表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】嫌われ悪女の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉  作者: 三沢ケイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/56

第五章 王女の来訪(13)

   ◇ ◇ ◇



 リーゼロッテは窓の外を眺める。

 夕焼けに染まる空には、鳥が数羽、飛んでいた。


「リーゼロッテ様。冷えるのでこちらを」


 アイリスが、肩にショールを掛けてくれた。


「ありがとう」


 リーゼロッテは微笑んでお礼を言うと、また窓の外を眺める。


(遅いな)


 イラリアの来訪から既に三カ月が経った。


 今、テオドールは数カ月に一度ある謁見で王都に行っている。そろそろ戻って来る頃のはずなのに、一向にその気配がない。いつもより遅い帰りに、何かあったのかと不安になる。


 気持ちを紛らわそうと獣舎に向かうと、リーゼロッテの来訪に気づいたヒッポグリフのシェリーが尻尾を振った。


「シェリー、いい子にしていた?」


 このヒッポグリフは、あのドラゴン騒ぎがあった日にリーゼロッテを乗せてくれた個体だ。もう一匹いたヒッポグリフはつい先日無事にパートナーが決まったがシェリーはリーゼロッテに懐いて離れようとしなかったので、リーゼロッテがパートナーとなり『シェリー』と名付けたのだ。


 テオドールによると、幻獣騎士でもないのにパートナーの幻獣がいるのはリーゼロッテぐらいだという。


「旦那さまったら、どうしたのかしら?」


 リーゼロッテはシェリーに話しかける。


「旦那様に早く会いたいな」


 唇を尖らせて愚痴を漏らすと、「また可愛いことを」と苦笑交じりの声がした。びっくりして振り向くと、テオドールが獣舎の入り口に立っている。


「旦那様!」


 リーゼロッテは駆け寄る。テオドールが両腕を広げたので、その胸に飛び込んだ。テオドールはリーゼロッテを受け止めると、優しく抱きしめる。


「寂しかった?」

「寂しかったです」


 正直に答えると、テオドールはふわっと笑う。


「随分と遅かったのですね」

「ああ。少し寄りたい場所があってな」

「寄りたい場所?」


 リーゼロッテは小首を傾げる。


「オーバン公爵家に行ってきた」

「オーバン公爵家に?」


 リーゼロッテは驚いて聞き返す。オーバン公爵家はリーゼロッテの実家だ。


「どうしてわたくしの実家に?」


 何か気に障ることをしてしまっただろうかと不安になる。


「リーゼロッテ。結婚しないか?」

「はい?」


 リーゼロッテは呆気にとられる。結婚しないかも何も、テオドールとリーゼロッテは夫婦だ。


「以前、もう一度最初からやり直したいと伝えただろう? 結婚式を挙げないか? リーゼロッテの家族も呼んで」


 想像すらしていなかった提案に、リーゼロッテは目を見開く。まさかそんな提案をされるとは思っていなかったから。


「旦那様、ありがとうございます」


 テオドールとの結婚は結婚式をしていないからリーゼロッテは花嫁衣裳を着ていない。

 いつか結婚するときは純白のドレスへの憧れを密かに持っていたのでテオドールの心遣いが何よりも嬉しかった。


(わたくしは旦那様と結婚できて、幸せね)


 誤解して、すれ違って、遠回りばかりしたけれど、彼とならそんな時間も「こんなことあったね」と振り返って笑う日が来るだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