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ロイド・異変

 ・ロイド


「これでよし、っと」


 集めた薪をまとめ終えて立ち上がり、マリーはどうだと思ってそっちを見ると向こうももう終わっていたようで俺のことを見てた。


「なんか、前よりもだいぶ楽になったよなー」

「んー? あー、まあそうだな。体を鍛えるようになったし、この程度ならそんなに重くないからな」


 元々この程度じゃそんなに重くねえってのもあるけど、今は身体強化を使ってるからな。

 ディアスのやつに、弱くて良いから普段から身体強化を使ってろって言われてっから使ってるけど、マジで便利だ。ただ、結構疲れるんだよな。体がじゃなくて、あー……頭が?

 身体強化を使ってる間ずっと意識してないとすぐに途切れるから、なんか作業しててもずっとそっちに気持ちを割かなきゃならないんだよ。だから体としては楽なんだけど、頭が疲れる。まあ、楽なことに変わりはねえけどな。強化がない時は森を歩くだけで疲れてたし。薪を拾った後の帰る時なんて、もう考えたくもねえ。


「前は薪を背負いながら拾ってたから疲れたけど、今はそんなに……っつーか全然疲れねえ。今日の分だってもう終わっちまったしよ」

「そーだなー。しかも、今日の分って言っても、これ明日の分も入ってるんだからなー」


 しかも、回収できる量まで増えた。まあ疲れねえんだから当然っちゃ当然だな。


「ほんと、ディアス様様だぜ!」


 あいつ、ゼッテーなんか俺たちに隠してっけど、便利になるんだってんならそれでいい。どうせ、何があったとしても、何が変わったとしても、あいつはあいつなんだしな。


「それで、この後はどうする? 薪拾いは終わったし、野草でも採るか?」

「野草かー。そっちはうちはチビどもがやるんだよなー」


 ディアスんところはディアスと母ちゃんの二人視界ねえけど、うちは俺の他に兄弟が三人いる。上に一人と、下に二人。まだ薪を拾ったりして満足に森を行き来するだけの体力がねえしたの二人は、主に野草を集めることになってる。上の一人はもう外に出てっから、薪を集めるのは俺の仕事だ。

 ただ、今までは大変だったその仕事も、今日はもう終わっちまったし、チビ達の分の仕事を片付けて休みを作ってやるってのもありっちゃありか?


「うちもそうだけど、ほら、ディアスんちはディアス本人が薪拾いと合わせてやってんじゃんか」

「あー。そうすっと、あいつの分を採っといてやるか。身体強化教えてもらってるわけだし、これくらいはやってやらねえとだろ」


 そうだった。あいつんちは母ちゃんと二人でやってるから、足りねえもんがあることが多い。悪口を言うつもりはねえけど、あいつの母ちゃんはあんまし動けねえみたいだから稼ぎもうちなんかより少ねえし、いろいろ大変だと思う。

 今日みたいに森に来られない日が出てくると尚更大変だろうし、身体強化を教えてもらってるお礼に、あいつの分の作業をしてやるのはアリかもな。


「身体強化じゃなくて肉体強化な。あいつ、その辺めんどくさいくらいにきっちりしてるぞ」

「そうだったな。……つっても、俺からしたらどっちがどうとかわっかんねえんだけどな」

「それ言ったらあたしもわかんねえよ。わかるのは本人くらいなもんだろ」


 肉体強化も身体強化も、どっちも変わんねえと思う。けど、あいつなりに思い入れがあるみてえだし、教えてもらってんだから素直に言うことは聞く……つもりでいる。まあ今みたいに間違えっ時はあるけど。


「まあ、とりあえずこの後は草摘みに……」

「? どうし——」

「しっ。あっち。マリゴルンがいる」


 マリーが俺の口を塞いで黙らせてきたが、指を差した方を見るとマジでマリゴルンがいた。


 ……見た感じ俺らには気づいてねえみてえだし、この位置からなら誘い出して仕留めることはできる、はずだ。


「どうする?」

「どうするって言っても、ディアスはいないぞ」

「そうだけど、元々俺らだけで狩る予定だったじゃんか。ちょうど目の前にはぐれがいるんだし、できるだろ。俺らだけで狩ることができれば、ディアスだって喜んでくれるだろ」

