外灯の下で
水鳥はさえずるのを止め、かわりにカラスが空の向こうで必至に何かを叫んでいる。
気がつくと、陽はもう見あたらなくて、辺りは薄暗くなっていた。
それでも、すかさず外灯が点いた為、お互いの顔を確認できるくらいの明るさは保たれていたが。
「やべぇ、超恥ずかしいよ。」
顔をあげ、僕が照れ隠しにそう言うとフフ、と美佳はそこぬけに明るく笑った。今度はたんぽぽみたいに。
「なんでそんなに可笑しいの?」
「だって政司、顔まっかっかだよ。」
そう、僕の顔は未だに高揚したままだった。
僕は、風船の様に頬をふくらませてブスっとした口調で
「知ってる。」
と言うと、美佳と僕は声をあげて笑った。
笑い声は、誰もいない公園に響きわたり、空に吸い込まれていく。
ひとしきり笑い、再び沈黙がおとずれると、僕は無性に不安になってしまった。
二人きりで会えない時には、話したい事が沢山あったのに、いざ会うとすべて忘れてしまう。
学校で友達と話す時は、考えてもいないのに頭からすらすら言葉が出るのに。
この先もこんな不安を抱えていくのだろうか?
考えている僕の表情を察したのか彼女が顔をあげる。
肩までの髪が揺れ、さっきと同じキンモクセイの香りがたつ。
「そんなこと考えてもしょうがない。そういう不安は、あたしだって持ってるしみんなが抱えているものだわ。」
そういうと、彼女は少しうつむき、髪を【てぐし】でとかす。まるでエスパーみたいに僕の心を透かして。
恋の魔法は、本当にあるのかもしれない。