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†1† 『Flapping the Ebony Clothes』

補足説明『戦闘用ディバイザー』について。



・亜人種の研究によって生まれた副産物である。

 科学とは違う超常の力『魔法』によって確立された。

 今の所『妖魔』に最も効果のある対抗手段。


『詠召盾』と呼称する事がある。


ついでにOPも。


OP 水樹奈々『Scarlet Knight』









夜桜町は他の市町村は愚か、どの都道府県とも違う特徴を持つ。









それは亜人種(・・・)が人間と共に暮らしている事だ。









亜人種とは、動物的特徴を持った人種全般の事を指す。


哺乳類の特徴を持つ者もいれば、爬虫類や鳥類の特徴を持つ者もいる。


彼等は何故動物的特徴を持って誕生したのか。


原因は一体何なのか。


事細かな詳細が、まだ解き明かされていない。






















そして彼等が姿を見せ始めた頃。




それを期に、異形の『妖魔』が姿を現す様になったのも、また事実なのだ。

























「ふぅ・・・これで良し」





最後の荷物が包装用のダンボールへ放り込まれ、ガムテープで封をする。


あるのは骨組みだけとなったベッドと、がらんどうになった部屋のみ。


持っていた僅かな持ち物は、全て目の前の二つのダンボールの中。


そんな部屋に佇む青年の背には、これからの生活で必要な物が詰まった


リュックサックが背負われ、直ぐ傍には冊子が沢山入った紙袋が置かれていた。


ダンボールを外の道路に置き、紙袋の中身を頻りに覗いたり冊子を読み耽っていると、



ヴォォォォォオン!!!!





「――爺ちゃん!!」


「おはよう執斗」





けたたましいエンジン音と共に、青年の前に一台のサイドカー付きのバイクが停まる。


ヘルメットを外した初老の老人が、青年に声をかけた。





「待たせてしまったかの?」


「いや全然、教科書が面白くて気にならなかったよ」





余り気にする風でもないようだ。


受け答えをしながら、青年はせっせと段ボール箱をサイドカーに運び込む。


どうやら青年が乗るための物ではないようだ。





「じゃあ、気をつけて来るんだぞ?」


「分かってるよ、でもどうせならサイドカー(それ)に乗せてくれたほうが―――」


「それではお前にとって意味が無い」





青年の少々甘い考えはお見通しだったらしく、老人の言葉ですぐに一蹴される。


サイドカーにダンボール箱が積まれると、老人はまたヘルメットを被りなおし、


再び愛用のバイクに跨る。





「これも経験と言う物だ、ではまた後ほどに、荷物はあっちの家にしっかりと

届けておくからな」


「分かったよ・・・ありがと爺ちゃん、また後でな~!」





再び轟音を響かせ、老人の乗ったバイクが青年の許を走り去っていく。


手を振りその様子を見送ると、地べたに置いたリュックをまた背負い、





「今までお世話になりました・・・・・・っと」





自分が出てきた宿舎に一礼を送る。


今まで自分を住まわせてくれ、眠りを守ってくれたその建物に、感謝の意を込めて。





「さてっと・・・そろそろ行くか、定時通りの電車に乗らなくちゃな」





後ろ髪を引かれながら、名残惜しい気持ちを胸に、宿舎を去る。


そして、新たな住まい、新たな生活の待つ『桜町』を目指して、踏み出してゆく。









◆◆






























「・・・・・・参ったな」





何回か電車を乗り換え、昼時になっていたので何処か店に寄ろうと思って駅を出たのは良かった。


良かったの、だが。





「・・・此処、何処だ?」





駅に戻る道が、分からない。


何分こういった事は初めてだ。


今まで『仕事』の時以外は外出したことなんて殆どない。


爺ちゃんに連れられて湖に行った事はあったが、街中を独りで、と言う事は初めてだ。


「これも経験だぞ、執斗よ」と、頭の中で爺ちゃんの声が響く。


・・・・・・しかし、ホントに参ったな。


駅に戻れさえすれば、確かあと何駅かで桜町なはずなんだけど・・・。


むむむむ・・・・・・地図は貰ってるから、歩いて行くか?


