九話 梨里の気持ち
九話です!
楽しんでいただけたら幸いです。
【転移直後からの梨里視点】
・・・私は友達に起こされた。
「梨里〜、ほら起きて!」
「ん・・・。・・・ここは?」
友達の・・・誰だっけ?一応友達として振る舞ってはいるが、透をいじめるグループの一人だし、苦手を通り越して嫌いなんだよね・・・。
「それより、今から透を殺すんだって♪」
「・・・え!?」
彼女達いじめグループは、男子の不良たちとともに殺そうとしてるらしい。・・・なんとかしないと!!
「だ、駄目だって!」
「・・・あんた、まさか透のこと・・・」
・・・しまった。透は私までいじめの被害が来ないようにしてるのに、勘ぐらせることを・・・。いや、透が今まで頑張ってきたのに私が頑張らないでどうする!
と言っても、このままじゃまずいことは確定だし、ごめん、透!
「起きてからのほうが絶望感増しそうでしょう?」
引きつりそうなのを我慢して笑いながら言った。
――数分後、透のポケットにたまたま持ってたペンと紙で事情を説明した紙を入れた。・・・我ながら語彙力ないけど、透ならわかってくれるはず。・・・だよね?
私は《道化師》というスキルで人を信じさせるのが簡単になるらしい。でも、親しい人にはあまり効かないらしいけど、本気で親しいのは透ぐらいだし、問題はなかった。
――透が起きて、逃げるときに、クラスメイトにバレないようにウインクした。透が見た気がしたが、どちらにしても紙で気づいてくれるだろう。クラスメイト達が、
「よし、あいつを追いかけるか」
「早く殺しとこ〜」
・・・わかってはいたけど物騒すぎない?
――そして、透と二人になったとき違和感が生じた。話し方だ。
「ま、俺的には早く街に行きたいからな」
「俺がか?まぁ、なんとかしてみるかぁ」
「足元気をつけろよ、梨里」
と頼もしい発言をしているが、転移する前は、気が弱く消極的で、自分に精一杯だったからだ。
しかし、確証に変わったのはドラゴンが来たときだ。いつもなら必ず逃げる選択肢をする透が、私だけ守って向かっていった。音がしなくなって、数分経っても戻ってこず、泣いてしまっていた。
「・・・私のせいで、透が・・・、う・・・ぅ」
その後すぐ、結界がなくなり透がいて安心したが、私が最初に目が行ったのは、透の後ろにある大きなドラゴンの死体でもなく、血だらけの手だった。透は傷を直していたが、動きでわかる。回復しても痛みは残ることに。
まったく、私の気持ちを知らずに無理をして・・・。
――その後、透は、
「俺がいなくなってもいいように」
しかし、逆を返せば、私が一人でも生きていけるようになったら、離れていくかもしれない。
とのことで、私にゴブリン狩りをさせた。倒しているうちにふと透を横目で見ると、本当に微量の魔力で血だらけだった手を回復していた。きっと、傷の跡の痛みを和らげているのだろう。
その後も透は無理をし続けていた。しかし、決定的だったのは、透が《飛翔》というスキルで空から降りてきたとき、足の音だ。かなりの骨が折れる音が聞こえたが、
「・・・あ〜、関節に空気が溜まってて、それで鳴っただけ」
といっていたが、首元には大量の汗が浮かんでいた。
――街に行くとき、ついたとき、ずっと回復魔法を使っているが、魔力を使うのにかなり疲労するのに、ずっととなるといつ倒れてもおかしくない。わたしも〈魔法〉のスキルを持っているからわかる。
透はベットに入って、かなりの量の魔力を使っていたため、我慢できなくて聞いた。
「透、無理をしてるでしょ?」
【透視点】
・・・まさか、バレていたとは。しかし、
「なんで気づいたんだ?」
「回復魔法の魔力がただ漏れなのよ」
・・・まじかい。
「あと、無理して私を不安にさせないように振る舞って、まったく・・・」
・・・そこまでバレてるのかよ。
「・・・すまん」
一応謝罪はしておく。これで一件落着と思っていると、
「・・・で?行くあてはあるの?」
核心つくのうますぎないか?きっと《道化師》のスキルなんだろうが。
「・・・さぁな」
俺が誤魔化しても、詰め寄ってくる。
そして俺に一言。
「――勝手にいなくなったら許さないから」
・・・俺が一人でこの街から出ようとしてるのも気づいてるのか。・・・もう、いいか。
「俺・・・、――いや、なんでもない。一人でいかないから許してくれ」
・・・言いかけたのをぐっと堪え、そういうのが精一杯だった。
まさか、梨里がこんなに観察してるとは・・・。羨ましいですね、透(妬み)。
さて、今回は殆ど梨里目線でしたがどうでしょう。自分的には満足は・・・、していないですね、はい(現実逃避)。
透は一人でいなくならないと約束し、これからこの街で何があるのか!?
よければ次も見てください!