来るはずだった渚が死んだ20
次の日の放課後、私はりんと別れたあと、近藤先生に言われた通り、職員室へ足を運んだ。叶翔との出来事をきっかけに、りんともう一度、話をし前よりも仲良くなった気がした。そして、今日まで少しずつ薄れていった友情関係を受け入れることができた。
叶翔とは気まずかったけど、りんの情報によると叶翔はまだ私のことが好きだという。そんな一方的な気持ちを受け入れつつも、りんとは仲直りをすることができたからもう思い残すことはなくなった。
そして、あと一つ。私は過去の過ちを償わなければいけない。職員室の前につくと、私の他に、誰かが立っていた。目を凝らしながらも近づくと、向こうから声が上がった。
「ほのかさんも来たんだね」
そうすけの声だった。
「どうしているの⋯⋯」
そうすけが口を開いた瞬間、職員室のドアが大きな音を立てて開き、近藤先生が出てきた。そして、行くか、と呟いた。
「親から許可はとっているな」
先生は確認するように聞いた。私とそうすけは頷いた。
「じゃあ、二人とも校門の前で待ってて」
私達は返事をすると、無言のまま、職員室をあとにした。校門まで歩いていると、そうすけが「ねえ」と声をかけてきた。私はそうすけに顔を移す。
「言ってなかったけど、俺も渚のこと知っているんだよね」
そうすけを見ると、口元は笑っていたが、目は笑っていなかった。そうすけが真剣な話をするときの表情だ。私はそうすけに小さく頷いた。
「ほのかさんは知らなかったと思うけど、同じ小学校だったんだよ、俺」
「ええ!そうだったの。知らなかった」
「まあ、そうだよな。一度も同じクラスになったことなかったし」
そうすけは、渚と幼馴染だったらしい。そのため、小学生の頃から近藤先生のことを知っていたという。確かに、クラスのみんなが近ちゃんと呼ぶようになったのも彼がきっかけだった気がする。
お母さん同士も仲が良く、夕飯をどこかのレストランで一緒に食べていたから、渚と話すことが多かった。ちなみに私と渚のことは全て近ちゃんから聞いていたらしい。そう思うとどこか申し訳なく感じた。
「でも、なんでそうすけまで、一緒に来ることになったの?」
「それは⋯⋯」
一度は下を向くそうすけだったが、何かを決意したようにほのかに顔を向けた。
「俺、近ちゃんから兄が妹の担任っていう可能性はゼロじゃないから、転校生が渚だってこと知ってたんだ。だから、亡くなったって聞いた時は驚いたよ。お見舞い。にいきたかったけど、俺男だし、なんか恥ずかしかったんだよ。あと、中学になってから、話す機会が少なくなっちゃったし。だから、この機会をってことでここにいる」
「そっか」
そうすけの横顔はどこか寂しそうだった。
「私、ずっと気になっていたことがあったの」
「何?」
そうすけと目が合う。
「渚のことなんだけど、小学生の卒業式の二日前にいなくなっちゃったんだけど、その時先生は転校って言ってた。どうしてそのタイミングでいなくなったのかを知りたいんだけど、知ってる?」
「知らないよ」
「もしかして、私のせいなのかな」
そうすけは答えず、自分は気まずいままに考えていると、後ろから、私達を呼ぶ声が聞こえた。振り返ると近藤先生だった。
「悪い。遅くなった」
大丈夫です。と言うと、少し歩くけどいいかと先生は言い、先生の後をついていくことになった。
「いやー。あの時は驚いたよ。ほのかが協力してくれてって言った時」
先生は面白そうに言った。そう言うと、隣からも小さく笑っている声が聞こえた。
「やめてください!」
数秒の笑いのあと、先生が口を開いた。
「何度か、ほのかが言っていたけど事故のことは全部本当なんだ。渚が月野に会いたがっていたのも本当。だが、あの事件は誰も予期することができなかったんだ」
先生がほのかと言っていたのに驚いたが、今は学校ではなくプライベートということを理解した。私は、先生は先生の話を聞いた。
あの日、渚が学校へ向かう途中、思わぬ出来事が起きた。道路を曲がった瞬間に車が、制限速度を大幅に超えて走行し、カーブを曲がりきれず対向車と正面衝突してしまった。その後即、病院に搬送。
そして、死亡が確認された。話を聞いているうちに、視野がぼやけてしまうほど、目には大量の涙が浮かんでいた。
「渚が、私に伝えたかったことはなんですか?どうしよう。私への復讐かもしれない。私にあって、今までのことをクラスの全員に話して……。私が、渚をずっと苦しめていた。だからっ⋯⋯」
「そんなことないよ!」
そうすけが遮るよに、そして怒っている顔で言った。
だが、私はそうすけを睨みつける。
「そんなことないなら、何?私ともう一度、一緒にいたい?そんなふざけた話があるわけない」
だが、間髪をいれるように、そうすけが、目の前で大きな音をたてて、手を合わせた。突然のことに、私は大きく目を瞑った。
「渚はそんな人じゃない」
「でも、私の存在によって渚は苦しんでいた!」
「月野。君はそう考えるんだな。別にいいじゃないか、そうすけ」
「でも――」
そうすけが困ったように先生を見上げる。私もそうすけに続いて、見上げた。だが、先生は笑っていた。その表情から何も読み取ることができなかった。
次回、渚がほのかに伝えたかったこととは―――!?




