来るはずだった〇〇が死んだ21
少し歩くと、いくつかの家が見えてきた。道路を渡り、近ちゃんについていった。
「ついたぞ。俺の家だ」
先生は、よく自分のことを先生、と呼ぶが、今は違っていた。学校とは無関係ということを言いたいのかわからなかったけど、今はありのままの自分を感じているような感じがした。おじゃましますと言うと、向こうから「はーい」と声がした。誰かと驚くと、先生のお母さんだと教えてくれた。優しそうなきれいな人だった。
「ほのかちゃんとそうすけくんよね。拓哉から話は聞いているよ。あがって」
拓哉という名前にも違和感を持ちながら、そう言って笑った彼女の顔はどこか渚に似ていた。親子だなと思った。
失礼しますと、言いながら足を踏み入れた。そして、部屋の奥へと案内された。そうすけは久しぶりだなと言いながら、あちらこちらを見渡していた。
短い廊下を歩き、その先にある畳に先生の奥さんが静かに座った。
心臓が止まるかと思った。
笑顔な渚の写真だった。
今でもあの素敵な顔で笑い、話しかけてきそうな渚の顔。無理だ。見れない⋯⋯。
気づけば目には涙が溜まっていた。私は声をあげて泣いた。隣でそうすけも目を赤くし、黙って俯いていた。渚がいなくなって悲しむのはきっと私だけじゃない。
彼女の友達、そして家族。そう思うと彼女はたくさんの人の心の中の一人と感じた。
「いつも元気な子だった。小学校ではいろいろと友達関係で悩んでいたことがあったらしい。けど、卒業式に出られなくて悲しんでた」
そう言って優しく微笑んでいた。どうしてそんな顔ができるのかはわからない。悲しくてしょうがないはずなのに。
「どうして、出られなかったんですか?」
「その時、親戚のことで予定があったから出ることができなかったのよ」
私は安心した。――私のせいではなかった。
確かに渚がいなかったとき、私は裏切られたかと思ったこともあった。あの時の小さな怒りがおさまったように丸くなった。先生のお母さんは続けた。
「でもねあの子、すごく悲しんでいた。卒業前に話したい子がいるって。絶対に話さないといけない子が」
「ほのか、って言ったかしら。二人なら知っているんじゃないかしら」
「この子がほのかだ、母さん」
先生が、私を指して言った。
先生の母さんが目を大きく見開いた。私は、息が詰まるように苦しく感じた。私に話したいこと⋯⋯。
「⋯⋯。そう、あなただったのね⋯⋯。よかった⋯⋯」
ちょっと待ってなさい、と言い、ゆっくりと立ち上がり、近くにある小さな棚に手をかけた。そして、白い封筒を手に取った。
「受け取ってちょうだい⋯⋯」
私は静かに白い封筒を受け取った。
「渚がほのかという子に書いていた手紙なの。本当は直接言いたかったらしいけど⋯⋯卒業式出られないで終わっちゃったから⋯⋯。だけど、その子に渡すまで読むなって言われていたからもちろん中は読んでないわ」
見たかったな、と彼女が呟いて笑った。私は最後まで聞き終えると、封筒と向き合った。封筒を開くと中に折られた紙が入っていた。一つ一つの動作をゆっくりしていく。紙を開くと、そこには子供のような可愛い、渚の字が綴られていた。
ほのかへ
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