閉ざされた中の自由
またしても、投稿したつもりでいた作品です。
スムスムは気が付いた。
「ここはどこだ? 真っ暗で何も見えない……」
スムスムはとりあえず、手探りで辺りを調べ始めた。
「ん? 壁だ。これに沿って歩いてみるか」
壁伝いにゆっくりと歩きはじめた。そしてすぐ突き当たりにたどり着いた。それが四度つづいた。
「どうやら僕は狭い部屋に閉じ込められているようだ」
その部屋には何も無かった。あるのは、今自分が目を開いているのか、閉じているのかもわからなくなるぐらいの暗闇だけだった。
「あれ?」
スムスムはあることに気が付いた。
「変だな…… いま触っていた壁に入り口らしきものはなかったなぁ。上にでもあるのか?」
スムスムは壁を登ろうとしたが、あいにく壁には突起物などあるわけもなく、登ることはできなかった。
「だめだ、登れない…… ちょっとまてよ? 下に入り口があるのかもしれない」
スムスムは足元を探り始めた。しかし、どこにも入り口らしきものはみつからない。
「はぁだめだ、お手上げだ。どうすることもできない」
スムスムがそう思ったとき上から小さな光の点が見えた。
「やっぱり上に入口があったのか! それにしても眩しいな……」
光をさえぎるようにして両手をかざしながらも、その光の点を見ていた。
「かなり高いところにあるな。それに単なる光の点じゃなく、やはり入口のようだ」
光が差し込んできている入口は少しずつ大きくなっていった。そして光の中に何かが現れた。
「うわぁぁ!! あれは目か!? なんというデカさだ!!」
その目が現われた次の瞬間、光は解き放たれ暗闇の空間は消えうせた。
「うっ…… 眩しい……」
あまりの眩しさに目を開けられずあたふたしていると、スムスムの体は何かに鷲掴みされた。が、怖さのあまり声が出なかった。スムスムはそのまま持ち上げられ別の場所に優しく置かれた。
「んっ……」
眩しさにもなれ、鷲掴みからも解放されたスムスムはゆっくり目をあけることにした。
「えっ? ここは……」
檻の中だった。スムスムはもう何がなんだかわからなかった。
「ガシャン!!」
スムスムの頭上で音がした。スムスムが上を見てみると入口いや、出口が閉ざされていた。
「あっ出口が!」
そのことに落胆しつつも辺りを見回した。すると檻の外側にとんでもないものを見つけてしまった。
「なんだあの化け物は……」
檻の外側にはスムスムの何十倍も大きい生物がいた。その生物は不気味な色をしており緑や青、白に紫と多彩であった。
「それにしてもなんというデカさだ。あんな化け物見たことがない」
スムスムは恐怖していたが次第に落ち着きを取り戻した。あまりのでかさに「呆れる」という感情が勝ってしまったからである。しかし、これから何をされるのかという不安は残っていた。
「ガシャン!!」
また上の出口が音をたてた。巨人の手には容器が握られていた。巨人には小さくスムスムには大きい容器だった。その容器を置くと巨人の手は出口へと消えていき出口は閉ざされた。
「食料だ…… 全くどういうつもりなんだ? 僕を誘拐、監禁しておいて食料をあたえるとは……」
さすがに、わけのわからない巨人が出した食料には手を出さずにいた。先ほどより落ち着きを取り戻したスムスムはもう一度辺りを見回した。檻の中には簡易的な家があり、なぜか離れた場所にユニットバスが設置されていた。更に離れたところには貯水タンクがあった。水はここで補給するらしい。だが一つ見慣れないものがあった。
「何だこれは?」
隅には運動する為の器具が置いてあった。
「こんなものがあるということは、巨人は僕をこの檻から出さないつもりらしい」
スムスムが運動器具に近づくと何かに気づいたように巨人はどこかに行ってしまった。
「うわっ! 急に動かないでくれ! ビックリするじゃないか!」
10秒もたたないうちに巨人は帰ってきた。手には記録媒体があり、こちらをまじまじ見つめ何かを記している。
「ふむ、どうやら僕は何かの実験体として連れてこられたのだ。僕という生物の適応能力や生態調査をしようってとこだろう」
しかし、そんなことがわかってもスムスムには意味の無いことだっった。頑丈な檻を壊せるわけでもなく、出口ははるか彼方。仮に出られたとしても自分の何十倍もある巨人が相手じゃ敵うわけがない。
