来るはずだった親友(嘘)が死んだ18
「私は渚の親友⋯⋯じゃない」
苦しんでいた、というのは私のせいだった?
そんな考えが横切ったが、すぐに消されてしまった。それでも心臓の音が止まらない。
「先生は⋯⋯何者?」
ドラマでありそうなセリフはこのような気持ちで使うんだと思った。
「近藤拓哉――渚の兄だ」
ありえないほどに目を大きく見開いた。とんでもない人に私の事実を知られてしまった。しかもそれが渚をいじめていた張本人の先生だったなんて。
「君なら渚のことを知っていると思っていたのに⋯⋯がっかりだ」
冷たい言葉が胸に刺さった。
渚は肌が白く、一言で言えば高嶺の華だった。たが、口数は少なかったからなのか、彼女の近くに人が集まることはなかった。そこで私と友達の二人が考えたことは渚を仲間に入れてあげることだった。声をかけると、渚は驚いたような顔をして私達を見上げた。一緒にいると渚は頭が良くない、スポーツが苦手などの弱点などを知ることができた。
「渚って顔しか良くないよね」
「それ以外は致命的って感じ」
ケラケラと二人が渚に聞こえないように笑った。
「ほのかもそう思うよね」
「まあね。私達ちょー優しいよね」
これをきっかけに私達は偉くて渚は私達とは違うような目で周りは見てくるようになった。どうして渚といるのって聞かれるほどだった。もちろん私達も何もできない渚を見下していた。だが、完全に嫌っていたわけではなかった。周りからいじめだと見られてようと私は本気にしていなかった。「親友だよね」と言ったときの渚のぎこちない顔。本当は知っていた。
渚は私達のせいで苦しんでいることを。
「渚は、私のせいで死んだんですか?」
もしそうだったら私は完全に彼女を直接ではなく彼女が彼女を殺すように仕向けたのと同じだ。
「それは、分からないんだ。だが、渚が月野に会いたがっていのは事実だ」
「私に?」
先生は小さく頷いた。
「先生。私も――私も渚に会いたいっ」
小さい声で呟くように言った。だが、二人だけの空間では聞こえるくらいの大きさになっていた。渚に会いたい。渚は私にあって何を伝えたかったんだろう。あの一ヶ月前くらいの話。あの日渚はこの学校に来ようとした。――私に会うために。だが、彼女は会う前にこの世から姿を消してしまった。
本当は渚に謝りたかったんだ。親に反抗もしたことがない私は、渚をからかっていたもののなにか言葉では言えない何かが心の中をさまよっていた。夜になると不安でしょうがなくなる。だが、次の日にはその気持は跡形なく消え、そしてまたやってくる。私は悲しくてしょうがなかったんだ。
「本当は苦しかった」
「渚に、会いたい」
今の状態だったらきっと先生は私の言うことを聞いてくれないだろう。そんなことを思っていたが先生の口から返ってきたものは「いいよ」という短い言葉だった。
「家に来るといい」
「はい」
近藤先生はドアの方向に歩いていった。ドアの前で私に背を向けて止まった。「この時間は君が保健室に行っていることにしている。渚に会いたかったら明日の放課後、職員室前で待ってなさい」
そう言い終えると、近藤先生は歩いていった。
保健室って、先生がしていいこととは思えないが、さっきまで固く固まっていた唇を緩ませた。明日職員室に行こう。そう覚悟した。




