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12話 決着は……

 警備兵を倒した後、私は伊織がいるであろう倉庫室へと向かった。

 外へと簡単に出れるようになっていて、外から入口は確認しにくい構造になっているはずだ。

 伊織のお迎えは数えきれないほど経験あるし、誘拐犯の手口も大体判る。

 お迎えのスペシャリストだね、私。


 倉庫室に入ると伊織が灰色髪の男に腹パンならぬ腹キックされていた。

 あとヒロインが床に転がっている。伊織は判るけどヒロインは何故?

 今は伊織の救出が最優先。

 私は伊織の手の縄をテレポートで飛ばした。

 

 私のテレポート能力は3キロメートル圏内の物を移動出来る。

 もちろん視認しなくてもだ。

 人体は失敗が怖いので近づいてからテレポートさせるようにしている。


 「俺の幼馴染たちは最強だ」


 その言葉と共に伊織が笑った。

 珍しくカッコいいじゃん、伊織。でもちょっと違うよ?


 伊織の足の縄もテレポートで飛ばした。

 次に灰色髪の男に狙いをすましてテレポート。


 「私たち3人は最強でしょ、伊織!」


 いきなり現れた私に驚愕の表情を浮かべた灰色髪の男に渾身の蹴りを放つ。

 狙いはもちろん腹一択!10倍返しが基本だよね。


 「ぐふぉっ」


 灰色髪の男は勢い余って、後にあった木箱の山へ吹っ飛び、そして埋もれた。

 その間に伊織が立ち上がる。


 「伊織、怪我は?」


 「腹に2発食らっただけだ」


 「上等」


 お互いに笑い合い無事を確認する。

 するとさっきまで床に転がっていたヒロインがもぞもぞと起きだした。

 顔は右半分が腫れていて、涙でぐしょぐしょだ。

 どうしてこうなった。


 「アンタのせいよ、悪役令嬢。死ねぇぇぇええええ」


 ヒロインが念力の刃を放つ。

 

 「うるさいよ」


 私は伊織と共にテレポートで逃れると、ヒロインの両手両足に弾丸をテレポートさせた。

 彼女はもう一般人ではない。

 許されないことをした。故に気を使う必要はないのだ。

 それに私は伊織やクラスメイトを危険に合わせたことに怒っている。


 ヒロインは痛みに驚いたのか、サイコキネシスを使う余裕もないみたいだ。

 灰色髪の男もそろそろ復活するし、伊織に手短に言うか。


 「伊織、『敵組織の秘密暴け』だってこれ隊長命令だから」


 「了解」


 「よくもやったなぁぁぁあああああ」


 私たちに向けて強力な電撃が放たれる。

 テレポートで素早く回避。

 あれに当たったら感電死どころか消炭になるね。


 伊織にゴム弾入りの銃を渡して後衛を任せる。


 「援護お願い」


 「まかせろ」


 電撃を放ち続ける灰色髪の男。

 狂ったように叫んでいるくせに狙いは正確。

 おそらく灰色髪の男は冷静にこちらを窺っている。


 私はテレポートを何度も行い、灰色髪の男を攪乱。

 すると灰色髪の男は伊織を狙う動きを見せる。

 その一瞬の隙をつき、プラスチックの棒(電撃対策)を灰色髪の男の足へテレポートさせる。

 今度は痛みで灰色髪の男の動きが完全に止まった。

 そこに伊織が銃を撃つ。

 ゴム弾は一直線に灰色髪の男の左目を射抜いた。


 「んぎゃぁぁぁああああ」


 灰色髪の男の絶叫が轟く。

 私は即座に残りのプラスチック棒をテレポート。

 手と足に針山のようにそれらが突き刺さる。


 

 灰色髪の男は己の敗北を悟ったのか、動かなくなった。

 すると伊織が灰色髪の男へと近づいた。


 「何かな、雨宮伊織くん」


 先程の絶叫とは打って変わって灰色髪の男は呑気な声だった。


 「仕事をしようと思って。ところでヴァン、過去追跡の能力がどんなものか知っているか?」


 「過去を見る能力だよね?」


 「それもある。過去を変える(・・・・・・)能力でもあるんだけどな」


 伊織は灰色髪の男灰色髪の男に近づくと過去追跡の能力を発動させた。


 「ヴァンって本名だったんだな。昔の名前は被験体242番。その髪色は実験の後遺症か。研究所をヴォルトキネシスでぶち壊して逃走。それで組織に入ったのか。組織の名は「ハーメルン」、場所はガレイド公国……」