でも、着く頃には夜になるなぁ・・・・・・参ったな。






『――あのっ止めて下さいっ!』





「・・・ん?」





ビルの間、路地裏の方から、何やら女の子の悲鳴らしい声が。


その方向を覗いてみると、





「やっ・・・止めて下さい・・・っ」


「いいじゃんよぉ可愛い嬢ちゃん!」


「新しい服汚してくれた礼はお茶するだけで勘弁してあげるからさぁ?」





何処からどう見ても、同じくらいの年の銀髪の女の子が柄の悪い奴等に絡まれていた。


女の子の方は、必死に掴まれた腕を振り払おうともがいているが、


ガッチリと掴まれていて無理なようだ。


・・・・・・そう言えば、爺ちゃんがこんな事を言ってたっけか。



『女の子が困っていたら迷わず助ける事、最初はこれさえ守れれば良い』と。



・・・・・・よし。





「お嬢ちゃんには、タップリ体で返してもらグァッッッ!!??」





一番手前にいた奴に、まずは脇腹に蹴りを一発。


まともに蹴りを喰らったソイツは、体をビクつかせて動かなくなった。


何だ、強そうなのは見た目だけ、中身は三下以下か。





「てめぇ何してガァッッ!?!」


「何って・・・そこの女の子、困ってるじゃん」





もう一人の顎にアッパーをブチかましてダウンさせながら、事も無げに言う。





「正義の味方ぶってんじゃねぇぞ!!」


「うおっと」





リーダー格の男が、何処からか取り出したナイフで切りつけてくる。


手持ちのディバイザーでカードから取り出したのだろう。


だが、





「そんなんじゃ俺は斬れないよ、オジサン?」


「何をっぐがぁっっ!?」





大きく振られたナイフを避けると、がら空きになった懐を殴る。


痛みと衝撃に、男の体がくの字に曲がる。





「っくしょぉ・・・・・・」


「にっ逃げるぞ!!」


「このクソガキィ!! 覚えてろよ!?」


「ああ、お前等の凄惨な負けっぷりはキチっと覚えておく」





よろめきながら、そして倒れた仲間に肩を貸しながら、チンピラ共は逃げていった。





「・・・・・・・・・・・」


「その・・・大丈夫か?」





ついさっきの光景を見て腰を抜かしたのか、地面にへたり込んで放心状態の


女の子に声をかけ、手を差し伸べる。





「・・・ふぇっ!? ええと、その・・・・・・」


グギュルルルルル・・・・・・


「あ・・・・・・・・・」





彼女が俺の手を取った途端、俺の腹の虫が大きな音を立てた。


・・・すっごく恥ずかしい。


だけど、





「・・・ふふっ」





どうやら彼女の緊張は(ほぐ)れたようだった。























「――じゃあ、村咲さんは桜町に住んでるんだ?」


「はい、田上さんは桜町に御用ですか?」


「うんまぁ・・・今日からそっちに住む事になってさ」





近くのファストフード店に入り、買ったばかりの出来立てのハンバーガーを


頬張りながら答える。


目の前には、さっきチンピラから助けた銀髪の女の子――村咲紫さんがいる。


「お礼をさせて下さい」と言われここに来たのだが、流石に女の子に奢って


貰うのは何とも後ろめたい気がした。


でも、誰かに感謝されるというのは悪い気がしなかった。





「お年は幾つですか?」


「えっと・・・15、地元の高校に通うことになってる」


「もしかしたら、同じ学校かも知れませんね」


「そうだな」





因みに彼女は桜町に住んでいて、今日は偶々遊びに来ていたとの事。


そこで偶然先ほどのチンピラに絡まれ、俺がそれを助けたと言うのが事の顛末だ。





「あっお金なら私が――」


「自分の分なら払えるし、それに道案内までお願いするんだから払わせてくれないか?」





レジで会計をしようと並ぶ村咲さんを制止する。


世話になりっぱなし、と言うのは男としてどうだろうか。


それに・・・。





「・・・・・・それに、一期一会って言うしな」


「え・・・?」


「あぁいや、何でもない」





何だか余計なことまで際限無く話しそうになったので、


代金を払ってさっさと店を出ることにした。






















・・・・・・そう言えば。



(村咲さんの名前、どっかで聞き覚えがあるな・・・・・・)



