05話 恋愛フラグなんて……
<こちら無属性中二病。柔道部及びサバゲ部への工作終了しったっす。これから手芸部と調理部へ向かうっす。どうぞー>
<こちら悪役令嬢。ほんわか保健委員の非公式ファンクラブへの協力体制構築完了。現在旧校舎3階の科学準備室にて保健室にいる、ほんわか保険委員を視認しました。どうぞー>
<こちらほんわか保健委員。無属性中二病に悪役令嬢、ありがとうございます。どうぞ>
<こちら無属性中二病。お気になさらずっす! どうぞー>
<こちら悪役令嬢。困った時はお互い様ですよー。俺様生徒会長、ヒロインの現在地は? どうぞー>
<こちら俺様生徒会長。現在、特別塔男子トイレにて待機中。悪役令嬢のスマホからほんわか保険委員の非公式FCのサイトにログインした。サイト内の掲示板情報によると今教室を出たところらしい。保健室と職員室の方向へと向かっている模様。ほんわか保険委員とホスト系教師、どちらのイベントを狙っているかは不明。どうぞ>
<こちらホスト系教師。俺様生徒会長はヒロインが相当怖いんですね。 自分は現在、小会議室にて2学年の担任同士で打ち合わせ中なので、狙うならほんわか保険委員かと。どうぞ>
<こちら無属性中二病。手芸部と調理部工作終了っす。ホスト系教師イベントに備えて放送室へ移動するっす。どうぞー>
<こちら俺様生徒会長。非公式FCより保健室前にヒロインがいるとの情報あり。警戒されたし。ほんわか保健委員フォローは任せて下さい どうぞ>
<こちらほんわか保健委員。腹をくくって頑張るよ。どうぞ>
<こちら悪役令嬢。ヒロインの保健室入室を視認。ほんわか保険委員に媚び媚びなんだけど! どうぞー>
<こちら俺様生徒会長。非公式FCより柔道部・サバゲ部の負傷者が保健室へ向かっているとの情報あり。ほんわか保健委員、もう少しの辛抱だ。耐えてくれ。どうぞ>
<こちら悪役令嬢。うわぁ、むっさい男共が保健室に入って来た……。男共がほんわか保健委員の盾になっています!肉厚で汗臭そうで羨ましくない!――とほんわか保険委員が怒りました。初めて見たよ。男共が一列に並び手当を受けています。どうぞー>
<こちらホスト系教師。悪役令嬢、そのまま実況を続けなさい。どうぞ>
<こちら無属性中二病。なんかホスト系教師、楽しんでないっすか? どうぞー>
<こちら俺様生徒会長。無属性中二病、ホスト系教師が鬼畜なのは平常運転だ。どうぞ>
<こちら悪役令嬢。保健室内で動きあり。手芸部女子軍団が乗り込んできました。数は……7人!しかし怪我をしたのは内一人の模様。むさい男共を『ちょっと男子~』的な女子特有のノリで牽制。男共は居心地が悪そうです。ヒロインは男共が列になったことをいいことに、怪我の手当を黙々と行うほんわか保健委員にしつこく迫っています!うわぁ、めっちゃ空気読めていない。どうぞー>
<こちら無属性中二病。ほんわか保健委員、頑張ってくださいっす。どうぞー>
<こちら俺様生徒会長。非公式FCより新しい情報。家庭科部で女子生徒が火傷をする事態が発生。火傷事態は軽いものらしいが、念のために保健室に行くとのことだ。どうぞ>
<こちら悪役令嬢。保健室に件の家庭科部女子軍団到着。手芸部軍団と一色触発な雰囲気。おおっと男共が恐れをなして逃げ出した!その判断は間違っていないよ。手芸部VS家庭科部の戦いが始まる――と思ったらヒロインが介入した! 手芸部と家庭科部の軍団と言い合っている。 ん?ほんわか保健委員が何か言った?気のせいかな……三つ巴の戦いにならず、ヒロインが保健室を出ました。どうぞー>
