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第8話 この世界のことをすこし学んでみよう

 読める……のはいいんだが、所々空白のままになっている。

 日本語にない単語が、含まれているのだろうか?


「この世界独自のものなんだろうな……地名とか?」

 日本語にない発音で、表記できないのかも。


 この羊皮紙の原文を写し、その下の行に訳文を書いていく。

 どうやら、道案内が書かれている。

 それと、薬を欲しがっているようだ。

「手紙みたいだな」


 単語の並びが、日本語の文章に似ている。

 そのせいか随分解り易い。

 一文字ずつ書き出していって、文字数を調べると三十二種類の文字があった。

 アルファベットより多いが、五十音よりは少ない。


 単語は、日本語の訳より多い文字数のものもあれば、少ないものもある。

「そっか、ふたつの文字をくっつけて書くことで別の音の文字になっているのか」

 日本語の濁音とか、半濁音みたいなものかもしれない。

 とすると、表音文字なのかな?

 あああー文字って楽しいなぁ!



「おいっ! ここで何をしている!」



 突然聞こえた怒鳴り声に、心臓が飛び出すほど驚いた。

 ……言葉がわかる……?

 あ、翻訳の紙を持っているからか!


「す、すみません……森で迷っていたら、獣に襲われそうになって……逃げ回ってやっと、ここに着いたんです」

 嘘は言っていない。

 ちょっと、説明をしていないことがあるだけだ。

 さっき実験で出したものなんかを、片付けておいてよかった……

 絶対怪しいもんな、ポテチ山盛りの部屋にいるやつなんて。


「なんだ、迷い人か。この森は素人が入ると危険なんだぞ!」

「全然知らなくて、迷い込んじゃったんですよ……ここがどこかも解らなくて……」

「どっから来たんだ?」

「……多分……知らないと思うんですけど……日本ってとこなんですけど……」

「うん、知らねぇな」

 ですよねー。


「帰り道、わからねぇのか?」

「はい……どうしたものかと、途方に暮れていました」

 しまった。

 帰るなんてこと、考えていなかった。

 コレクションが手元にあった時点で、あちらに未練がなくなってるとか薄情だなー、俺。


「うーん、家族が心配してんじゃねぇのか?」

「いえ、家族は……もういないんで……故郷には親戚も誰も……」

「……そっか、悪ぃこと聞いちまったか……」

 いい人だな、この人。


「いいえ、大丈夫ですよ! あ、俺、タクトといいます。ここって、あなたの小屋なんですか?」

「タクトか。俺はガイハックだ。ここは町で管理していた、昔の狩猟小屋だ」

 ガイハックさんは、いかにも猟師って感じだけど猟に来たのかな?

「実はすぐそこでこいつを仕留めたんだが、ちょっとしくじっちまってよ」


 ……俺に飛びかかってきたあの獣だ。

 仕留めたのか。

 凄い……

 左腕と頬に、引っかかれたような傷があった。

 怪我をしてしまって、ここで手当しようとしていたようだ。


 怪我……か。

 勝手に小屋を使わせてもらっちゃったし……

「あの……どの程度か見てもいいですか? あんまり酷くなければ、治せるかも……」

「おまえ、【回復魔法】が使えるのか!」

 あ、やっぱあったよ、魔法。

「いえ【回復魔法】っていうのとは、ちょっと違うんですけど……やってみますね」


『この紙に触れた人の傷を完治』

 小さな紙にそう書いて、ガイハックさんの傷口に当ててみた。

 頬、そして左腕もなんとか治った。

 良かった、あんまり深くなかったみたいだ。


「どうですか? まだ痛みますか?」

「いや……凄い。こんなに早く、完璧に治る魔法なんて、初めて見たぞ?」

 げ。

 普通じゃないのか、これ……

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