そう、つい最近、村咲さんの名前を聞いた覚えがある。


それを他でもない爺ちゃんの口から、だ。



(・・・まぁ気のせいだよな)



こんな見たことの無い普通の可愛い女の子の名前が、爺ちゃんの口から出る訳無いな。























「くそ・・・・・・あんな正義の味方気取りのガキに・・・っ!」


「舐めた真似してくれやがって・・・!」





その頃、執斗に撃退されたチンピラ達3人は悪態をつきながら街の路地裏に(たむろ)していた。


まだ執斗にやられた所が痛むのか、動く度に顔を顰める者もいる。





「あんのクソガキがぁっ!!!」





特に、リーダー格の男はかなり荒れていた。


傍にあったゴミ箱を苛立ちを込めて蹴り飛ばした。





「・・・あら、一体何を苛立っているの?」





と、そこへ、外套をスッポリと被った謎の女性が現れる。





「おうおう姉ちゃん、こんな所でどうしたんだよ?」


「俺達と遊びにでも来たのか?」





下っ端分の二人が詰め寄るが女は二人をスルーし、リーダー格の男に歩み寄る。


リーダー格の男が警戒して身構えると、女は(おもむろ)に懐から一枚のカードを取り出し、男に差し出した。





「これを使えば、あなたは『力』を手に入れることが出来る」


「『力』・・・?」


「ムカついている相手に仕返ししてやりたいんでしょ、彼方達も」





と、今度はスルーした二人にも同じカードを差し出す。





「この中には何が入ってるんだ?」


「さあ・・・・・・使ってみてのお楽しみよ?」





(あのガキに仕返ししたい)


(痛い目にあわせてやりたい)


(力が、欲しい)


(((あのガキが・・・・・・憎い!!!!)))