「とにかく、今は生きる事に専念しよう」
スムスムはその日から「生きる」ことに専念した。食料を食べ、必至に運動して、たっぷり休んだ。この一連の動作はかなりつづいた。また巨人の記録も平行して進んだ。かなり続いているうちにスムスムも環境になれてきた。慣れてきたかと思うと巨人は外での散歩も良しとすることにしたらしく、一日の何時間かは散歩が出来た。
「こうして過ごすのも悪くない。食べるものにも仕事にも寝るところにも困らない。外出時間が短いのがたまに傷だが、謎の巨人に捕まっている暮らしのなかでは一番楽な生活だろう」
だがスムスムはその楽な生活を一人で過ごしていた。
「はぁ…… 問題は仲間が誰もいないことだ。独りはやはり寂しいな……」
その問題が解決しないまま、また時は流れた。
「ガシャン!!」
上の出口から巨人の手が現われた。
「ん? 散歩にはまだ早いが……」
「キャー!! 早くおろしてよ!!」
スムスムにはその叫び声が天使の声に聞こえた。巨人の手が去るとそこには天使がいた。翼は無いが確かに天使だった。
「あ、あの……」
スムスムは天使に話しかける。会話そのものが久しぶりだった為スムスムの声は裏返った。
「キャッ! 誰!?」
「す、すいません驚かしてしまって…… 僕スムスムって言います。もしかしてあなたも巨人にさらわれてこられたんですか?」
「えっ!? ってことはあなたも? ……ねぇ被害者が増えたことになるのに何でニヤニヤしてるの?」
天使は不思議そうに「理解できない」といった表情をしていた。
「す、すいません! 久しぶりに仲間に会ったもので……」
「え? あなた独りでここに?」
「ええかなりの年月……」
「そうだったの……」
「えっーと、お名前を聞いても?」
「えっ? あぁ、まだ言ってなかったわね。私はタハタハっていうの」
「タハタハ…… 可愛らしいお名前ですね」
「そう? ありがとう」
「タハタハさんはここに連れてこられる前は一人じゃなかったんですか?」
「ええ、女ばかりで五姉妹」
「そうだったんですか。姉妹で連れ去られたんですか…… 可哀想に」
「私も姉も妹も自分のことを「何て不幸なの?」と思っていたわ。けど今日、スムスムさんに会って考えが変ったわ」
タハタハはスムスムに近寄り手をとった。
「この先どうなるかわからないけど二人で頑張っていきましょう!」
この日から二人は「生きる」ことに専念した。最初はさん付けで読んでいた名前も、愛の言葉の前の挨拶程度になり、スムスムとタハタハは本当の天使を授かった。
「元気な子だ。男の子に女の子、良く頑張ったねタハタハ!!」
「スムスムがそばで勇気付けてくれていたおかげよ。スムスムありがとう」
天使達もやがてスムスムとタハタハが始めて出逢ったときぐらいに成長した。その分二人も年をとっていた。そして、清々しい秋晴れのある日。
「ねぇ! あなた死んじゃいや!!」
「お父さん頑張ってください!! どうか死なないで!!」
「あぁ、僕はなんて素晴らしい家族をもったんだ。出来れば皆とは離れたくはない。巨人達も色々な治療を施してくれたがどうやら病気ではない…… これは天命だ」
スムスムは家族全員が天使に見えていた。そして天使達の涙がスムスムを包んだ。
「いいか子供達、強くたくましく生きなさい。そして母さんを頼んだぞ」
「はい、頑張ります…… お父さん……」
「お母さんのことは任せてください」
「タハタハ…… こう呼ぶのはいつ以来かな……」
「スムスム……」
「君に出会ったあの日、生きていて良かったと心から思えた。文字通り天使が空から舞い降りてきたんだ」
スムスムはだんだん弱っていたがはっきりとしていた。
「あの日から今日まで毎日が幸せだった。僕なんかと一緒にいてくれて有り難う。これからも、君の事を愛しているよ…… タハタハ」
「スムスム、私もずっと愛し続けるわ……」
スムスムは旅立っていった。最愛の天使からの最愛の言葉を胸にしまって。
その様子を見ていた巨人が言葉を発した。
「うわーん!! お母さん、マイキーが死んじゃったよ!!」
「悲しまないの…… 笑ってマイキーの事を送ってあげなさい。ほら、マイキーも『ありがとう』って笑っているようだわ」




