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来るはずだった親友が死んだ16

 今日しかない。いや、今日じゃないとだめなんだ。必死に隠している何かが、家に帰ったら爆発するように後悔が押し寄せてくる。


「叶翔。少し話しがあるんだけどいい?」


「うん。俺も話したいことがありすぎて⋯⋯その⋯⋯」


 私は叶翔に向かって微笑んで、大丈夫だよと言った。

 息を一つ吸う。


「この関係を続けるのはもう無理だと思う。やめたい⋯⋯です」


「は」


 叶翔が大きく目を開く。そして、焦るような仕草をした。


「これからもっと話しかけるし、もっと、その⋯⋯。だから、そんなこと言わないでよ」


 私は叶翔の顔を見れず首を振る。罪悪感を感じた。


「ごめん。だから、そういうことだから」


「好きな人でもできたの?」


 叶翔が聞いてきた。思った以上に低い声だった。

 また首を振る。


「最近、先生とよく話しているよね。何かあったら俺に――」


「関係ない!」


 強く、叫んでしまった。すぐに謝る。


「最近なんか変だと思った。授業が終わったら顔色変えるように教室を出ていくし、俺のことで悩んでいたのかもしれないけど、何かあるよね?そんな必死になる理由が」


 なんで分かるんだろう。なんで、分かる相手が叶翔なんだろう。

 罪悪感のあとには、怒りが押し寄せてくるような不思議なあつさを感じた。


「叶翔が知って何になるの?」


「やっぱり当たってるじゃん。本当にどうしたの?」


 叶翔が私の顔を覗き込むが、私は叶翔と絶対に合わせないように下を見つめる。


「ごめん、言えない」


 数秒の沈黙が流れ、みんなは、移動教室のため、教室から出ていた。

 静かな教室で足が震え、彼と今二人でいることに恐怖と心臓の音が強く響いた。


「今、何をしているかわからないけど、それに意味はある?」


――意味。


「今のことにもっと集中したほうがいいと思う」


 叶翔の話に違和感を感じる。どうして、意味、集中なんて偉そうに話せるんだろう。


「今のやっていることは全部無駄だよ」


 違和感の正体がわかった。叶翔は全部知っている――?全部、全て。


「ねえ、やっぱり叶翔知っているよね?」


 叶翔は口を尖らせた。


「なんも悪くねえだろ」


 なんで、知っているの。

 確かに今のやっていることは、無駄かもしれない。毎回近ちゃんのところに行ってはなぎさのことを聞いたり、殺人だったらその理由は?動機は?なんて話しているけど、証拠もない。ただ、真実というはるか遠いところに手なんて届かないのに、手を伸ばして、全然関係ないものとぶつかりあい、向き合うなんてやっているように見えて、手の届くところには限りがある。わかっている。そんなことわかっているんだ。


「でもね、叶翔。今無駄って言われてもいつか無駄じゃないって言えるようにしたい」

 ついにというように叶翔は黙り込んだ。


「本当は先生とほのかさんが話しているところ聞いてたんだよね」


 だから、か。


「俺はまだ諦めきれないかもだけど、ほのかさんの言う通りにするよ」

 

 先に行くね、と言い、背を向けて歩いてしまった。その場に数分立ち尽くした。

 もうこれで後悔することはない。と思っていたのにどうしてだろう。まだ、このもやもやは消されることはなかった。「今のやっていることは全部無駄だよ」叶翔の声が脳裏をかすめた。これが理由だ。

 確かに今やっていることは無駄?

 じゃあ、どうして。どうして。私はやっているの?届かない知ることはない事実は私はずっとあの日から追っている。


 誰もいない、電気も消されてしまった教室から一人、地球のそこまで落下中。

 

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