憎憎しげな表情が、カードを持った彼等の顔に瞬く間に表れてゆく。


そして彼等は躊躇する事無く、一人、また一人と手持ちのディバイザーにカードを挿入していく。





「ヴゥ・・・グウウウウウウウッッッッ!!!!」


「ガアアアアアアアアアッッッッ!!!!」




男達の姿が、見る見るうちに豹変してゆく・・・・・・化け物へ。


異形の怪物、『妖魔』へと。





「さぁ・・・思う存分暴れてらっしゃい・・・♪」





男達のその様を、女性は妖艶な笑みを浮かべながら眺めていた。























◇◇









「あの・・・ありがとうございます」


「ん? 別に良いよこれくらいは」





既に日が傾き始めた、午後の4時。


俺は(ようや)く目的地である『桜町』の最寄り駅に到着した。


・・・・・・大量の買い物袋と共に。


町までの案内のお礼を兼ねて、彼女――村咲さんの買い物に付き合ったのだ。


・・・・・・まさか女の子が此処まで買い物に時間をかけるとは思わなかったが。





「・・・・・・これも経験、か」


「? どうしたんですか?」


「いやっ何でもない、それより――」





一旦地面に買い物袋を下ろし、腕を回す。





「――荷物なんだけど、良かったら家まで持ってくけど?」


「いっいえそんなっ悪いですよ」


「でもこれ、結構重いよ?」





地面に下ろしていた買い物袋を再び両手に持って、試しに持ち上げて見せる。


相当な量の買い物をした事を物語るその重さは、とても女の子一人に持てる軽さではない。


尤も、これだけの嵩張(かさば)る量を持つのは大の大人でも難しいと思うが・・・・・・多分。





「あはは・・・ちょっと買い過ぎちゃいました・・・」


「色んな店回ったな~そう言えば」





文房具屋では女の子用の可愛いシャーペンや消しゴムを買っていたし、


雑貨屋では小物類やぬいぐるみなんかを購入した。


両手に持った買い物袋には、ファンシーなデザインの雑貨が溢れている。


・・・・・・(うわ)ついた雰囲気の店が多かったけど、面白かったなぁ。





「・・・・・・・・・ふふ」


「? どうしたんですか?」


「いいや、なんでもないよ」





自然と、頬が(ほころ)ぶ。


これから過ごす新しい日々には、こんな驚きと嬉しさを感じられるのか・・・。


そう思うだけで、何だか楽しくなってきた。


夕焼けに照らされた遊歩道、春のそよ風にさわさわと揺れる街路樹。


優しく長閑(のどか)な雰囲気が、緩やかに辺りに流れてゆく――――。













――ドゴォオン!!!!











――――はずだった。





「ヒャアっ?!」


「っ・・・!?」





突然、俺達二人の直ぐ傍に建っていた雑貨屋の壁が崩れ、瓦礫と共に土煙が辺りに立ち込める。


煙自体は、吹いた風によって直ぐに霧散し、周囲の様子がまた見えるようになる。


だが煙が晴れた向こう、崩れた瓦礫のある雑貨屋の方から。





『グゥゥゥゥゥ・・・・・・』





妖魔。


悪魔の様な風貌の妖魔が二体。





『ヴァァァァァァァアアアア!!!!』





そしてその二体を引き連れるように、さらに禍々しい容姿の妖魔が姿を現す。


穏やかな駅前が一変、怯える人々の阿鼻叫喚が響き渡る。





「・・・・・・ったく、人が漸く町に着いたと思ったら・・・・・・」





いや、分かっていた事だ。


なんせこの町は『妖魔出没率ナンバー1の地区』なんだ。


今日は現れないだろうなんて見通しは、余りにも甘い物だ。





「・・・・・・村咲さん、逃げろ」


「あ・・・・・・ぁ・・・」


「っ・・・ちょっと悪い!!」


「へっひゃあっ!?」





腰を抜かして動けない様子の村咲さんを横から抱え上げ、近くの物陰に下ろす。





『ガキィ・・・・・・アノクソガキィ・・・!!』


『ニクイィ・・・アノセイギノミカタキドリノガキガァ・・・!!』


『コロス・・・コロスコロスコロス!!!!!!』





・・・・・・しかもこっち向いて喋ってやがるって事は・・・俺を御所望みたいだな。





「ここにいてくれよ、危ないからな」


「えっでも田上さんは・・・?」


「・・・・・・ちょっと相手をしてくる」


「えっあのっ?!」





それだけ言い残し、手荷物の中からある物を取り出す。


金属製の手帳(キャリーブッカー)と|一つの腕時計(ディバイザー)


