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03話 転校初日は……

 高校に入学してからの1年間、それはもう忙しかった。

 他の攻略対象たち……実は超能力を無効化する能力を持っている人やアンチ超能力を唱える親をもつ人、高レベルな癒し能力を持つ人、そして学園の幽霊と噂されていた幽体離脱をしていた実は意識不明で病院の中で眠り続けている人を時に監視し、誘拐から秘密裏に守り、悩みを解決したりした。

 もはや攻略対象たちの心にヒロインの入り込む隙はない。

 それと超能力を無効化する南雲くんと癒し能力を持つ星野先輩はアメリアに勧誘して、現在は研修中だ。攻略対象だけにスペックの高い人材で思わぬ収穫である。

 優秀な同僚が増えるのは素直に嬉しい。


 ちなみに南雲くんと星野先輩には、ヒロインのことや私たちの任務について話してある。

 ヒロイン入学後に協力してもらうつもりだ。

 蓮先輩は私たちが入学したと同時に新任教師として聖フローライト学園に潜入。

 女子生徒を無自覚に誘惑しているが、手は出していない模様。

 私と伊織は学園で地味に過ごしていた……と思っていたけど、名門雨宮の秘蔵っ子ということで伊織は生徒会長へと祀り上げられた。

 このままじゃゲームと同じだと半泣きな伊織は、私を副会長に指名した。

 まったく迷惑な話である。

 おかげで蓮先輩が生徒会顧問になるよう調整したりと余計な手間が掛かった。


 ヒロインはゲーム通りに高1の3学期に超能力を開花させた。

 能力はよくあるサイコキネシス。とりあえずは私たちの脅威とはならないレベルである。


 ヒロイン転校初日。

 私は早朝からヒロインを張り込み。

 伊織はヒロインに攻略の意思があるのかを確認するための餌――もとい、囮として出会いイベントを演出させた。

 まあ、完全に出会いイベントを成功させるのはヒロインを調子乗らせるということでギリギリで回避するつもりだったけど。

 まさかあんな結果になるなんて思わなんだ。

 しかし俺様生徒会長の出会いイベントが食パン齧って遅刻遅刻~だったとは……乙女ゲームって奥深い。



 そして回り回って現在。

 ヒロインは私たちの教室に居た。


 「今日から皆さんの学友となります、日向梓さんです」


 「はぁはぁ……ひ、日向梓です。みんなよろしくね♪」


 担任の蓮先輩に紹介され、ヒロインが挨拶した。

 ヒロインはピンク髪の美少女……のはずだが、髪は全力疾走したのかボサボサで息も絶え絶え。

 極め付けが制服べっとりとついたブルーベリージャム。

 罪悪感?そんなもの仕事に私は持ち込まないからしーらない。

 クラスでのヒロインの第一印象は……うん、どんまい。


 「日向さん、SHRが終わったら保健室で制服を借りなさい。あと、席は一番前のこちらでお願いしますね」


 「霧島先生ありがとうございまーす♡」

 (霧島先生が目の前なんて最高!しかも雨宮様と同じクラス……さすがヒロインのあ・た・し)


 ゲームでは伊織はヒロインと別のクラスなんだけど……気づいてないのかな、あれ。

 ヒロインの席は後ろの席の私たちが監視しやすいようにっていう蓮先輩の気遣いか。

 っと伊織は何か脅えてるし。

 まあ、ヒロインの目はギラギラしていたもんねー。

 蓮先輩にもロックオン!って感じだし。

 リアル乙女ゲームする気満々じゃん。

 これは最悪の事態も想定しないとなー。


 私は隠れてメールを南雲くんと星野先輩に打った。

 『警戒レベル5 対象はSHR後、保健室へ。 ほんわか保健委員は特に注意すべし』

 警戒レベル5はヒロインが攻略する気満々ですよーという警告。ほんわか保健委員は星野先輩のコードネームだ。よしっ、これでOK。


 SHRが終わると、ヒロインが真っ先に伊織のところに駆け寄る。 

 あれは……肉食獣の目だ!


 「雨宮様ぁ、あたし保健室の場所が判らないのぉ。案内してくれませんかぁ?」


 ヒロイン媚び媚びだなー。伊織脅えすぎだって。

 知らぬ存ぜぬでいると伊織がこっちに眼で助けを訴えてきた。

 面倒だから無視。


 「えっ、何で俺を知っているのかな?」

 

 伊織はヒロインはあくまで初対面。ちょっとした揺さ振りだろう。

 脅えてても情報は引き出そうとするんだなー、そういうところは優秀だよね伊織。


 「そんなことどうでもいいじゃないですか!ねぇ雨宮様、保健室いきましょ」


 いやいや、良くないからね!?初対面の相手に名前知られているとか気持ち悪くない?

 まあ、ヒロインの場合ゲームの記憶持ちって判っているけどさ。

 あっ、クラスの空気が重い……授業始まるまで廊下に出てようかなー。


 「す、鈴花。そういえば生徒会の用があったよな。そう、大至急なやつが!」


 ちょっ伊織!私を巻き込むなー。

 ヒロインと絡んだら悪役令嬢だと思われている私が面倒になるだけじゃん!

 この野郎、学食奢るだけじゃ気が収まらん。


 「伊織……放課後まで大丈夫だったと思うけど。 私の間違いかもしれないし、確認してくる」


 「お、俺も一緒に行くよ!」


 「私ひとりで大丈夫だけど?」


 怒っているよ私は。素直に助け舟を出すとでも?

 ギロリと睨みつけると伊織は目線だけで謝罪するという高等テクニックを私に使った。

 器用な奴だ。だが許さない!


