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04話 先輩と後輩は……

 「私はデリシャスチャーハン弁当がいい!」


 「自分は四川麻婆豆腐弁当がいいです」


 「いいよ……好きなの食べろよ」


 ただいまお昼休み。

 HOS臨時対策支部もとい生徒会室に私と蓮先輩と伊織がいる。

 目的はもちろん伊織に奢ってもらうため。

 本当は学食に行くはずだったけど、ヒロインとの恋愛イベントを警戒して出前をとることにした。

 蓮先輩の教師権限最高♪


 ――コンコン


 ノックが室内に響いた。

 一応、ヒロインが来ていないか確認しなきゃ。


 ドアの前に立ち、囁くように問いかける。


 「フラグなんて……」


 「ぶち壊せ……だよね?」


 ドアの外から聞こえた合言葉に私は満足した。

 鍵を開け、招き入れた。


 「いらっしゃいませー。星野先輩、南雲くん」


 「お招きありがとう、雪城さん。それに霧島先生、雨宮君」


 「ありがとうございまーす、先輩方!」


 「星野くんと南雲くんは何弁当にします?」


 「本当にいいのかな?」


 「いいんですよー。伊織のアホが余計なことした罰なんですから。遠慮しないでください、星野先輩」


 「ヒロインと鈴花をあんなに早く接触させる予定ではなかったんですから……。本当に伊織はアホですね」


 「うぐぅ……」

 

 「うわぁ……これ高級中華の店のヤツじゃないっすか! 値段当てるグルメバライティーで見ましたよ。すっげー伊織先輩!」


 「デザートに桃まんもあるよ」


 「まじっすか!」


 「うう……俺の給料が、給料が」


 「僕は焼売弁当がいいかな」


 「オレはスタミナ弁当がいいっす、鈴花先輩」


 「はいどうぞ、星野先輩、南雲くん。伊織は残ったレディース弁当ね」


 「……はい」


 「では食べましょうか。いただきます」


 「「「いただきます」」」


 「……いただきます」


 んー、チャーハンうまい!

 ごろごろと大きなチャーシューが贅沢だわ~。

 周りを見ると皆満足そうだ……伊織以外。


 高級中華弁当に舌鼓を打ち、デザートの桃まんとお茶を全員に配ってからこの集まりの本題へと入る。


 「では、そろそろ会議を始めましょう。今日は警戒していたヒロインの転校初日です。星野くんと南雲くんは詳しくは知らないでしょうから……鈴花、説明して下さい」


 「了解、蓮先輩。本日0750時に『伊織で測ろうヒロインの欲望値作戦』を行い、結果ヒロインの攻略への執念を確認。0830時に伊織がヒロインに絡まれ、私が巻き込まれました。この時、ヒロインの口から『ゲーム』などの言質をとりました。0945時、ヒロイン保健室にて星野先輩を探していた模様。1045時、1年生教室近くにて南雲くんを探していた模様。1145時、中庭にて夕日くんを探していた模様。以上です」


