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来るはずだった転校生が死んだ1

「いつか会いに行くよ」

 誰の声だったのか、もうはっきりしない。あの頃の静かな学校だった気がする。賑やかな教室とだったが、私とあの子との空間だけが静まり返っていた。名前を呼ばれた温度だけが、記憶に残っていた。


 私はまだ思い出せていない。それが誰なのか、どういう関係だったのか――。

――!?*#


――――――

 今日の朝はやけに静かだった。二学期が始まり9月は終わりを迎えようとしていた。月野ほのかはふと黒板を見た。みんなで書いた絵や文字が昨日のように綺麗に残っていた。「ようこそ」と私は綴られていた文字を読み呟いた。


 誰かのための短いメッセージ。そう思うと悪い気はしなかった。その子はこれをみたらどう感じるだろう。羨ましい、そう思い席に着いた。だが、突然、不思議な感覚に襲われた。昨日先生は、転校生の名前を書いておく。そう言ったはずだ。だが黒板のどこあたりをみても名前らしきものは見つからなかった「ようこそ」。きっと自分に聞き間違いかもしれない、そもそも先生が名前を書き忘れただけじゃないかと思った。


 改めてクラス全体を見渡すと、思っていた通り、クラスの何人かが転入生の席を探していた。私もみんなと一緒になって席を探したが――見つからなかった。


 そのかわり、私の右斜め後ろの席にくぼみ(?)があった。机がおかれていなかったのだ。

「転入生、来ないのかな?」私は呟いた。「うん」それを聞いたクラスメイトが答えた。


「ほのか、おはよー」


 艶のある黒髪は腰のあたりまで伸びていて、結ばれることはほとんどなく、授業中も休み時間も、さらりと下ろされた親友のりのん。呼び名はりん。


「転校生の話してた?」


 あくびを小さくし、眠たそうな目で私を見た。


「うん。来るはずなんだけど机がなくて」


「あーね。先生から話があるらしいよ」


 そこで私たちは黒板のこともありつつ、一旦、転校生のことを忘れることにした。きっと先生が説明してくれるに違いない。

 


 ――私たちはこれから衝撃的な事実を知ることになる。


 私たちのクラスの担任でかつ保体の先生。いつも元気は誰にも負けない、マッチョな男性の近ちゃん通称、近〇先生はいつもよりどんよりとした雰囲気で教室に入ってきた。それにつられ教室の空気が重くなるのを感じる。

 

 近ちゃんは朝の会で、いつもより低い声で言った。


「今日から来るはずだった転校生が……亡くなりました」


 教室に、言葉の居場所を失った沈黙が広がった。誰もその子を知らない。顔も声も、性格も。それなのに、失われたという事実だけが、最初からそこにあった。


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