来るはずだった親友が死んだ→それどころじゃない9
りんが楽しみに待っていた土曜日になり、朝早く起きた。いつも朝が起きれないりんが心配になりつつも出かける準備をした。十時前になり、家を出た。
もう一度、渚に会えたらな、そんなことを考えていた。
待ち合わせ場所に着くとまだほのかしかついていなかった。りん、叶翔とそうすけが来るらしい。何もすることがなかったから理由もなくスマホをいじっていた。「ほのかさん、おはよう」スマホから目を離し、声が聞こえたところを向くと叶翔がいた。おはよう、叶翔。自分も挨拶をした。
「りんたちまだ来ないのかよ」
呆れたように叶翔が言った。叶翔もりんのことが好きなのかなと、適当なことを思いながら叶翔に視線を向けた。
「もしかしたらまだ寝てんじゃない? りん寝るの大好きだから」
なんだよそれ。と、叶翔が言いながら笑った。それにつられて私も笑った。
その笑いのあと、気まずい沈黙が流れた。ほのかは慌ててスマホを手にした。隣に目を向けると叶翔はゲームを始めていた。本当に男子はゲーム好きなんだなと改めて思った。少し経つとりんとそうすけの姿が見え、りんの家にお邪魔することになった。りんと遊ぶときはほぼノープランのことが多い。
「りん家に行くの久しぶりだなー」
「俺は何回かりのんの家行ったことがあるよ」
叶翔は、私に向かって言った。りのんって聞くと新鮮だなと思いつつ、やっぱり好きなんだな、と再び思った。
後ろを見るとそうすけが静かに私たちの後をついて行っていた。
りんの家は薄暗く、英語の音楽が流れていた。叶翔はすぐに部屋の中に入り、目の前にある大きなソファーに飛び乗った。それをみたそうすけは軽く注意をした。家族は今、出かけているらしい。
りんの香水とは少し違う甘い匂いが部屋を漂わせていた。りんの部屋へ案内された。そこはあまり広くなく、りんと妹の机が二つ仲良く並び隣には二段ベッドがおいてあった。ほのかたちは冷たい床に座ることになった。
「何する?」
さっきまで口を閉じていたりんが話しかけた。
「何もやることなーい」
叶翔がふざけたように言った。
「まあ、ゆっくりすればいいよ」
りんはそう言い、自分の机に向かい、パソコンを開いた。なにをするんだろうと思ってパソコンを見たらゲームの画面が映っていた。マウスに手を伸ばしエンターボタンを押した。
ほのかはりんに呆れながら床に再び座った。「おい!そうすけふざけんな!」「はは!どんまい、かなと」たちまち大きな声が聞こえると思ったら男子二人が予想通り、スマホを横に持ちゲームをしていた。
女子の部屋にいるのに何も躊躇しないなんて、慣れるって不思議だな。そう思った。
私はスマホを手に持ちメモ帳のアプリを開いた。そこに、私は渚との記憶について書き出してみることにした。
渚と私の関係→親友(いつも一緒に行動)
小学六年生 卒業式の2日前にいなくなる→転校
渚は本当に交通事故で死んだ?→違うと思う:誰かに殺された(自殺✗)
事故現場は私と同じ通学路 偶然?必然? 必然だったらどうして?
ほのかがスマホに打ち込んでいるあいだ、驚くぐらい部屋の中は静かだった。
「りのん、ちょっと来てくれないか」
その静かさを遮るようにそうすけが立ち上がり、りんに向かって言った。りんはそうすけを無視し、キーボードをクリックしたり、マウスを動かしていた。「りのん、早く」そうすけの言う姿が少し笑っているように見えた。そこで私はあるものを察した。
「えー。待って」
りんはそう言い、動こうとしない。それに呆れたのか、叶翔が立ち上がった。りのん、と呼ぼうとするのかと思ったら、叶翔の目は私を向いていた。
「ほのか、来てくれ」
その言葉にりんが反応した。私は立ち上がり、叶翔について行った。りんの部屋を出る瞬間――りんと目が合った。
ほのかは緊張していた。一体なんの話をするんだろう。
かなとについてくと、りんの部屋を出て、さっきのリビングだった。
「ずっと言いたかったんだけど、」叶翔の口が動く。
ええ、それってまさか……。心臓がドクっと一つ動く。
「好きです。僕と付き合ってください」
まず、予想が当たってしまったことに驚いた。
急なことについていけなくなって逆にほのかは焦ってしまった。
――付き合う?好き?私のことが?
今、言うはずの答えは、イエスかノー。
「高1のころからずっと好きでした」
叶翔と目が合うと一瞬のうちに目を離してしまい、下を向いた。叶翔と初めて同じクラスになったのは今年からだったはずだ。そんなに前から好きだったんなんて……。りんのことを思い出した。2つの選択肢のうち、どれか一つを選べばいいという簡単な問題。
「ごめん、一旦保留にさせて。答えは絶対に出すから!」
「……そっか。わかった」
数秒、黙示的な沈黙が私達の空間を襲った。みんなのところに戻りたくて、私の足は微かに震えていた。
私が顔を上げようとすると叶翔はそれに気づいたのか、みんなのところに私を置いて戻っていった。
一人、ある空間に取り残されたように感じた。土砂崩れのように地面に倒れてしまった。
今でも心臓の音は止まることはなかった。何かに抱きつきたい、そう思った。
そして、今にもニヤけてしまいそうな顔を手で強く抑えた。最近、よく叶翔と目が合うことに気づいていた。でも、その時は私のことが好きだなんて気づいていなかった。バカすぎる。ほのかはそう思った。
どうしよう。体が震えていた。
やっとのことで立ち上がり、りんのところに戻った。中にはもちろん、叶翔もいたから気まずくなりながら目を合わせずに自分が座っていたところに座った。りんの部屋はいつも暗かった。気になったんだけどさ、どうしてりんの部屋は暗いの?んー。なんでだろ、落ち着くからかな、そう返してきた。
部屋が明るくなくて良かった。そう思った。暗い部屋に差し込む光をずっと私は見つめていた。




