10話 アメリアの隊長は……
「雨宮隊員が下校中に誘拐された」
ゲームに興じていた私と蓮先輩は突然隊長に呼び出された。
まさかとは思っていたけど……
「伊織には雨宮の護衛を付けていたはずですが?」
「その通りだ、霧島隊員。3人の護衛の内1人死亡、残る2人は重傷だ。そして重傷の内の1人が意識を失う寸前、襲撃者はヴォルトキネシスの男だと言っていた」
ヴォルトキネシス……雷使いか、やっかいな。
優秀なヴォルトキネシスは電子機器さえも操ると聞く。
となると……
「それじゃ、伊織の靴の中に仕込んでいる発信機もスマホのJPSも全部使えないってことですか?」
「そうだ、雪城隊員。さらに厄介な情報も入った」
「厄介……とは?」
「警察より日向梓がヴォルトキネシスと思われる男と脱走した。怪我人20名、死者3名だそうだ」
「彼女にそれだけの危険を冒す価値があるとは思えないのですが?」
「それは私も同意見だ、桐嶋隊員。もしかすると……ヴォルトキネシスは遊んでいるのかもしれない。もちろん組織としての命令は聞きつつだ」
「そうなると……伊織の安全は保障されませんよね」
「うむ。ふたりには救出へ向かって欲しい。もっとも日向梓の影響で未来予測はできないらしいがな。現在、真田隊員がサイコメトリーを使い捜索中だ」
「実行は自分と鈴花だけでよいのですか?」
「十分だろう?我がアメリアが誇る戦闘能力NO.1とNO.2揃い踏みだ」
「あのー、私はサポートが本業なんですけど」
「いやいや、そんなこと言ったら他の戦闘メンバーが泣くぞ?」
「では鈴花は戦闘力NO.2で補助能力NO.1の危険人物ってことでいいんじゃないですか」
「え?なんか嫌だよ、それ。私、女の子だよ」
「そのへんにして置け。では霧島蓮隊員と雪城鈴花隊員に任務を与える。『雨宮伊織隊員を救出し、容疑者を拘束。そして敵組織の秘密を暴け』以上だ」
「隊長それって……」
「アメリアが誇る、精神干渉能力NO.1を甘く見たことを後悔させてやれ!」
隊長がニヤリと不敵に笑った。
ああもう、これだからアメリアが大好きだ。
アメリアでは伊織は守る存在ではなく、一緒に戦う仲間として正当に評価してくれる。
「ふたりとも返事は!」
「「了解であります」」
待ってろヴォルトキネシスの男とヒロイン。
私たち3人が本気で相手してやる。




