転生したらファミチキだった件

作者：てんてん

ある日、太郎は突然、ファミチキに転生してしまった。そう、彼は今まさに、ファミリーマートの店頭で熱々のフライドチキンとして陳列されているのだ。太郎はその珍妙な状況に驚愕し、自分がどうしてこうなったのか理解できなかった。

「あの世に行ったら、人生でやり残したことがあるって言ったら、まさかファミチキに転生させられるなんて！」と太郎は悔しがった。しかし、変わった状況にもかかわらず、彼は懸命に新たな人生を楽しもうと決意した。

ある日、ファミリーマートにやってきた若者たちが、太郎（ファミチキ）を見つけて話し始めた。

「ねぇ、これ美味しそうだよね？」「うん、ファミチキだもん、当然だよ！」

彼らの会話に、太郎はなんだか嬉しくなってしまった。自分が人気者になったことに喜びを感じ、人々が自分を選んでくれることを願った。

次第に、太郎は他のファミチキたちとも仲良くなり、彼らと共に店頭で楽しく過ごす日々を送るようになった。そして、彼はその中で自分にしかできないことを見つけた。

太郎は、人間時代に培った知識と経験を活かし、他のファミチキたちに様々なアドバイスをしていた。彼は一風変わったファミチキとして、店頭で注目を浴びる存在となり、次第にファンも増えていった。

しかし、ある日突然、太郎はある女性に手に取られた。彼女は太郎をレジで支払いを済ませ、持ち帰ろうとしていた。

太郎は慌てて考えた。「これじゃあ、僕は食べられてしまう！」と焦りを感じながらも、同時に彼は自分が人々に喜びをもたらす存在であることを理解した。

彼はその女性の顔を見上げて、最後の力を振り絞って声をかけた。

「おいしく食べてくださいね！」

女性は太郎の声を聞くことはできなかったが、なぜかそのファミチキに特別な思いが湧いてきた。彼女は太郎を大切そうに持ち帰り、家族と共に美味しくいただいた。

太郎は食べられることによって、女性とその家族に幸せなひと時を提供できた。彼は人々に喜びをもたらすファミチキとして、その役割を果たすことができた。

そして、太郎はファミチキとしての人生に満足し、次の世界へと旅立った。彼はかつての人間としての自分を思い出しながら、新たな世界での冒険を楽しみにしていた。

太郎の物語は、食べられることで幸せな結末を迎えた。彼はファミチキとしての人生を謳歌し、最後の瞬間まで誇りを持って生き抜いたのだ。

そして、ファミリーマートの店頭では、新たなファミチキたちが太郎の話を聞き、彼のように人々に喜びをもたらす存在になることを目指していた。太郎の物語は、ファミチキたちに希望と勇気を与える、不朽の伝説となったのである。