post2❲浮遊島ガスカの異変❳
毎回、前置きが長くてすいません。
でも設定はちゃんとしたいので、もうしばらくお待ちください。
龍地球には五つの大陸が存在する。
元々巨大なる龍だった屍が大地となり、五つに別れたそれぞれの大地が大陸となった。
龍の右翼と伝わる大陸がアランミューア大陸と呼ばれ、龍の左翼大陸と称される河川と湖の大陸の名を、古の水の大地と呼ばれ、龍の長尾であった大陸は、黒の大陸クーフェと恐れ忌み嫌われている。
残る二つの大陸の一つ、龍の胴体だった海底大陸アトラ・ドゥ。アトラ・ドゥはその名の通り海底に沈み、今では海系亜人が支配する大陸である。
最後の一つは龍の頭だと言われた大陸、天空大陸スヴァーリである。
地上五千メートルに浮かぶ巨大大陸は、人間だけでなく、高等耳長亜人や鳥亜人、天空人と言った様々な亜人種が生息している。ごく稀に天使の存在も確認されている。
スヴァーリが浮遊している理由には様々な諸説があり、一番有力な説は、龍の頭には知識と魔力が残っており、その為に浮遊していると伝えられているが、母なる地球より転移した者達からすれば、そんなファンタスティックな現象等ないと否定している。だが、現に浮遊大陸は存在し、ファンタスティックな現象は現実にあるのだ。
また、天空大陸スヴァーリの周辺には数十の浮遊島が浮かび、浮遊し続ける大陸と数十の島の謎が、いつか解明される日を龍地球に住む住民は心待ちにしている。
その数十の島の一つガスカに僕、アースフィールとエアロウィンが降り立つ。
周りを見渡せば大草原の中、十塔程の風車が吹く風によりカラカラと音をたてながら廻っている。
「のどかな場所だな……、本当に蛙ヤローどもが異常繁殖をしているのか?」
僕の相棒である那賀龍神が、地に足を着け周りを見渡しながら言う。
エアロウィンの胸部が開き、中からエアロウィンの相棒がゆっくりと、鋼鉄の階段から降りて来る。身長185センチの龍神と差程変わらない優男が、アウリナ・クージャ様であった。
アウリナ様は白い肌、長いブラウンの髪が風によりなびき、その姿はまさに美青年、神秘的で美し過ぎると言っても癪に触らない。それほどの美貌の人だ。
「龍神、既に島のバードマンはスヴァーリへと避難済みだ」
アウリナ様が龍神の居る場所に近づいて答えると、龍神は周りを見渡しながら軽く相槌する。
「正解だな……、蛙ヤローどもは何でも食いやがるからな。食料がなくなり、共食いでもして、その分減ってくれれば、退治も楽なんだけどな」
龍神は皮肉めいた発言をしながら苦笑いを浮かべた。
「確かに、こんな楽な案件、早めに終わらせて彼女の元に帰りたい」
アウリナ様も皮肉を込めた返答を返す。
「いいね~、帰る場所に待っている最愛が居て」
「貴様もいるだろう?アイツとはまだ続いてるのであろう?」
茶化す龍神にアウリナが真顔で返すと、龍神は苦虫を潰したような表情を見せた。
「アウリナ様、龍神様、警戒を!」
いち速くエアロウィンが危険を察知し、龍神とアウリナ様が警戒する。
草原のあらゆる場所がまるで生き物のように盛り上がり、地面から気味の悪い生物が多数、出現した。
「お出ましだ。それにしても気色悪いな……」
「到着してすぐかよ?少しは観光させろって言うの……」
盛り上がった土から湧いて出た目的の怪物のせいで、のどかな風景が一瞬で台無しになった。
フロッグマンの大群だ。
「アースフィール……、じゃなかったポンコツ!蛙ヤロー共の数は?」
何故、今この現状で僕の名を言い直すと突っ込みたくなったが、面倒なので、龍神に言われた通りフロッグマンの数をサーチした。
「196……イチ・キュウ・ロクです!フロッグマンの数は196匹です!」
「へっ!確かに異常発生だ!」
「こんな天空にフロッグマンの異常発生……、何かあるやもしれん」
龍神とアウリナ様はそう答えて身構える。
アウリナ様の言う通り、足場を固めた三つの大陸から遠く離れた浮遊する地に、両生類系亜人が繁殖する事は珍しい。ましてや周りには川や湖等といった水のある場所はない。
そう僕の人工知能が分析すると、いきなり浮遊島が揺れた。
「こんな時に地震か?」
激しく揺れた地に、龍神やアウリナ様だけでなく、複数のフロッグマンも体制を崩した。
更にその地震により、至る場所にいる何匹かのフロッグマンが空中に吹き飛び、その至る場所から更に気味の悪い生物が出現する。
「バカな……!フロッグマンだけじゃないのか?」
「確認します。巨大蛙イチ・ロク、二頭蛙ハチ、火炎蛙イチ・イチ、蛙王二が発生しました。危険怪物A、単体ならまだしも徒党を組めば、AAとかなり危険です」
僕は瞬時に状況を的確に分析し、二人のストライダーに知らせた。
「成る程ね。じゃあコテンパンにやってやろうか?」
「確かに、これはこのアウリナと龍神の案件だ」
二人のストライダーが不適な笑みを浮かべる。余裕の表情を見せる二人には、恐怖等の負のオーラはサーチされない。
那賀龍神とアウリナ・クージャが戦闘体制をとる。
「アースフィ……、ポンコツ、俺の能力、使ってもいいよな?」
「エアロウィン、このアウリナが能力を使うが……」
二人のストライダーが二体のWEGSに許可を求める。
僕もエアロウィンもそれぞれの相棒に許可をする。
二人のストライダーがそれを機に、気合いを入れると、二人の周りの大気が歪み出した。
能力解放。今、龍神とアウリナ様のそれぞれの秘められた能力が解放される。
その光景を見ていた蛙の怪物共が一斉に襲い始めた。
今、まさに生死が決まる死闘が始まる。
しかし、場違いではあるが、龍神はこんな状況でも、僕の名前を言い直し、悪口を言う性格は、突っ込むところが、ただのバカにしか感じなかった。
このような状況下で、そう解釈する僕も大概だが……