あらすじ
某大賞に出したかったけど、間に合わなかったやつ6。
「お姫様」
十人並みの人生において発せられることのない単語が飛び交う。
お酒は飲めないが、ペットボトルのお水ひとつにお礼としてサービスがなされる。
「お水を頂戴します。お姫様」
ややアオリ、奥の瞳が少し見えるアングルに定め、のど仏をこくこくと揺らす。
それにきゃあと嬌声が上がる。ここでは一挙手一投足すべてを考えなければならない。
お菓子が差し出されれば、口をあーと開けて甘え、移してもらう。
「ありがとう、お姉ちゃん」
にこりと微笑む。食してるそれよりもずっと理想のあまあまな空間を作り上げる。
対等に接することを望むお嬢様もいる。でも決して立場は同じではないことを心がける。
「うん、君の言うことは正しいよ。でもね……僕らみたいな不完全な人間には……」
わかるよ。と肯定しつつ、下から根拠を練り上げ否定もどきをする。
凋落した少女、結城暁が通うことになった『月光学園』には、あるシステムがあった。
一般の女子生徒は、華麗に、軽やかに、優雅に振る舞わなければならない。
令嬢が、淑女になるために開かれた門。
一方で男子は、華麗に、軽やかに、優雅に振る舞わなければならない。
女子と何が違うのか。
同音異義語である。振る舞うの意味が異なる。
男子生徒は、もてなさなければならない。
深窓の令嬢から、熟れて実をこぼしあふれさせた淑女までを。
そこでは一般教養は関係ない。とうに済ませているのが当然である。
身に付けなければならないのは、高貴な社交性。そういうことになっている。
それをそのままに、創立から百年以上の歴史を持つ。
そのシステムはとてもみだらなもの。
わかりやすい言い方をすれば、ホストクラブのホストだ。
男子は常に『王子様』でいなければならず、衣食住全てを勝ち取らなければならない。
もてなす相手は生徒に限らない。
生徒の母親、教師、OG。
校内にいるすべての女性が対象となる。必要かどうかはともかく。
成績は投票方式であり、投票は金額で表される。
暁はその学園のトップ『月華美君』になり、返り咲こうとする。
始まりの日から推してくれる気の難しいエース、風音とともに。
これだけ、書かないかもしれません。