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カリグラファーの美文字異世界生活   〜コレクションと文字魔法で日常生活無双?〜  作者: 磯風
第二章 慣れてくるといろいろあるものです
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第72話 お守りとお土産

 すっかり秋も深くなった、ある日の昼下がり。

 スイーツタイムでまったりとしていた食堂に、ルドラムさんがやってきた。


 長引いていた坑道の修繕がやっと終ったのは、初夏だった。

 その後の素材集めラッシュで荷物運びの仕事をしていたためか、なかなかうちに来てくれていなかったのだ。


「いらっしゃい。久しぶりだね、ルドラムさん」

「ああ、やっとこの店の菓子が食えるよ……忙しくて北側から離れられなかったから」

 嬉しいねぇ。

 楽しみにしてきてくれたんだ。

 じゃあ、ちょっとサービスしちゃおうかなぁ。


 今日のスイーツは母さんお気に入りのココアケーキ。

 たっぷりの生クリームで、ほろ苦いケーキをいただく絶品である。

 試作品の紅茶のシフォンケーキも乗せてあげよう。


「おっ、このふわふわのやつ、旨いなぁ!」

「そう? 今度作ってみようって母さんと相談している試作品なんだ。甘さとかどう?」

「いい、すっごく俺の好みだ。ちょっと苦くて旨い!」


「よかった! 紅茶のケーキなんだよ」

「ええええっ? 紅茶だって?」

 え?

 紅茶ってそんなに驚くもの?


「紅茶……これが紅茶かぁ……流石、貴族の飲み物だなぁ。初めてだよ」

 えええーーーー?

 お貴族様のものなの?

 紅茶って……

 公園のテントで売ってたよ?

 そんなに高くなかったよ?


「俺も見たことはあるんだけどな、どうやって使うのかさっぱりわかんねぇものだったぜ。こう……ちりちりって、しててよ」

 そっか……お茶の文化って、まだ庶民のものじゃないのか。

 そういや、テントであったおじいさんが、入れ方知ってるのかって……


 ん?

 俺、飲んだことあるって言っちゃったよね?

 しかも、人に入れてもらったって……言っちゃいましたよね?

 そんなお貴族様的アイテムだと知らなかったから、かるーく答えちゃったよね!


 変な勘違いされていないといいんだが……まぁ……この町の人じゃないっぽかったし、大丈夫かな?

 しばらくの間は、紅茶のケーキは家族だけで楽しむことにした方がいいのかな。

 でも折角美味しいんだから、みんなに食べてもらって……あー、仕入れ先が問題か。


 この町には『貴族』という身分の人は、住んでいない。

 シュリィイーレは皇王直轄地で、貴族の『領主』という人はいないのだ。

 まぁ、こんな資源の宝庫と腕利きの職人の町が一貴族のものだったら大変なんだろうね。


 紅茶が貴族の飲み物だというなら、その貴族がいない町にはコンスタントに入ってこないのではないだろうか。

 俺が安く買えたのは、この町でずっと売れ残っていたからだったり?

 うーん……でも、今年の茶葉みたいなんだけどなぁ……


 夏は結構暑いし、冬は雪に覆われるほど寒いので、別荘地としても向かないせいか訪問者も貴族どころか、定期的に来る商人や市場と契約している人達以外いないと言ってもいいだろう

 あ、研修で秋の終わりから春先までは、毎年三十から四十人ほどの新米騎士さん達が来るけどね。

 衛兵隊での研修の合間に、町の整備や雪かきなんかもしてくれるありがたーい若人達ろうどうりょくなのだ。



「あ、そうだ、タクト。これ」

「ん? あっ鉱石っ? 錆山の? うわぁ! ありがとうっ、覚えててくれたんだね!」

 おお!

 七個も入っている!

「こんなに沢山、いいの? 売ったら高く売れるんじゃないの?」

「いや、これはタクトにお礼として持ってきたものだから、受け取ってくれよ」


 お礼……ああ、お守りのか。

 義理堅いなぁ。

「実はよ、あんまり知られてねぇけど、坑道の中で変な所から空気が吹き出して、少し崩れたんだよ」

「えっ、何それ……怪我人とか出たの?」

「うん、何人か。でも俺だけは無傷だったんだよ。崩れた一番手前にいたのに」


 うっわーよかったぁ!

 何が起こるかわかんないものだよな、やっぱ。

 土系の魔法で固めても、気体までは固められないもんなぁ。

 周りの土を固めたことで、一カ所に集中して何かのガスが噴出したのかも知れない。


 でも……現場でひとりだけまるっきりの無傷って、めっちゃ目立ってたよね? ルドラムさん……

「絶対にタクトのお守りのおかげだよ! 本当にありがとうな!」

「いやいや、ルドラムさんの強運だよ。でも、気休め程度が役に立ってよかった」


「気休めなんかじゃねぇって! 絶対に効いたんだって。これからもずっと身につけてようと思ってよ」

 あ、いやいや、効果は一ヶ月設定なので、もう効力がないはずですっ!


「お守りってね、無事に行って帰ってきたらもう役目を終えたことになっちゃうんだよ。だから御炊き上げしないとダメなんだ」

「ええー? そうなのかぁ……じゃあ、これ、そのオタキアゲってのしないとどうなるんだ?」


「役目が終わってるから、効き目なくなっちゃってるよ、きっと。俺がやっとくから預かろうか? お守りはまた新しいの作るよ」

「そっか……じゃあ、頼むよ。あ、今度はちゃんと金を受け取ってくれよ?」

「うん、出かける前に寄ってよ。用意しておくからさ」

 よかった。

 ルドラムさんにはこれからも採掘の時にお世話になるから、ちゃんとしたお守り作っとくよ。

 御炊き上げは……この世界に日本の神様はいない気がするから、やっても意味ないかもしれない。



 部屋に戻って、貰った鉱石を眺める。

 大きさは同じ位の石なのに重さがかなり違うものがある。

 これは含有されているものが違うんだろうな。

 うー楽しみーーっ!


 今晩から分解するぞーっ!

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