丈夫ですね。あたし、日向梓って言いますぅ」
「保健委員の星野です」
(遠回しに出て行けって言ったんだけどな……ああ、通信は今出来ないし。どうしよう)
「失礼します!今日は星野殿が担当と聞いて馳せ参じました!」
「「馳せ参じました!!」」
「はぁ、またかい?」
「ズルいぞ柔道部! 星野軍曹、我らサバイバルゲーム部の負傷兵も連れてきました」
「「星野軍曹!!」」
邪魔よ、この筋肉ダルマども!!
星野先輩に近づけないじゃない、モブのくせに。
「……いい加減にしろ。負傷者は一列に並べ!!3秒以内だ!!!」
「「「すみません、星野殿!!」」」
「「「申し訳ありません、星野軍曹!!」」」
……なんか知らないけど、モブ共が一列に並んだわ。
ふん、最初からそうしてればいいのよ。
これで星野先輩の出会いイベントの続きが出来る♪
あら?流石は星野先輩。
怪我を超能力であっと言う間に治していくわ。
こんなすごい人があたしのハーレムの一員になるなんて最高。
星野先輩は警察官と医者になる道どちらにするのかを悩んでいるのよね。
あたしは断然、医者がいいわ。
だって警察官より給料が良さそうじゃない!
あたしが医者の道を歩めるようにしてア・ゲ・ル。
「ねぇねぇ、星野先輩。あたし、星野先輩のこと知りたいなー」
「はい、次の人」
「星野せんぱぁい!」
「悪いけど、後にしてくれるかな」
星野先輩がつれない!
原作ゲームにはなかったけど、ツンデレ要素でも追加されたのかしら?
「そんな人達なんてどうでもいいじゃない、あたしと――」
――――ガラガラ
「星野くーん! 後輩が指に針刺しちゃって……見てくれる?」
「お、お願いします」
何この女たち?
あたしと星野先輩の邪魔をする気?
ブスなモブ女のくせに、何様よ。
「あら男子、居たの?」
「え? あ、はい……」
モブ男共が縮こまっているわ、気持ち悪い。
「彼らは部活で怪我をしたみたいでね。治療は彼らの後でいいかな?」
「構いません。ほ、星野先輩に治療してもらえるのなら……」
「そう? でも心配なのは判るけど大勢で来たらダメだよ。調子の悪い人がいるかもしれないからね」
「ごめんね、星野くん」
モブなんて気にしてられないわ。
星野先輩のイベントを進めなきゃ。
「星野先輩、こんな人達はいいから――」
――――ガラガラ
「星野っち~、火傷しちった手当してー」
「はぁ、大勢で来るのは止めてよ?」
「ごめんごめん、今日だけカンベンねー。あれ?手芸部じゃん」
「あら、家庭科部さん。どうしたの?大勢引きつれて」
「そっちだって大勢で来てるじゃん」
「私たちより1人多いわ」
「1人しか変わんないじゃん」
「ほ、星野殿。治療感謝いたします!では、拙者たちはこれにて失礼」
「「「失礼しました」」」
「我らもお暇させていただく。星野軍曹、ありがとうございます」
「「「ありがとうございます」」」
「お大事にね」
あっ、男共が消えたわ。
これで風通しが良くなったわね。
まだ邪魔なモブ女たちがいるけど。
って、星野先輩を囲まないでよ!邪魔邪魔邪魔。
「ちょっと、アンタたち邪魔なのよ!どっか行きなさいよ、モブのくせに」
「誰?保健委員? 星野っちは仕事をしているんだから邪魔しないであげてよ」
「モブ?訳の判らないことを……」
「煩い煩い煩い!!!ねぇ星野先輩、こんなモブ女たちなんてどうでもいいよね?一緒に違う場所でお話しましょう?」
そうだ、星野先輩の手を取ってあたしが連れ出せばいいんだわ!
よし星野先輩の腕を掴んで……
――――パシッ
「触らないでくれるかな。関係な人は出て行ってほしいんだけど。君のことだよ、日向さん」
え?なんで。
なんでそんな冷たい顔するの?
星野先輩は、ほんわかしている優しい王子様みたいな人なはずでしょ?
あっ、そうか。
もしかして今日は星野先輩のイベントは発生しない日なのね。
だから星野先輩は星野先輩じゃないんだ。
そうだ、だったらここにいる必要ないじゃない。
霧島先生のところに行かなくちゃ!
保健室を出るときにモブ女たちが何か言っていたような気がしたけど……きっと気のせいよ。
もしくはスーパー美少女のあたしに嫉妬して何か言っていたんだわ。
さてと、気を取り直して職員室ね。
えーと霧島先生は……いた!
化学の問題を教えてもらう恋愛イベントよね。
ふふ、ちゃーんと化学のノートを持ってきたわ、完璧ね。
「霧島先生♡」
「おや、どうしました?日向さん」
きゃー!!なんて大人の色気なのぉ。
エロいわ!霧島先生になら遊ばれたい!!!
「その、今日の科学の授業で判らないところがあってぇ……」
「そうなんですか、それはそれは大変ですねー」
「転校してきたばかりだし……勉強遅れたくなくって。だから霧島先生に教えて欲しいんですけどぉ」
――――ピンポンパンポーン。
――――霧島先生、お電話があります。至急事務局へ来てください。繰り返します……
「日向さん、すみません。急に呼び出しが……岩本先生!うちの生徒の日向なんですが、今日転校してきたばかりで勉強が不安みたいで。すみませんが化学の勉強見てやってもらえますか?私は事務局へ行ってくるので」
「良いですぞー、同じ化学教師ですからな」
「お願いします。よかったですね、日向さん」
「え?あの、霧島先生が……」
「失礼しますね、岩本先生、日向さん」
え?待って霧島先生!!
こんなお爺ちゃん先生なんてどうでもいいのよ!!
あれ?職員室の廊下にいない!?どんだけ足が速いのよ!
今日はきっとイベントが起らない日なんだわ。
きっとそうよ……。
こうなったら、あの人達に連絡しよう。
だってあの人達ならあたしのヒロインとしての実力を認めてくれているもの。