キャリーブッカーを腰に、そしてディバイザーを左手首に取り付けスイッチを入れる。





「うおっ・・・・・・?!」


『グガァッッ!!?』





スイッチを入れた瞬間、待機状態のディバイザーが眩い光を放ちながら、





「これが・・・・・・俺の・・・・・・!!」


「え・・・ふえええええええっっ!!?」





その形を、菱形の結晶をモチーフとした盾へと変える。


そして独りでに側面の菱形がスライドし、カードを入れるスロットが剥き出しになる。


腰のブッカーを開き、数あるカードの中から一枚を選んで抜き取る。


紫と黒に彩られた身体を広げ、頭頂部に一つだけある紅い眼を妖しく光らせた


エイが描かれたカードを、右手で妖魔へと向けて突きつける。





『グァウウウウウウ・・・・・・』





異様な程大きな力を、手に持ったカードから感じる。


このカードに込められているモノがどれだけ異質な物なのかを


3体の妖魔も感じ取った様子でたじろぐ。


実際に使うのは、今日が初めてだ。


けれど不思議と、不安な気持ちにはならなかった。










「――変身!!!!」


〈KOKUI――――〉




手にしたカードをひっくり返し、ディバイザーのスロットへと挿入させる。


そして開いたスロットのカバーを再び閉じ、カバーを軽く叩いた。











〈――――DENSHO!!〉


「うおおおおおおおおおっ!!!!」


『ガァウウッ?!!』


「きゃあっ!?」





機械的な音声が響き渡ると同時に、俺の身体の回りに漆黒の闇のような黒い色をした


旋風(かぜ)が巻き起こる。


吹き荒れる旋風(かぜ)が、俺の姿を瞬く間に変えてゆく。


さっきまで着ていた服は旋風によって全て消し飛び、黒い靄が体に纏わり付く。


靄が上半身を覆うと途端にYシャツの様な衣服とトレンチコートが袖を通り、


両手は指先を露わにした薄手の手袋が包み込む。


下半身にも同じく靄が覆い、ズボンとミリタリーブーツとなる。


服装自体に、特に特殊な点は見当たらない。










だが。


ズボンも、シャツも、ブーツやトレンチコートに至るまで。


着ている衣服の全てが、真っ暗な闇夜を其処に溶かし込んだ様に黒い色に染まっている。


黒く染まっているのは、腕に着いているディバイザーも同様だった。


ただ、カードスロットのカバーだけが、その一箇所だけが真っ赤な配色となっている。


スロットへ挿入したカードに描かれていた、あのエイの紅眼を彷彿とさせる。





『コロスウウウウウウッッッ!!!!』





3体の妖魔の内の一体が、沈黙を破ってこっちに突進を仕掛けてくる。


が、それは余りにも隙のあり過ぎる攻撃だった。





「はあっっっ!!」


『グアアアアッッッ!!!?』





突き出した爪が届くよりも早く、妖魔の腹にローキックを叩き込む。


そのまま突っ込んできた方向に吹っ飛び、その妖魔はピクリとも動かなくなった。


対して俺は先制される前に先ほど倒した妖魔と対になっていた、


もう一体の懐を目掛けて走りこむ。


殺気を感じ、対の妖魔が迎え撃とうと腕を構えたが。





「おらあっっっ!!!」


『ガアグァッ!?!!』





妖魔が反応するよりも早くがら空きな懐に入り込み、その顔面に拳を叩き込む。


相手への確かな手応えを感じながら、拳を振り切る。


殴られた妖魔が顔を押さえて悶えるのを尻目に、奥に立つ最後の一体に目を向ける。





『ヤッタナコゾオオオオオオオ!!!!』





子分らしい二体が地面に這い(つくば)る姿を見せ付けられ、


激昂したリーダー格の妖魔が爪を光らせ特攻をかけてくる。


(確か爺ちゃん・・・・・・『技』が使えるとか言ってなかったか・・・・・・?)


連続で突き出される爪を腕で払いながら、頭の中で手順をリフレインさせる。


変身時と同じ動作で、スロットカバーを軽く叩く。


カバーとその周りが、スイッチの様に押し込まれる感覚を手の平に感じた。





〈R.K.A, Invoke!!!〉


グワアッッッ!!!!!!