 「見るな!!」


 「おいおい、本番はこれからだぞ?まあ記憶は読み取った訳だし、あんたの過去を変えるか」


 伊織は灰色髪の男に目線を合わせた。


 「設定は……アメリアに襲撃されたが何人か殺して逃走。仲間のテレポーターの最後の力でどうにか船へと帰還出来た。雨宮伊織の誘拐には失敗したがアメリアメンバーの詳細な能力情報を得ることに成功ってところか?もちろん能力は嘘だけどな」


 「やめろ、やめろ、やめろぉーーー」


 灰色髪の男の断末魔が木霊する。

 

 伊織の過去追跡能力という名前は少しフェイクが混ざっている。

 名前だけだと、過去が見えるだけの能力に感じるだろう。

 未来予知の能力では未来を変えることは出来ない。

 でも伊織の過去追跡ならば過去を変えることが出来る。

 もちろん世界を変えるなんてことは無理だ。

 だが、対象を絞れば出来る。

 今回の場合、灰色髪の男に対象を絞った。

 これで灰色髪の男の中で過去の記憶は改変された。

 それにより、伊織の言った通りの設定の記憶が埋め込まれているだろう。

 超能力の洗脳などではないため、灰色髪の男の記憶は誰にも疑われないし治しようがない。

 だって灰色髪の男の中では伊織の設定こそが本物の過去だからだ。


 過去追跡能力はヘタをすれば人の人格すら変えてしまう。

 また間違っていることを正しいことにすることも可能だ。

 雨宮の血筋を濃く受け継ぐ伊織は才能も一級品。

 一都市ぐらいの人々ならば一気に過去を変えることも出来るのだ。

 ある意味最強の能力。それが雨宮伊織の超能力だ。


 これだけ聞くと伊織が大魔王みたいだが、私は伊織が自分の力を恐れているのを知っている。

 だから伊織は極力能力を使わない。

 今回はそうとう怒っていたから躊躇がなかったけどね。

 

 灰色髪の男はぐったりと項垂れていた。

 もはや意識はない。


 「ひぃぃ、化け物」


 灰色髪の男様子を見てヒロインが今更悲鳴を上げた。

 この場合化け物ってどっちなんだろ?

 灰色髪の男の中身をいじった伊織?それとも灰色髪の男をハリネズミみたいにした私?

 あっ、何か私な気がする。

 悶々と考えていると、ヒロインの髪の毛がチリチリと燃え始めた。

 

 「黙れ、化け物はお前だ。鏡で顔を確認して来い」


 蓮先輩、口調荒れてますよー。

 てか焦げ臭い。伊織も顔顰めているし。

 あっ、ヒロイン気絶してる。


 「蓮先輩、ヒロインが臭いからやめて~」


 「このクソ女は鈴花に怪我を負わせた。しかも殺すつもりでやった。なら手加減の余地はない」


 「それもそうだな」


 「伊織もノルな!蓮先輩、クールダウン。口調戻してー」


 「はいはい、判りました。ところでソレなんです?」


 「俺をヒロインと一緒に誘拐した男だ」


 「隊長の言っていたヴォルトキネシスの男だよ」


 「ああ、随分と人を殺した……」


 「もっと違う過去にした方が良かったか?」


 「まあ、いいんじゃない?泳がせて組織まるごと一網打尽って感じで」


 「ああ、そういうことですか」


 「船は後30分で着くってさっき言ってたな。あとどれぐらいだ?」


 「さくっとコイツ落としてこようよ。はやくアメリアに帰りたいし」


 「そうですね。ヒロインも直接連れて行きましょう」


 「了解。じゃあ【テレポート】っと」


 伊織誘拐事件はこれにて閉幕。





次回でラストです。

登場人物の設定とか追記しようと思います。



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