post1❲その名は那賀龍神❳
六二星座暦1976年2月。
この暦の意味はこの龍地球の星座が誕生してから今日に至る数え年の意味である。
因みにこの二つで一つの地球、母なる地球の暦の年は西暦と呼ばれており、何の因果か西暦が呼ばれた年と龍地球の六二星座暦の年は同じ年、つまりどちらの世界も今、1976年である。
更に地天、位置に至るまで同じ宇宙空間が同じであるこの二つで一つの地球の違いはかなりある。地形大陸、星座の数とあり、逆に同じところといえば、時間、気候、季節、大気、そして何よりどちらかの地球が崩壊すればもう一つの地球も崩壊する。それがこの二つで一つの地球の姿である。
ここで僕の紹介をしておこう。僕の名前はアースフィール。体長三メートルのボディー、ウイング、フェイスとありとあらゆる箇所が深紅に染まったWEGSと呼ばれる機械である。
WEGSとは、Weapon・Earth・Guardian・Supercyborgの略であり、様々な形態を持つマシンである。
様々な形態、つまりWEGSには動物や恐竜、怪物の姿をモチーフにした多種多様のWEGSが存在する。
僕の形態は不死鳥をイメージしたマシン。つまりロボットである。
WEGSの目的は、母なる地球から転移した者、アースストライダーを守護する事。幼少、赤子の時に強制転移されたストライダーには何らかの能力を持っており、ある程度の教育や龍地球の義務を教えた後、ストライダーはWEGS所持を義務付けられる。
WEGSにはストライダーの守護ともう一つの目的があり、ストライダーが自身の能力を悪用、または暴走をした時にストライダーを制御する権限を持っている。
WEGSには犯罪を起こしたり暴走したストライダーを制御するには、ストライダーを処刑する機能を持っている。自爆機能を作動させ、ストライダーと共に爆発する機能を使って……
ストライダーにとって、WEGSは相棒であり、家族であり、友人であり、そして死刑執行者である。
それが我々、全WEGSの役目である。
僕は今、その相棒であるストライダーを背中に乗せて、大空を飛行していた。下を見れば大海、上には入道雲が列なう大空。
近くの上空に、体長五十メートルと巨大な鷲型モデルのWEGSも一緒に同じ目的地へと飛行していた。
「おい、ポンコツ、あとどのくらいで目的地に到着する?」
僕の背中にいる相棒が僕の背中を叩きながら質問してきた。
この相棒、傍若無人、口は悪く愛想もなく、偉そうで俺様主義で性格最悪、我が道を往く精神の良いとこなしのこの男の名は那賀龍神。
25歳の長い黒髪をうなじの辺りで束ねた長身のイケメンなのだが、兎にも角にも性格最悪である。何度自爆して道連れしてやろうかと僕の人工知能が設定しようとしたか数えきれないくらいだ。
「おい、聞いてんだろ!?スクラップにすんぞ!」
今度は足蹴する龍神に僕は出もしないため息を吐きたい心理になった。
『いい加減、自分の相棒をいじるな、龍神』
巨大鷲から中に居るストライダーの声が機械音声となり空で響く。
巨大鷲をモデルにした青いWEGSの名前はエアロウィン。
多種多様のWEGSの中でも極めて大きいWEGSであり、体長三十メートル強あるその姿は圧巻であった。
その鋼鉄の巨大鷲に搭乗する人物の名はアウリナ・クージャ様であり、龍神の友人の一人であり、同じ職に付くアースストライダーの一人である。
『龍神、もうすぐだよ。ほら肉眼でも目視できるはずだ』
アウリナ様の言葉に龍神が前方を凝らして見入ると、入道雲に隠れた大地が見える。
「天空の大陸スヴァーリか……」
そう、入道雲から姿を表した常識を外す程の大地が広大に拡がる。
浮遊する大地、天空に浮かぶ大陸。スヴァーリが眼前にあった。
何故、天空に浮かぶのか諸説あるが、現時点では解明されてはいない。兎に角、その大陸は天空に浮上しているのだ。
今回の任務の目的はスヴァーリではなく、スヴァーリの周りに浮かぶ数十の島の一つである。
浮遊する島は数十とあり、そのほとんどが無人もしくは無亜人島であり、有人島は僅かに五島しかない。その有人島の一つが僕等の任務の目的だった。
浮遊島ガスカ。鳥亜人が主の島に突如として大量発生した蛙亜人の排除と、何故、大量発生したかの調査が任務であった。
「なんで俺とアウリナ、お前がこんな任務に行かなきゃいけねぇの?フロッグマンなんてゴブリン並の力しかねぇだろ?」
『確かに、このアウリナと龍神の任務にして見れば、割に合わない任務だ』
二人の不満に僕もエアロウィンも無言ではあったが、同じ意見だった。
あのお方の命令は絶対であり、大なり小なり任務は任務。僕等はどんな任務でも龍地球に害を為す存在は排除しなくてはならない。
それが龍地球、しいては二つの地球を護るアースストライダーとWEGSの使命なのだから……
この任務に若干の不満を抱きつつも、8分後に、僕等は浮遊島ガスカへと着陸した。