「んー、でもできるか? 一応相手は魔物だぞ?」

「できるできる。俺ら肉体強化が使えるんだぜ? あれくらい余裕だっての。それに、ここなら危なくなっても町に逃げられる位置だろ?」


 ディアスだって俺たちなら一人だけでも倒すことはできるって言ってたし、できるだろ。

 一応今回は一人じゃなくて二人で協力すれば、大丈夫だ。なんせ、いつもそれでやってんだからな。


「……そうだな。よし、やるか!」

「おっしゃ! これで今日も肉が食えるぜ!」

「バカ! もっと静かに喋れ!」


 おっとまずい。これで俺が原因で逃げられたら、またマリーにバカにされることになるところだった。


 そうして俺たちはいつも通り、肉体強化を行い、マリゴルンを誘き寄せて、狩ることに成功した。


「ほらみろ! 俺たちだけでも狩れるんだって!」


 一人じゃなかったけど、俺たちだってやればできるんだ。わかったかディアス! ……って、あいつ見てねえんだから分かんねえか。まあいいや、後で自慢してやろう。


「だな。後はこれを解体して……って、今日はディアスいねえけど、全部持ってけるか?」

「あー、強化すればできるけど……」

「流石に人前でやったら怒られるだろ」

「だよなぁ」


 流石にこれだけの量を二人で担いで帰ったら目えつけられるのは俺でもわかる。

 近所の人に見つかるくらいなら問題ねえけど、ヤバい奴らに目をつけられたら面倒なことになる。それだけは避けねえと——


「おーおー。まじでいやがるじゃねえの」

「「っ!?」」


 解体したマリゴルンをどうやって運ぶのか悩んでると、背後から声が聞こえてきた。

 咄嗟に振り返ると、同じようにマリーも驚いた様子で振り返ってた。


「だから言ってんだろ。こいつらが狩りに行くのを尾けてけば、罠にかかった肉が手に入るって」

「つっても、罠なんてどこにあるんだ?」

「知らね。もう片付けたんじゃねえの? 部外者に見られたら自分達の損になるし、変に放置して知らねえ奴がかかっても面倒だろ」

「まあそうか」


 なんだこいつら……。街のやつ、だよな? 人間……じゃねえな。魔族か。なんか耳の形がおかしいのと尻尾がついてる。

 でも、なんでこんなところにいるんだ? いや、っていうか見られた、のか?


「でも三人組っつー話じゃなかったか?」

「どっかに隠れてるか、他の罠でも様子見に行ったんじゃね?」

「あー、それだとちっと面倒だな」


 三人? ……それって、ディアスのことか? なんで今日この場所に来てねえあいつのことを知ってんだ?

 いや、もしかして、前から目をつけられてたってことか? んで、今日は俺たちのことをつけてきた?

 なんのためにって言ったら……多分、肉、だよな。


「お、お前らなんなんだよ!」


 追い払うために叫んだってのに、自分で思った通りの声が出ない。なんでだ。なんでこんな声が震えてんだよ。


「あ? 雑魚がイキがってんじゃねえよ」

「俺達はお前らの狩った肉を貰いにきたんだよ」

「貰いにっつっても、強制的にだけどなー」


 やっぱりこいつらの狙いは肉か! まあそうだろうとは思ったけど、やるわけねえだろうが!


「これは俺達が狩ったんだぞ! やるわけねえだろ!」

「知ってるっての」


 そう言いながら魔族の男は俺たちの方に近寄って——


「がっ——」


 なんだ? 何が起こった? 痛い。なんでこんな……殴られたのか?


「で? それがどうした。俺達はくださいなんて言ってねえんだよ。力尽くで奪ってくから泣いて悔しがれって言ってんだ。わかったかよクソガキ」

「ロイド!」


 マリーの叫びが聞こえるけど、それに答えられないくらい腹が痛い。なんだこれ。殴られたのか? いつの間に?


「そっちのガキも、何睨んでんだ? ああ?」

「って、こいつ女か? 見えねー。男のガキ三人組かと思ってたぜ」

「お、ならそいつもらっていいか? せっかくの女なんだし使わせてもらうわ」


 は? 何言ってんだこいつら。肉が欲しいんだろ。だったらそれだけ持ってって消えろよ。ふざけてんじゃねえぞ。


「お前、こんなガキ相手にヤルのかよ」

「男とヤルよりは健全だろう——ガッ!?」


 ふざけんなよ、てめえら。お前らなんて、俺がぶっ飛ばしてやる。俺は肉体強化が使えるんだぞ。普通のガキだと思ってると、痛い目見ることになるってのを教えてやるよ。


「てめえらなんかにやられっぱなしになるわけねえだろ!」

「クソガキが……」

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