来るはずだった転校生が死んだ2
近ちゃんは朝の会で、いつもより低い声で言った。
「今日から来るはずだった転校生が……亡くなりました」
教室に、言葉の居場所を失った沈黙が広がった。誰もその子を知らない。顔も声も、性格も。それなのに、失われたという事実だけが、最初からそこにあった。
――――――
ほのかは右斜め後ろの席をみる。くぼみ。
この席に転校生は座るはずだったのだろうか。
「彼女は事故……で」
先生が続けた。
「登校中に車に跳ねられた……と言われています」
その発言に妙に現実味があった。微かに近ちゃんの唇が震えていた。
死んだ。
事故。
登校中の、
転校生。
その状況を頭に思い浮かべた。事故現場を目にしたことがないからうまく想像することができなかった。ほのかはあまり、「死」は身近な存在ではなかった。だが、「死」を改めてこの学校に来るはずだった転校生。と考えると震えた。
先生が言葉を放ち終わった数秒後教室がざわめきだした。
「来るはずだった転校生が死んだ?」
「事故こわー」
「うちだったら絶対ありえないし」
この世から消えてしまった転校生は会わないまま、顔の知らないこの学校に9月からくる転校生として始まり、なんの変化もないまま終わってしまった。
私はふとその子の親や自分自身はどのように感じているんだろう。と考えたことがいくつかあった。親は悲しむに違いない。自分の親に当てはめると心臓が締め付けられるように怖くなった。これ以上考えるのはやめよう。私はそう決意した。
その子(転入生)は病気だったとか、自殺とかあらゆる噂が立ち始めるころにはほのかは転校生のことを忘れかけていた。
「月野!ちょっといいかな」
トイレから出て教室に行く途中に近ちゃんから話しかけられた。
「はい!なんでしょう。先生」
もうすぐ授業が始まるっていうのに、急にどうしたんだろう。
「来るはずだった転入生のこのなんだが、少し話いいか?」
ドクンと心臓が跳ね上がった。
私になにがわかるっていうんだろう。気づいたら私は次の授業のことなんか忘れ、先生の後をついていた。
転入生?顔も知らない私に話?
先生に突然呼ばれたほのか。実は転校生と妙な共通点があり……!?