電子音が鳴り響くと共に、俺の頭上に複雑な図形が複数組み合わさった陣が現れ、


その陣が通過した空間に巨大且つ異様な生き物が、奇妙な鳴き声を上げて姿を顕す。


それはつい先ほど俺がディバイザーに挿入したカードに描かれていた、


真っ赤な一つ眼をギラつかせた、紫紺と漆黒の身体を持ったエイだった。


その(くだん)のエイの身体から紫色のオーラが発せられ、


俺の両手足、つまりは四肢がオーラと同色のエネルギーを覆い、鋭利な爪の様に変化する。





「おおおおおおおおおおおおおっ!!!!」





コンクリートの地面を、思い切り蹴る。


ベキッと地面が(ひび)割れる音がしたかと思うと景色が後ろに吹っ飛び、


直ぐ目の前に最後の一体である妖魔が迫る。


肉薄した勢いを乗せて右腕の爪で妖魔を地面に叩きつけ、左で今度は思い切り宙へ打ち上げる。


少し離れた所に鈍い音を響かせて落ちてくるのを見届けると、すぐさま地面を蹴って飛び上がる。


それと同時に、後ろで待機していたエイが滞空している俺の周りを旋回し出し、


俺の身体全体を爪と同色のエネルギーで包んでゆく。


そしてエイがガパッと大口を開け、










「喰らいやがれえええええええっ!!!!」










俺を地面で身動きが取れないでいる妖魔目掛け、黒色のエネルギーと共に打ち出した。


その瞬間、





『グガアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!』


『ガアアアアアアアアアアアっっ!!!』


『グゥオオオオオオオオ!!!!』





突き出した右足がリーダー格の妖魔にヒット、衝撃で吹っ飛んだソイツに


残り二体の妖魔が巻き込まれ、三体同時に轟音をたてて爆散する。


もうもうとした煙が晴れたその場所に倒れていたのは・・・・・・、





「あ・・・・・・こいつ等は・・・・・・!」





路地裏で村咲さんに絡んでいたチンピラ三人が、ボロ雑巾のような姿で


地べたに這い(つくば)っていた。


・・・・・・うん、完全にノビてるな、ピクリともしねぇ。





ヴォンヴォオオオオォン!!!!





「ん・・・あのバイクは・・・もしかして・・・!」


「――――おぉい執斗~!!」





瓦礫の転がる悪路を諸共せず、愛用のバイクで壮吉爺ちゃんがやってくる。


・・・ただ、今朝見たサイドカーは付いてなかった。





「爺ちゃん!」


「お疲れ様じゃったな執斗、周囲一帯の整備は業者を呼んでおいたから気にせんでよろしい」


「・・・っつーか爺ちゃん帰ってたのな」


「お前の新居に荷物を置いてきた矢先にコレじゃからのぅ・・・」


「気にすんなよ爺ちゃん、どうせいつもの事だし・・・・・・て、ん?」


「? どうしたんじゃ?」





何だ・・・?









何かを・・・・・・いや。









誰か(・・)を忘れてる気が・・・・・・?






















「・・・・・・あ、ヤベ?!」





爺ちゃんが声をかけるよりも早く、近くの物陰に駆け寄る。





「あうぅ・・・・・・あっ田上さん!!」


「ゴメンな、待たせちまって・・・もう大丈夫だから」





そこには、戦闘の前に避難してもらっていた村咲さんの姿が。


長く待たせたお詫びをしながら、手を引いて立ち上がらせる。


戦いのとばっちりを受けた所は・・・・・・無さそうだ、良かった良かった。






「は、はいっありがとうございます、あのぉ・・・・・・?」


「・・・ん、どうした? 何処か怪我でもしたか・・・・・・?」


「いえっあのっ、もしかして田上さんは暁の・・・・・・?」





と、村咲さんが俺の後ろを見るようにして身体を傾ける。


俺の後ろには、バイクを押してこっちに来た爺ちゃんがいる。











「あれ・・・・・・壮吉お爺さんですか?」


「え・・・・・・爺ちゃんの事知ってる・・・・・・?」


「おぉ・・・その声と銀髪のお嬢さんは・・・村咲紫さんではないかのぅ?」


「え・・・どういう事???」






















・・・・・・・・・待てよ?


確か爺ちゃん、かなり前に「桜町には協力者がいる」とか言ってなかったっけか・・・?


んで、ソイツの名前は・・・・・・・・・・・・・・・あ。





「あああああああっ!!! 思い出したっっっ!!!」


「何じゃ・・・てっきり知っていて一緒にいたモンかと思ったぞ?」


「? 何の話ですか?」





そうだ、そうだった。


確かにあの時爺ちゃんの口から出た名前は・・・・・・『村咲紫』だった。


村咲さんが『協力者』だったなんて・・・・・・・・・。


・・・・・・こんなマンガみたいな偶然が、本当に起こるとは。





「実はのぅ村咲さんや、コイツが今日から此処の配属になった・・・」


「あ・・・やっぱり『暁の会』の・・・!」


「・・・・・・まさか協力者が村咲さんだったなんて・・・素直にビックリだ」






















地平線に沈む夕焼けが、真っ青だった空を真っ赤に染める夕暮れ時。


俺と村咲さんは、神が定めたかと思うほど運命的な出会い方をした。






















これが俺の『夜桜町』での新しい生活の序章(プロローグ)だった。





~To be continued!!~



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