<こちら俺様生徒会長。ヒロインがほんわか保健委員と離れたから、これ以上の非公式FC情報は望めない。どうぞ>
<こちらホスト系教師。こちらは現在、職員室にいます。時刻は17:30を過ぎました。今日は生徒会もなく、仕事もすべて終わっているので直帰可能です。どうぞ>
<こちらほんわか保健委員。女子生徒の手当も終わって保健委員の仕事も終わったよ。現在、生徒会室へ向かっているけど……あと5分で到着かな。あぁ、疲れたよ……。どうぞ>
<こちら俺様生徒会長。今は生徒会室にいる。鍵は開いてるぞー。お疲れ、ほんわか保健委員。どうぞ>
<こちらホスト系教師。ヒロインを視認しました。自分が目的のようですね……。悪役令嬢と無属性中二病、よろしく頼みます。どうぞ>
<こちら無属性中二病。準備万端!1分後に放送入れるっす。その後、生徒会室へ向かうっす。どうぞー>
私は一旦通信を切る。
よしっ、職員室近くのトイレに【テレポート】っと。
女子トイレの中は静まり返っていた。
すぐさま職員室脇の廊下へ向かい、待機状態になる。
<こちら悪役令嬢。スタンバイOK、完全下校前なので辺りに人影はありません。どうぞー>
――――ピンポンパンポーン。
――――霧島先生、お電話があります。至急事務局へ来てください。繰り返します……
おおっ、ちゃんと放送が聞こえた。南雲くんは勤めを果たしたね!
「鈴花! あの様子だとすぐに来ます」
蓮先輩焦っているな~。
「はいはいっと」
蓮先輩の手を掴み、生徒会室へと【テレポート】と。
生徒会室の中にはすでに伊織と星野先輩がいた。
「よっ、お疲れ。蓮、鈴花」
「おつー、特に星野先輩と蓮先輩」
「お疲れ様だね、雪城さん、霧島先生」
「皆さんよく頑張りました」
――勢いよく生徒会室の扉が開かれた。
「あっ、オレが最後っすね。お待たせしてすみませんっす」
「大丈夫だ、蓮と鈴花も今着た所だし。南雲を鍵閉めてくれるか?」
「はいっす」
「みんなカバン持って、私の近くに来てー」
よっし、半径2メートル以内にみんないるね?
学校近くの路地裏に【テレポート】っと。
着いたのは朝もテレポートした路地裏だ。
「やっぱりテレポートってすごいね」
「そうですか?星野先輩のヒーリング能力もすごいと思いますけど」
話しながら私たちはそれぞれ鞄から靴を取り出し、上履きから履き替えた。
「便利っすよね。オレの能力は使い道があんまりないけど、中二心を刺激するから気に入っているっす。あっ伊織先輩の能力も中二臭くていいっすよねー」
「お前と一緒にするなー!!」
「はいはい、今日はもう帰りますよ。星野くんと南雲くんは自力で帰れますか?」
「問題ないっす」
「僕と南雲君は学園寮なので一緒に帰りますよ」
「了解です。では伊織、鈴花、テレポートで帰りますよ」
「え?通学に能力使っちゃダメって言ってなかったっけ」
「生徒と教師が一緒に帰るのを見られる訳にはいきません。何より、今日は疲れました」
「最後のが本音だろ」
「鈴花、ふたりで帰りましょうか」
「いいよー」
「すみませんでした!!」
「ふふっ、仲がいいね。それじゃ、ヒロインが来たら困るので僕らはもう行きますね。さようなら」
「霧島先生、鈴花先輩、伊織先輩、また明日っす~」
「気を付けて下さい」
「また明日な」
「ばいばーい!」
私たちは星野先輩と南雲くんを見送った。
「よしよし、アメリアの寮へ帰りますか!」
蓮先輩と伊織の手を掴んで私はテレポートした。
こうして、ヒロイン転校初日は無事に終わったのだ。
サバゲ部には黄色いカモが……いないし、美少女もいません。