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病か、あるいは。

作者: 小雨川蛙
掲載日:2025/07/10

「先生。またこの患者です」


 担架で病院に運ばれてきた患者を診て医師はため息をつく。


「またか」

「はい。それも重傷です」

「見るだけ見るか」


 そう言って医師は患者を見つめた。

 見た所、どこに異常はない。


「ふむ……」


 次に近づいて声をかける。

 返事は返ってこない。


「聞こえるか?」


 さらに手を触れる。

 反応はない。


 そして呟く。


「もうダメだな、これは」

「ダメですか?」

「あぁ、どうしようもない」

「ではどうします?」


 問いかけに医師は答えた。


「普段と同じだ。放っておけ」

「分かりました」


 医師は大きくため息をついて椅子に座る。

 またこの病だ。

 毎日のように病が蔓延する。

 本当にうんざりしてしまう。


「ふざけた病だ」


 医師は呟く。


 この病は現代になり急速に流行し始めた。

 長い歴史の中で一度も見られなかった病だ。


 いや、当然か。

 そもそも『このような状態』になることを人間はおろか『生命』は想定していないのだ。


 医師はため息をつきながらこの病の原因を思い出す。


『つまり、これは実に合理的な進化の形なのです』


 偉そうな先生はそう語っていた。


『人間は強くなり過ぎました。弱者であっても銃を握れば力の関係はあっさりと変わる。しかし、これでは強い遺伝子が残るというルールを果たせない』


 故にこそ人類は『進化』したのだ。

 より強い種を遺すために、新たな生態を獲得したのだ。

 つまり、自らが劣っていると判断した時から『生存を放棄する』ように。


「馬鹿らしい。そんな進化あってたまるか」


 故に医師は今日もこの『病』と向き合う。

 これを『進化』だと認めないために。

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― 新着の感想 ―
私もこの病を患っています。 でもまだ少しだけ抵抗している分、軽症かも?
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