来るはずだった転校生→なぎさが死んだ7
「ほのか、最近変だよね?」
そう聞かれたのは、朝学校に登校してきてすぐの話だった。
りんが、心配そうな顔で聞いてきた。変?私が?
「何言ってるの?りん……」
りんの言っていることが理解できず私は思わず聞いた。
りんが呆れたようにそっぽを向き、また私に視線を移した。
「いつもぼーとしてるし、帰りはいつも一人で帰っちゃうでしょ?」
反射的に自分の身体が動いた。
嘘だ。いつもぼーとしているなんて。
「それに、よく近ちゃんと話しているよね。何か悩み事でもあるん?」
そんなふうに思われていたなんて気づかなかった。確かにあの日以来、近ちゃんと話すことが多くなったのは事実だ。悩み事、とは少し違う感じがする。私はりんが気づくほど転校生、渚のことで頭がいっぱいだったなんて。自分でも衝撃的だった。
「そうすけも心配してるよ」
クラスメイトの男子の名前が急に出てきて驚いた。その人にとっさに目を向ける。そうすけは中学生から仲の良い一番の相談相手だ。悩みを抱えていた時に真っ先に伝えて、相談にのってくれた人だ。そうすけのことを見つめていると彼と目が合い、すぐに目を逸らしてしまった。
だが、よけなお世話だと思った。心配してくれるのはありがたいけど、今回、私が考えていることは私以外の人を巻き込ませたくないことだからだ。来るはずだった転校生のこと。そんなことを誰かが知ったら噂を広めるに違いない。それと、このことは私と近ちゃんだけの秘密にしたいと思った。
りんには申し訳ないけど、これだけは許してください。心の中でほのかはりんに謝った。
「ねえ、ほのか。今週の土曜日一緒に遊ばない?」
「え?」
「気分転換にもなるんじゃないかな!」
――気分転換。そんなにもみんなに私が疲れているように見えているのだろうか。まるで仕事で疲れた社会人じゃないか。「うん。いいよ」私は気づけばこの言葉を放っていた。
別に本当に遊びたかったわけじゃなかった。
今、集中したいことが見つかっていたからだ。
「ほのか!今日は一緒に帰ろ」
今日まですぐに帰ってしまっていた自分を心配していたのか、久しぶりにりんから誘ってきた。メンドクサイ。反射的にそう思った。でもここで断ることはできない。ほのかはりんと一緒に帰ることにした。
「ねえ、ほのか。遊ぶ時かなちゃんも明日誘ってもいい?」
「あー。叶翔?」
叶翔はりんの幼馴染の爽やか系男子。かなちゃんはりんしか使わないあだ名だ。りんと仲良くなってからほのかもよく叶翔と遊ぶようになった。そしてりんは叶翔のことが好きだ。
「お願い!叶翔も誘いたいの!」
りんの髪の毛が飛ぶように思いっきりこっちを向き、手をあわせて言った。
「いいに決まってるよ。好きなんでしょ?叶翔のこと」
りんは顔を赤くしながらも嬉しそうに、小さくそして大きく頷いた。
人を本気で好きになる。そんな気持ちになれることはすごいことだと思う。
りんは今好きな人に夢中になって暮らしている。いつか、叶翔を振り向かせてやる。と、思いながら。その強い思いはりんを見ていれば分かるものだった。
――渚は小学生六年生の時に転校してあの日までどのように暮らしていたのだろう。
この三年間、彼女はなにをしていたのだろう。
ふと、りんの姿を見て、思った。ほのかは気になってしょうがなかった。
知りたい。その一言で自分の体が大きく動かされた。自分が自分を操っているように。当たり前のことだが、いつもは思っていた通り体が動かなかったが、この時、本当にほのかはそのように感じた。
だが、そのことを知るためには渚との記憶を自分の頭から引っ張っていかないといけなかった。
もう一度あの時の警察官に会えるだろうか。
かっこよくてなんでも知っている警察官。その考え方は昔と変わっていなかった。
「渚の家族は今どこに住んでいますか?」
「渚はこれまでどのように暮らしていましたか?」