 「見境がないね……」


 「そうっすね。オレ、気分は狼に狙われる羊ちゃんっす」


 「あと追加だが、この昼休みにヒロインは学食で虹坂(こうさか)との出会いイベントを狙っていると思う。今の虹坂は弁当派らしく、学食には行かないそうだ」


 「えっ伊織、虹坂と仲良くなったの?」


 「まあな。前は不良だったが、今は勉強とバイトで忙しい奨学生だぞ?趣味は貯金だそうだ」


 「なるほど、節約で弁当派ね。夕日くんはリハビリ中で外部の病院で入院中だし、虹坂は……たぶん色々変わって面影ないだろうしヒロインに攻略されたりしないでしょ」


 「虹坂くんは金髪ヤンキーから黒髪眼鏡にイメージチェンジしましたからね。教員たちも泣いて喜んでましたよ」


 夕日くんは中庭の幽霊として学園七不思議になっていた。

 その実態は交通事故の後、超能力が開花した夕日くんが幽体離脱をして学園を彷徨っていたのである。

 ちなみに夕日くんの能力名はアストラル・コントロール。

 霊体を操作する希少能力だ。

 1年の時に私と伊織で夕日くんを捉まえて、幽霊じゃなくて幽体離脱だよ!と説明。

 蓮先輩が夕日くんが入院している病院を調べて、そこまで夕日くんを送って行った。

 そして自分の体に戻った夕日くんは落ちた筋肉を戻すためにリハビリをしている。

 だから夕日くんはもうこの学園にはいない。


 虹坂は、超能力を否定する家庭に生まれて蔑ろにされてきた。

 そして中学でグレて不良に。

 この学園に入っても荒れたままだったが、主に伊織の説得のおかげで不良から抜け出した。

 私たちの勧めもあり、今は奨学生として自立した生活をしている。

 伊織の話じゃ充実しているみたいだし?よかったよかった。

 ちなみに虹坂の能力はアニマルトーキング。

 動物に好かれたり気持ちが判ったりする能力。

 雨の日に子犬を抱く不良……あっ何でもないよ。


 ふたりは一般人なので乙女ゲームのこととかは話していない。

 普通に言ったら伊織が痛い奴になるだけだし。

 悩みはふたりとも解決しているし、ヒロインに入り込む隙間はないだろう。


 だがしかし、転校初日のヒロインの行動を見ただけで判るが、これは……。


 「ねえ、ヒロインってやっぱり逆ハーレム狙いだよね?」


 「ひぃぃぃ、逆ハーっすか」


 「確かに嫌だね」


 「自分は一応教師なので生徒との恋愛は勘弁願いたいですね」


 「……恐い」


 男性陣はみんな嫌みたいだ。

 そりゃそうだよね。

 全員素敵で選べなーい!だから皆選ぶね?でも私だけ愛してねってことだし。

 ふざけんなーって感じ?


 「伊織伊織ー、逆ハーENDだと悪役令嬢の私はどうなるの?」


 「学園で晒し者にされた後に警察に逮捕される。しかも実家の悪事がバレて会社倒産、家族全員刑務所行き」


 「うわぁー悲惨じゃん、私。社会的に抹殺」


 「でもそれはあり得ないと思いますよ?鈴花の実家の会社は日本屈指の大企業。経済に与える影響力は計り知れません。それが簡単に倒産なんてすると思います?働いている従業員は?そもそも大企業の屋台骨は脆くありませんよ」


 「霧島先生の言う通りだよね。……これがゲームならありえることかもしれないけど、現実じゃ無理じゃないかな」


 「よく判んないっすけど、鈴花先輩の会社が潰れたら家の母親が泣くっす。スノーキャッスルの美白化粧水愛用者なんで」


 スノーキャッスルとは、うちの実家の化粧部門の会社名だ。


 「そうなの?ありがとう! 今度、南雲くんのお母様に新作サンプルをプレゼントさせて」


 「いいんすか? 母ちゃん喜ぶっす」


 「はいはい。ビジネストークはそれぐらいにしなさい、鈴花」


 「判ったよ、蓮先輩。 それで、今後の方針はどうするの?」


 「とりあえず逆ハーEND阻止だろ。 俺、逆ハーENDだと『俺を捨てないでくれー!!』ってヒロインに縋りつくダメ男になるんだぜ?俺様設定何所行ったって感じだ」


 「それは恐ろしいね。僕は……いや、やっぱり聞くのはやめるね」


 「賢明な判断だ、星野先輩」


 「じゃあ、ヒロインの恋愛フラグを片っ端からぶち壊すってことで決定?」


 「「「「異議なし」」」」


 「では、今日の放課後からですね。伊織、今日起こると思われるイベントは?」


 「虹坂の出会いイベントは不発だから……後は、星野先輩と蓮だな」


 「僕ですか……」


 「自分は元々担任なので接触自体は職務範囲ですが……それ以上は困ります」


 「まあ、桃まんでも食べて元気出して! 蓮先輩、星野先輩」


 「ありがとう、雪城さん」


 「作戦考えなきゃっすね。今こそオレの闇に染まりし心眼を開く時――」


 「南雲……お前まだ中二病が抜けてなかったのか」


 「男は皆、心は少年!あと中二病は不治の病っす!」


 「はいっ、作戦を立てますよ。伊織イベントの詳細を――――」


 

 こうして私たちはヒロインの逆ハーを阻止するべく、作戦会議を行った。

 ヒロインは虹坂と出会いイベントを果たすことは叶わなかったようだ。

 

 んー、桃まん美味しかったな。また食べたい!





鈴花はお嬢様ですが、早くに親元を離れているので砕けた口調になっています。

お嬢様らしくしなければならない時はちゃんとします。


星野先輩と南雲くんの説明は追々。


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