000❲その名は希跡❳
全くこのバカは、何も考えてない。先の事も考えてない。
荒れ果て崩壊した街だった場で、私達女子三人は、このバカが今現在、遭遇している危機に笑いながら回避している。
私は怒りを露に、左の女子は心配な表情を見せ、右の女子は目を輝かせてバカを見ている。
バカは私達と同い年の男子で、寝癖爆発頭の何日も同じ服を着ているだらしないヤツ。
頭悪くて短気で単細胞で、何も考えて行動しないバカ代表のこの男子の名前は、未室希跡。
十六歳で身長170センチの平均的な体型でイケメンなんだけど、とにもかくにも、残念過ぎるヤツ。
それで何故、私が怒りを露にしているかっていうと、今置かれている状況が最悪で、私達は命の危険に直面中で、その絶望の状況下、楽しそうに無謀に、何も考えずに行動している希跡に怒っているわけ。
「希跡ー!やっちゃえー!悪くてキモい奴らを倒しちゃえー!」
右にいる背のちっちゃい女子が、希跡の行動を全力で応援している。
この子もおバカなんだけど、私の大親友の一人。名前は香川まゆ。私の身長150センチよりも2センチ小さいロングヘアーの可愛い女の子。
「んん……、希跡、大丈夫かな?怪我しないよね?」
左の女子が泣きそうな表情で希跡を心配している。彼女も私の大親友の一人で、名前は鈴原むつみ。清楚って彼女の為にあるって感じの女子で、心も清らか過ぎる聖女様って感じの子。
「大丈夫よ!あのバカはバカだけど、強いから」
何故か私は自分のように誇らしげに答え、すぐに咳払いをし、希跡を見た。
希跡に直面している現状は、百は越えている小鬼の群れに無謀に向かい次々と持っている剣で斬り倒している。
希跡は青いクリスタルと機械が融合したようなバイクに股がり、そのバイクを巧みに操作し、左手に持つ青いクリスタルの大剣でゴブリンを次々に斬り、絶命していく。
そういう私達三人もバイクに股がっているんだけど、このバイクはそこらのバイクや母なる地球のバイクとは全然違った特徴があるんだ。その特徴は…………
「希跡っ!まだまだ加速するぞ!振り落とされんじゃねぇぞ!」
「誰に言ってんだ?てめえこそ、オレの能力に振り回されんじゃねぇぞ!バルエース!」
バイクが喋るって事。ただバイクが喋るだけでなく、人工知能を持ち、更に変型するロボットで、希跡のバイクの正面には本来の姿の鋼鉄の大きな牙を持つ虎の顔がある。
ちなみに私のは、額に角がある馬、まゆとむつみのにも馬の顔がある。
で、このバイク、もとい、ロボットのような機械の名称はWEGS。
Weapon・Earth・Guardian・Supercyborgの略で、頭文字を取りWEGS。
WEGSの特徴や性能機能は長くなるので、また今度。とにかく凄いロボットって事で…………
加速を上げた希跡が乗る虎顔のバイクがゴブリンの群れへと疾走し、小柄なゴブリンの中心部にいる大鬼王や、大鬼に狙いを定める。
「そのまま突っ切れ!」
キアトはバイクから立ち上がり、持っていたクリスタルの大剣を両手で二つに割る。二つの剣がキアトの両手に馴染む。
「喰らって滅べ!ダブルドラゴンスラッシュ!」
「ダサっ」「うん、ダサい、でも希跡はカッコいい」「うん、希跡のネーミングはダサい」
希跡のネーミングセンスゼロの必殺剣が、ホブやロードを斬り倒し、希跡は二つの剣を腰に収め、バイクを操縦する。
10分もしない間に、ゴブリンの群れは希跡一人によって絶滅した。
希跡のバイクは私達の居る場に来て、希跡がこれ以上はない位のどや顔を見せる。
「あんたねぇ!いい加減にしなさいよ!」
開口一番、希跡に怒る私に希跡が鳩が豆鉄砲を喰らった表情を見せた。どうやら褒められると勘違いしたのか、希跡が同様を見せた。
「何が?オレはお前らを助けて……」
「バカなの?バカですか?希跡はアホですね!このまま、私達は逃げれば逃げれたよね?こんなに速いWEGSに乗ったんだからね?解りますか?希跡くん……、あなたは無駄に戦いに行っただけなんだよ?解りますか?あなたは私達にカッコいいとこ見せたかっただけなんです~」
「まあまあ、希跡が無事なら……」
「そうだよ、まゆにとって希跡は実際にカッコいいんだから。だってまゆは希跡が好……」
むつみとまゆが私を宥めようとするが、私はすかさず二人を睨むと、二人は何もなかったように小さくなった。
「…………ス、うる……せぇ……」
「あっ?何?なんか言った?希跡くん、はっきり喋って?バカですか?希跡くんはアホですか?キアホくんに改名しますか?」
希跡がブルブルと身を奮わせている。怒っているのは一目瞭然だけど、私の方が怒っているんだからね!先程、希跡が打ち損じたゴブリンが私に襲い掛かって来て、胸を揉まれたんだからね!そのゴブリンは私の相棒が倒してくれたから大丈夫だけど……
「うるせぇブスって言ったんだよ!聞こえてねぇのか!?ブス、ブス、ブス!このツンデレブスが!」
希跡のその暴言に、私の中の何かがプチッと切れた。
希跡は私の手によって、抹殺された。地面に無惨に倒れこんだ希跡を心配そうに眺めるまゆとむつみ。
オホンッ、……こ、これでこの物語は希跡が絶命したので完結します。なんちゃって…………
あっ、私?私の名前は神代ひろな。
ここで絶命している希跡や、まゆ、むつみとは十年頼の幼なじみであり、もう私の一部って感じの仲。
ちなみに私はブスじゃないから……
私は自分で言うのも変だけど、とってもと~~っても、可愛いだからね!
あっ、希跡は絶命してないし、物語は今から始まるから……、念のため。うふふ……
さあ、次ページより物語が始まります。
主人公の希跡は生きてますからね!
でも次ページから希跡はしばらく出ません。
違う主人公になります。