 そんな私たちを見てヒロインが私を睨みつけて話に入って来た。


 「ちょっとあんた雨宮様に失礼なんじゃないの? 大した能力を持たないのに、親の力で学園で威張り散らしている最低女のくせに。あたしと伊織様の邪魔しないでよ」


 おおっと!いきなり罵られたー。

 てか雨宮様呼びから伊織様に変わってるぅ。

 あれか、対抗意識ですか! 私は恋路を邪魔する悪役令嬢ですか!まあ、そうなんだけど。

 親の力とか言ってるけど使ったことないな……そういえば忙しくて1年帰省してないなー。

 少しは帰って来いって言ってたっけ。


 ぼーと考えていたら眉吊り上げてヒロインが近づいてきた。


 「何とか言ったらどうなの!? 影で取り巻き使って気に入らない子を苛めて楽しんでいるくせに。あんたの家の会社がどんな悪いことしているか知っている?警察に告発しようか?」


 伊織を弄ることはあっても、他人を苛める趣味はないんだけどなー。

 それに取り巻きとかいないし。

 あとうちの会社、10年連続働きたい会社ベスト3にランクインしているんだけど……ホワイト企業だよ?警察に告発なんてしたら、逆に名誉棄損とかで訴えられそうだけど……。


 「はぁ、そうですか。日向さんがそう思うならそうなんじゃないですか?」


 否定するのも面倒。

 私はゲームの悪役令嬢とは違うんだけど……すでに現状はゲームとは大きく違うし。

 そもそも、ゲームと大きく世界変えたのはヒロインが組織に情報を流したからなんだけど……気づいていないな、これは。


 「おいっ、鈴花の事何も知らないくせに適当なこと言うな」


 おお、伊織にしては珍しく冷たい表情&声。

 今なら俺様生徒会長名乗れるんじゃない?


 あっヒロインがポカンとしてるよ。


 「……えっ、何で伊織様がこの女庇うの? 付き纏われて迷惑しているんじゃないの?」


 「何を勘違いしているのか知らないが、鈴花は俺の幼馴染だ。幼馴染が見当違いの侮辱をされて黙っていられるか」


 伊織……すごい怒っているな。


 「ちょっと転校生! さっきから黙っていれば鈴花様に暴言の数々……謝りなさいよ!鈴花様はこの学園でトップレベルの実力をお持ちなのよ!しかも女子に優しくて、頭も良くて、運動も出来て、しかもお綺麗で……下級生がお姉様って呼んでいるのよ?むしろ私たちが呼びたいわ! 鈴花様は皆の憧れの的なの!雨宮君とのカップリングこそ至高なの!」


 やめて、恥ずかしいから!むず痒いから!

 てか北条さん、そんなキャラだったけ? 文学少女キャラじゃないの?

 去年も同じクラスだったけど、こんな一面があるとは知らなかったよ!


 「そうだぞ転校生!雪城さんはこの学園で踏んで罵ってもらいたい女子NO.1で一部の男子に女王様って崇められているんだ!」


 ちょっ、何それ!?何で舞薗くんがそんなこと知ってるの?

 そんな情報知りたくなかったよ!


 「どういう事よ!ゲームじゃこんな設定無かったのに……」


 ヒロインがボロ出してるよ。

 というか……え?他のクラスメイトも何か言おうとしてる!?

 私を恥か死させる気か!!


 「……い、伊織ぃ」


 伊織の服の裾を引っ張る。もう、なりふり構ってられない!

 撤退!戦略的撤退~!!


 「日向、保健室は職員室の隣だから。 鈴花、生徒会室に行こう」


 伊織が私の手を引っ張って廊下へ出た。

 ヒロインは……見事に固まっている。

 早く保健室行った方がいいよ?教室にフルーティーな匂い充満してるし。





※SHR=ショートホームルーム(朝の会みたいなやつ)


◆秘密超能力組織アメリア

秘密とか言っていますが、警察や政治家などの職種やある一定の地位を持っている人は普通に知っている組織です。公然の秘密ってヤツです。国の独立機関。

お仕事は警察の捜査に協力、犯罪組織を壊滅、要人警護、うっかり総理の尻拭いなど多岐に亘ります。マジやべぇ……な超能力者がいっぱい。

伊織・蓮・鈴花は若手のホープでこいつらが本気になったら世界が終わるっとまで言われるほどです。


◆聖フローライト学園

名前は適当。

全国から超能力者の子どもを能力の強弱関係なく集めた高校。

シャレにならない犯罪を起こしやすい難しい時期である超能力を持つ子ども達を、面倒だから一か所に集めちゃお!という理由で建てられた。

学内では授業以外の能力使用は基本的に禁止。

ただし緊急時や申請を出せばOK。

超能力の授業があることを除けば普通の高校と変わらない。

制服はセーラー服と学ラン。色は黒(作者の趣味)


◆北条さん

文学少女の皮を被ったオタク。

能力は念写と転写でそこそこの資質を持つ。

この能力を『私の人生は萌えに捧げることこそ天命!』と考えている。

学園でのお気に入りは攻略対象+鈴花。

中堅同人サークルで執筆活動をしている。

今度、鈴花と伊織をモデルにした本を出そうとしている。(伊織が鈴花に足蹴にされる話)

ちなみに今後作中には出ないキャラ。


♦舞薗くん

能力は微弱なサイコメトラー

普通の男子高校生だったが、鈴花が上級生(男)に絡まれて撃退(DOGEZA+足蹴り)するのを見てから、自分も足蹴にされたいと別世界の扉を開いてしまった。

途方に暮れていた所を『雪城鈴花様に踏まれ隊』にスカウトされ、そのまま入隊した。

ちなみに今後作中には出ないキャラ。



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